労働問題533 問題社員の対処法|企業防衛のための法的手順と実務のポイント
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問題社員の放置は、士気低下・安全配慮義務違反・「黙認」評価のリスクを生む 問題社員を放置すると、周囲の士気低下と離職、ハラスメント放置による安全配慮義務違反、後の懲戒・解雇時に「会社が黙認していた」と評価されるなどのリスクが生じます。 |
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問題のタイプを見極め、適正な3段階プロセスで対応する いきなり解雇するのではなく、①注意指導の証拠化、②配転・降職などの解雇回避努力、③懲戒処分や退職勧奨の検討という段階的なプロセスを踏むことが、後の労働紛争を防ぎます。 |
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早期に会社側弁護士へ相談することで不要なトラブルを防げる 早い段階から会社側専門の弁護士に相談することで、法的リスクの事前確認、感情的対立の拡大防止、合意書による紛争の蒸し返し防止につながります。 |
会社経営を続けていると、勤務態度が悪い社員、上司の指示に従わない社員、職場でトラブルを起こす社員など、いわゆる「問題社員」への対応に悩む場面に直面することがあります。問題社員への対応は、会社経営者にとって避けて通ることのできない重要な経営課題の一つです。
もっとも、問題社員への対応を誤ると、職場環境が悪化するだけでなく、懲戒処分や解雇をめぐって労働審判や訴訟に発展する可能性もあります。解雇が無効と判断された場合には、働いていない期間についても賃金の支払いが必要となるなど、会社にとって大きな負担となるケースも少なくありません。そのため、問題社員への対応は、感情的に判断するのではなく、労働法のルールを踏まえた適切な手順で進めることが重要になります。
01なぜ問題社員を放置してはいけないのか
会社経営者の中には、問題社員の行動に気付いていても、「様子を見よう」「いずれ改善するのではないか」と考え、対応を先送りにしてしまうケースが少なくありません。しかし、問題社員の行動を長期間放置することは、会社にとって大きなリスクとなる可能性があります。後になって懲戒処分や解雇を検討する場合にも、会社がこれまでどのような対応をしてきたのかが重要な問題になります。
問題社員を放置することで生じるリスク
① 周囲の士気低下と離職の連鎖
問題行動が放置されている状況は、真面目に働く他の社員の不満の原因となります。職場全体の規律が緩み、業務意欲が低下し、優秀な社員ほど職場環境に敏感なため、転職を検討するきっかけになることもあります。
② 安全配慮義務違反のリスク
問題社員の言動が他の社員へのハラスメントや強い精神的負担につながっている場合、会社の安全配慮義務(労契法5条)が問題になります。暴言や威圧的言動を繰り返す社員を放置した結果、他の社員が精神的不調に陥れば、会社の損害賠償責任が問われる可能性もあります。
③ 「黙認」と評価されるリスク
問題行動を長期間放置していると、後に懲戒処分や解雇を検討した際に「会社がその行動を黙認していたのではないか」と評価される可能性があります。会社が問題行動をどの時点で認識し、どのような指導・注意を行ってきたかは、労働紛争で重要な判断材料になります。
これらのリスクを避けるためにも、問題社員の行動が見られた場合には、早い段階から注意指導や面談などの対応を行い、会社としての姿勢を明確にしておくことが重要です。
02問題社員の典型的な5つのタイプ
一口に問題社員といっても、その行動の内容や背景はさまざまです。実務では、問題の性質によって対応方法が大きく異なるため、まずはどのようなタイプの問題なのかを整理することが重要になります。
問題社員の典型的な5つのタイプ
① 業務命令違反・反抗的態度
上司の指示に従わない、自分のやり方に固執する、注意するとパワハラだと言って指導を聞かない、言われたとおりに仕事をしない等。
② 低パフォーマンス・能力不足
仕事の能力が低い、ミスを繰り返して会社に損害を与える、報連相ができない、指示内容が理解できない、期待レベルに達しない等。能力不足を理由に直ちに解雇できるわけではなく、指導や配置転換を含め慎重な判断が必要。
③ 勤怠不良・職場規律違反
遅刻・無断欠勤が多い、営業中にサボる、忙しくなると休む、勤務時間中にスマホゲームをする、連絡せず長期欠勤する等。勤務状況を客観的な記録として残すことが重要。
④ ハラスメント・人間関係のトラブル
協調性がない、気に入らない相手を無視する、部下に過大なノルマを課す・仕事を干す、飲み会で飲酒を強要する等。放置すると職場環境が悪化するため、適切な調査・対応が必要。
⑤ メンタルヘルス・私生活上の問題
精神疾患でまともに働けないのに休職・退職の効力を争う、精神疾患を長時間労働やパワハラのせいだと主張し損害賠償請求する、休職期間満了ギリギリで復職を求める、社外で刑事事件を起こす等。単なる勤務態度の問題として扱わず、受診勧奨や休職制度の活用を含め慎重な対応が必要。
それぞれのタイプによって、注意すべき法的ポイントや有効な対応手段が異なります。自社の問題社員がどのタイプに該当するのかを整理したうえで、適切な対応を検討することが重要です。
03適正な対処のための3段階プロセス
問題社員への対応では、いきなり懲戒処分や解雇を検討するのではなく、段階的な対応を行うことが重要です。日本の労働法の実務では、会社が問題社員に対してどのような指導や改善機会を与えてきたのかが重視される傾向があります。
STEP 1 注意指導の「証拠化」
まず、問題行動について具体的に指摘し、改善を求めます。面談などを通じて、どのような行動が問題であり、どのような改善を求めているのかを本人に明確に伝えます。そのうえで、指導の日時・指摘した問題点・本人の説明などを記録として残し、会社が適切な指導を行っていたことを客観的に示せるようにしておくことが重要です。
STEP 2 配転・降職などの「解雇回避努力」
注意指導を行っても改善が見られない場合には、配置転換や担当業務の変更などを検討します。問題行動の原因が業務内容や職場環境にある可能性もあるため、別の部署や業務で適性を見極めることが有効な場合もあります。解雇は重大な措置であるため、会社がどのような改善措置を検討してきたのかが重要な判断材料となります。
STEP 3 懲戒処分や退職勧奨の検討
注意指導や配置転換を行っても問題行動が改善されない場合には、就業規則に基づく懲戒処分を検討します。懲戒処分は、けん責・減給・出勤停止など、段階的に行われることが一般的です。状況によっては退職勧奨による合意退職を検討するケースもあります。感情的な対立が生じやすいため、必要に応じて会社側専門の弁護士に相談しながら進めることが望ましい場合もあります。
このような段階的なプロセスを踏み、その経過を記録しておくことが、後の労働紛争を防ぐうえで重要になります。
04弁護士による早期介入のメリット
問題社員への対応は、会社として適切に対応しているつもりでも、後になって労働紛争に発展するケースがあります。特に懲戒処分や解雇を検討する場合には、法律上の判断が問題になることも少なくありません。早い段階から会社側専門の弁護士に相談しながら対応方針を整理することで、不要なトラブルを防ぐことにつながる場合があります。
弁護士に相談する主なメリット
① 解雇や懲戒処分の法的リスクを事前に確認できる
これまでの裁判例や実務の考え方を踏まえ、会社の対応にどのような法的リスクがあるかを整理し、どのような対応・準備が必要かを事前に検討できます。
② 当事者間の感情的対立の拡大を防げる
弁護士が第三者の立場から状況を整理しながら対応を進めることで、当事者同士の不要な対立が拡大することを防ぐことにつながります。
③ 合意書の作成により紛争の蒸し返しを防げる
退職や和解に至った場合、清算条項など必要な条項を含めた適切な合意書を作成することで、後に同じ問題が蒸し返されるリスクを低減できます。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 問題社員に注意しても「パワハラだ」と反論されます。どう対応すればよいですか。
A. 業務上必要かつ相当な範囲で行う注意・指導は、適正な業務指示であってパワハラには当たりません。重要なのは、①感情的にならず冷静に、②具体的な事実に基づいて、③改善してほしい点を明確に伝え、④その記録を残すことです。記録があれば、後に「指導はパワハラだった」と主張されても、適正な指導であったことを客観的に示せます。指導の方法や記録の取り方に不安がある場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
Q2. 能力不足の社員を解雇したいのですが、すぐに解雇できますか。
A. 能力不足を理由に直ちに解雇することは困難です。解雇が有効とされるには、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要で(労契法16条)、特に改善のための指導教育を行ったか、配置転換等の解雇回避措置を検討したかが重視されます(531番参照)。まずは具体的な指導を行い、改善の機会を与え、その経過を記録することが必要です。指導を尽くしてもなお改善しない場合に、初めて解雇が検討対象になります。
Q3. 問題社員に退職してほしい場合、退職勧奨と解雇のどちらがよいですか。
A. 一般に、解雇は無効リスクが高く紛争に発展しやすいため、まずは退職勧奨による合意退職を目指すことが穏当な場合が多いです。ただし、退職勧奨も進め方を誤ると退職強要と評価され、退職が無効とされるリスクがあります(526番参照)。「本来なら懲戒解雇」といった発言は特に注意が必要です。退職勧奨を行う場合は任意性を確保し、合意に至れば清算条項を含む合意書を作成しておくことが重要です。進め方は弁護士に相談することをお勧めします。
最終更新日:2026年2月25日