問題社員56 企業秘密を他社に漏えいする。

1 労働者の秘密保持義務
 労働者は、労働契約に付随する義務として、会社の業務上の秘密を守る義務(秘密保持義務)を負うと解されています。
 労働契約上の秘密保持義務の対象となる「秘密」の範囲は、当事者間の合意に委ねられているところがあり、一般的には不正競争防止法にいう「営業秘密」よりも広いと解されていますが、必ずしも社員が職務上知り得た全ての情報が「秘密」になるわけではありません。
 「秘密」についての明確な定義はありませんが、企業の業績に影響を及ぼしうる一切の情報で公表されていないものと考えられます。

2 客観証拠の収集と社員への聴取
 企業秘密を他社に売り渡している場合には、客観的な証拠を収集する必要があります。例えば、PC内のログ記録やメールを調べた上で、該当部分を印刷またはスクリーンショットをして証拠化します。
 調査した結果、秘密保持義務違反の事実が認められる場合には、当該社員から事情聴取をします。事情聴取の際には、情報を入手した経緯や情報漏えいをした動機・目的といった事実関係、本人の弁解を聴取し記録に残します。その上で、懲戒処分等の検討をします。

3 懲戒処分・普通解雇・退職勧奨
(1) 懲戒処分
 有効に懲戒処分をするためには、就業規則に懲戒事由を定め、これを周知させていることが必要です。就業規則を作成していない場合や労働者に周知していない場合には懲戒処分は無効です。
 どのような懲戒処分が適切であるかは、①結果の重大性(営業秘密の重要性、外部への流出の有無、実害の有無等)、②行為の態様(情報の入手方法、漏えいの動機・目的や方法等)③その他の事情(会社の管理体制、本人の反省等)を考慮して判断します。
(2) 普通解雇
 普通解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められることが必要です。
 「客観的に合理的な理由」は、調査段階で集めた客観証拠に基づいて立証していきます。
(3) 退職勧奨
 懲戒解雇や普通解雇相当とまではいえないけれど、退職して欲しいと考える場合には、退職勧奨をします。退職勧奨は、懲戒解雇や普通解雇相当といえそうな事案であっても、穏当な方法として選択することも考えられます。
 退職勧奨をする際には、調査段階で集めた客観証拠に基づいて当該社員が何をしたかを説明できるようにしておくことが重要です。

4 損害賠償請求
 損害賠償請求をするためには、漏えい行為と損害との間に因果関係が認められることが必要ですので、当該損害が当該漏えい行為によって発生したと証明できる証拠を確保できるかがポイントになります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
(勤務弁護士作成)


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