問題社員48 採用予定者が遵守事項に違反した。
1 内々定・内々定取消し
(1) 内々定とは
内々定に法的な定義があるわけではありませんが、一般的に、内々定とは正式な内定を出す前に、学生に対して内定の見込みであることを口頭などで伝えている状態をいいます。あくまで正式な内定までの間、学生が他の企業に流れることを防ごうとする事実上の活動に過ぎず、内々定の段階では労働契約は成立していません。したがって、内々定を取消したとしても、解雇や内定取消しの問題にはなりませんが、内々定者の労働契約が締結されると期待した権利を侵害したとして、不法行為が成立する可能性があります。
(2) 不法行為を認めた裁判例
例えば裁判例には、内々定によって、始期付解約権留保付労働契約が成立したとはいえないとしながらも、その取消しは、労働契約締結過程における信義則に反し、就活大学生の期待利益を侵害するものとして不法行為を構成するとして、慰謝料50万円の支払を命じたものがあります(コーセーアールイー(第2)事件福岡高裁平成23年3月10日判決)。
2 内定・内定取消し
内定とは、入社により労務提供を開始する前ではあるけれども、労働者を採用することが決定している状態のことをいいます。
内定の場合には、解約権を留保した労働契約が成立していることになりますので、その取消しを適法にするためには解約権留保の趣旨、目的に照らして、取消事由が客観的かつ合理的に認められ、社会通念上相当と認められることが必要となります。
3 内々定取消しと内定取消しの法的な違い
内々定の場合には労働契約が成立しておらず内々定者には労働契約が締結されるとの期待権を有しているにとどまるのに対して、内定の場合には労働契約が成立していることになります。
そのため、内々定取消しの場合には、損害賠償請求を受ける可能性があるものの、地位確認請求を受けることはないのに対して、内定取消しの場合には、地位確認や賃金の請求を受ける可能性があります。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
(勤務弁護士作成)