ワード:「問題社員」
問題社員に注意指導や懲戒処分をしたら、気分を害して職場の雰囲気が悪くなりますから、注意指導や懲戒処分なんてせずに直ちに解雇した方がいいのではないですか?
確かに、問題社員に注意指導や懲戒処分をした場合、一定の軋轢が生じることは予想されるところです。
しかし、注意指導や懲戒処分もせずに問題社員の好き勝手にさせていることの方が、職場の雰囲気にとって大きな問題です。
当然行うべきであった注意指導や懲戒処分をしなかった結果、上司に対する態度もますます悪化したり、新入社員に仕事を教えなかったりいじめたりして何人も辞めさせたり……
しかし、注意指導や懲戒処分もせずに問題社員の好き勝手にさせていることの方が、職場の雰囲気にとって大きな問題です。
当然行うべきであった注意指導や懲戒処分をしなかった結果、上司に対する態度もますます悪化したり、新入社員に仕事を教えなかったりいじめたりして何人も辞めさせたり……
問題社員の解雇に臨むに当たってのあるべきスタンスを教えて下さい。
最初に解雇を決定してからどうやって問題社員を辞めさせるかを検討するのではなく、解雇せずに正常な労使関係を回復する方法がないか検討したものの正常な労使関係を回復する現実的方法がないため、やむなく解雇に踏み切るというスタンスが重要です。
余程ひどい事案でない限り、まずは十分に注意指導し、懲戒処分を積み重ね、それでも改善されない場合に初めて解雇に踏み切るべきことになります。 &nbs……
余程ひどい事案でない限り、まずは十分に注意指導し、懲戒処分を積み重ね、それでも改善されない場合に初めて解雇に踏み切るべきことになります。 &nbs……
解雇に踏み切るタイミングを教えて下さい。
解雇に踏み切るのは、原則として解雇が有効であることを証拠により立証できるようにしてからです。
まずは、何月何日にどこでどのようなことがあったといったような解雇に客観的に合理的な理由があることを基礎付ける事実を紙に書き出してみて下さい。
紙に書かれた事実だけで、解雇に客観的に合理的な理由があるといえるでしょうか?
解雇に客観的に合理的な理由があるとい……
まずは、何月何日にどこでどのようなことがあったといったような解雇に客観的に合理的な理由があることを基礎付ける事実を紙に書き出してみて下さい。
紙に書かれた事実だけで、解雇に客観的に合理的な理由があるといえるでしょうか?
解雇に客観的に合理的な理由があるとい……
誰の目から見ても勤務態度が悪く、改善するとは到底思えない社員であっても、解雇に先立ち注意指導する必要がありますか?
解雇権の濫用に当たるかどうか(労契法16条)を判断するにあたっては、注意指導や懲戒処分歴の有無等が考慮されます。
勤務態度の悪さが客観的に改善の見込みが乏しいことを立証できるのであれば別ですが、注意指導や懲戒処分をしていないのでは、よほど悪質な事案でない限り、勤務態度の悪さが客観的に改善の見込みが乏しいことを立証することに困難を伴うのが通常です。
勤務態度の悪さが……
勤務態度の悪さが客観的に改善の見込みが乏しいことを立証できるのであれば別ですが、注意指導や懲戒処分をしていないのでは、よほど悪質な事案でない限り、勤務態度の悪さが客観的に改善の見込みが乏しいことを立証することに困難を伴うのが通常です。
勤務態度の悪さが……
勤務成績、勤務態度が悪いことは本人が一番よく知っているはずだし、このことは社員みんなが知っているような場合であっても、証拠固めが必要だというのはどうしてですか?
十分な証拠固めをしないまま、「彼の勤務成績、勤務態度が悪いことは、本人が一番良く知っているはずだ。このことは社員みんなが知っていて証言してくれるはずだから、裁判にも勝てる。」といった安易な考えに基づいて「問題社員」を解雇する事例が見られますが、訴訟になるような事案では、労働者側はほぼ間違いなく自分の勤務成績、勤務態度には問題がなかったと主張してきますし、経営者、社員等の利害関係人の証言は経営者が……
問題社員を解雇する際の注意点のうち、最初に理解すべきものを教えて下さい。
漠然と会社が解雇を有効と判断すべき事情が多いように思えた場合であっても、問題社員を解雇しても大丈夫だとは直ちにはいえないということには、十分な注意が必要です。
有効に解雇するためには、解雇に「客観的に」合理的な理由が必要であり(労契法16条)、会社経営者が主観的に解雇には合理的な理由があると考えただけでは足りません。
勤務成績、勤務態度等が不良であるというためには……
有効に解雇するためには、解雇に「客観的に」合理的な理由が必要であり(労契法16条)、会社経営者が主観的に解雇には合理的な理由があると考えただけでは足りません。
勤務成績、勤務態度等が不良であるというためには……
解雇が無効だったとしても、ノーワーク・ノーペイなのですから、働いていない期間の賃金は支払う必要はありませんよね?
解雇が無効の場合において、労働者が就労の意思と能力があるにもかかわらず、使用者が就労を拒絶しているような場合には、就労不能の帰責事由が使用者にあると評価されるのが通常です。
したがって、解雇された労働者が現実には働いていなかったとしても、使用者は賃金支払義務を免れず(民法536条2項)、実際には働いていない期間についての賃金についても、支払わなければならなくなります。
……
したがって、解雇された労働者が現実には働いていなかったとしても、使用者は賃金支払義務を免れず(民法536条2項)、実際には働いていない期間についての賃金についても、支払わなければならなくなります。
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試用期間の趣旨で有期労働契約を締結し、正社員に相応しければ正社員として登用し、正社員に相応しくなければ期間満了で辞めてもらうやり方はどう思いますか?
正社員について、試用期間を設けたとしても、本採用拒否(留保解約権の行使)が、解雇権濫用法理(労働契約法16条)により無効とされるリスクがあることから、最初から正社員として雇用するのではなく、まずは有期労働契約を締結して正社員と同様の職務に従事させ、労働者に問題があれば雇止めし、問題がない場合には正社員として登用することがあります。
このようなやり方の法的効力は、どのようなものなの……
このようなやり方の法的効力は、どのようなものなの……
採用面接時に能力が低い応募者だということが判明した場合であっても、雇用確保に貢献し、就職できない応募者にチャンスを与える意味で採用し、試用期間中の勤務状況から役に立つ人材と判断できたら本採用拒否せずに雇い続けるというやり方をどう思いますか?
「能力が低いのは分かっていたけど、就職できなくて困っているようだし、もしかしたら会社に貢献できる点も見つかるかもしれないから、チャンスを与えるために採用してあげた。」という発想は、雇用主の責任の重さを考えると、極めて危険な考え方です。
緩やかな基準で認められる試用期間中の本採用拒否(解雇)は、「当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実」を理由とする本採用拒否(解……
緩やかな基準で認められる試用期間中の本採用拒否(解雇)は、「当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実」を理由とする本採用拒否(解……
「解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合」(三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決)とは、具体的にどういった場合ですか?
三菱樹脂事件最高裁大法廷判決は、「解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合」を以下のように言い換えて説明しています。
「換言すれば、企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を……
「換言すれば、企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を……
試用期間中の社員は通常よりも緩やかな基準で本採用拒否(解雇)できますよね?
試用期間中の社員の本採用拒否は、本採用後の解雇と比べて、使用者が持つ裁量の範囲は広いと考えられています。三菱樹脂事件最高裁昭和48年12月12日大法廷判決も、解約権留保の趣旨を「大学卒業者の新規採用にあたり、採否決定の当初においては、その者の資質、性格、能力その他上告人のいわゆる管理職要員としての適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行ない、適切な判断資料を十分に蒐集することができないた……
試用期間中の社員であれば、自由に本採用拒否(解雇)できますよね?
使用者と試用期間中の社員との間では、既に留保解約権の付いた労働契約が成立していると考えられる事案が多く、本採用拒否の法的性質は、留保された解約権の行使(解雇)と評価されるのが通常です。
本採用拒否は、既に採用した社員の解雇であり、新たに採用する場面とは異なりますから、試用期間中だからといって、自由に本採用拒否(解雇)できるわけではなく、「解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に……
本採用拒否は、既に採用した社員の解雇であり、新たに採用する場面とは異なりますから、試用期間中だからといって、自由に本採用拒否(解雇)できるわけではなく、「解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に……
試用期間の法的性格を教えて下さい。
試用期間には様々なものがあり、その法的性格は一様ではありません。
三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決(労判189号16頁)は、「試用契約の性質をどう判断するかについては、就業規則の規定の文言のみならず、当該企業内において試用契約の下に雇用された者に対する処遇の実情、とくに本採用との関係における取扱についての事実上の慣行のいかんをも重視すべきものである」と判示してい……
三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決(労判189号16頁)は、「試用契約の性質をどう判断するかについては、就業規則の規定の文言のみならず、当該企業内において試用契約の下に雇用された者に対する処遇の実情、とくに本採用との関係における取扱についての事実上の慣行のいかんをも重視すべきものである」と判示してい……
転勤命令を拒否した正社員を懲戒解雇することができますか?
転勤命令自体が無効の場合は、転勤命令拒否を理由とする懲戒解雇は認められません。
他方、有効な転勤命令を正社員が拒否した場合は重大な業務命令違反となるため、転勤命令拒否を理由とした懲戒解雇は懲戒権の濫用にはならないのが通常ですが、裁判例の中には、社員が転勤に伴う利害得失を考慮して合理的な決断をするのに必要な情報を提供するなどの必要な手順を尽くすべきとして、拙速な懲戒解雇を無効と判断……
他方、有効な転勤命令を正社員が拒否した場合は重大な業務命令違反となるため、転勤命令拒否を理由とした懲戒解雇は懲戒権の濫用にはならないのが通常ですが、裁判例の中には、社員が転勤に伴う利害得失を考慮して合理的な決断をするのに必要な情報を提供するなどの必要な手順を尽くすべきとして、拙速な懲戒解雇を無効と判断……
転勤命令違反を理由とした懲戒解雇の有効性が争われた場合、主に何が問題となりますか?
転勤命令違反を理由とした懲戒解雇の有効性が争われた場合、
① 転勤命令権限の有無(勤務地限定特約の有無)
② 転勤命令が濫用されたと評価できるかどうか
③ 懲戒解雇が懲戒権の濫用(労契法15条)に当たるかどうか
が主に問題となります。 ……
① 転勤命令権限の有無(勤務地限定特約の有無)
② 転勤命令が濫用されたと評価できるかどうか
③ 懲戒解雇が懲戒権の濫用(労契法15条)に当たるかどうか
が主に問題となります。 ……
社員の非違行為が就業規則に定める懲戒解雇事由に該当する場合であっても、懲戒解雇が無効となることがありますか?
労契法15条は、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定しています。
したがって、社員の非違行為が就業規則に定める懲戒解雇事由に該当するように見える場合であっても、懲戒解雇が……
したがって、社員の非違行為が就業規則に定める懲戒解雇事由に該当するように見える場合であっても、懲戒解雇が……
まずは戒告処分をしてみて、反省の色が見られないようなら、同じ事実を理由として懲戒解雇しようと思うのですが、問題ないでしょうか?
懲戒処分の有効性は、一事不再理の原則を考慮して判断されるため、懲戒処分を行った事実と同一の事実について、懲戒解雇することはできないことを前提として、どのような懲戒処分に処するのかを決定する必要があります。
戒告処分に処した場合は、同じ非違行為を理由として更に懲戒処分に処することはできないものと考えて下さい。
懲戒解雇するには、戒告処分の理由とされた非違行為とは別の……
戒告処分に処した場合は、同じ非違行為を理由として更に懲戒処分に処することはできないものと考えて下さい。
懲戒解雇するには、戒告処分の理由とされた非違行為とは別の……
懲戒解雇を通知した場合に、懲戒解雇の意思表示は、同時に普通解雇の意思表示でもあるという主張は認められますか。
この問題は、結局のところ、当該解雇の意思表示の解釈(事実認定)の問題であり、事案ごとに検討するほかありません。
懲戒解雇のみを行ったことが明らかな場合は、普通解雇であれば有効な事案であっても、懲戒解雇の意思表示が同時に普通解雇の意思表示でもあるという主張は認められません。
裁判例の中には「使用者が、懲戒解雇の要件は満たさないとしても、当該労働者との雇用関係を解消し……
懲戒解雇のみを行ったことが明らかな場合は、普通解雇であれば有効な事案であっても、懲戒解雇の意思表示が同時に普通解雇の意思表示でもあるという主張は認められません。
裁判例の中には「使用者が、懲戒解雇の要件は満たさないとしても、当該労働者との雇用関係を解消し……
懲戒解雇した時点で既に存在していたものの使用者に判明しておらず、当初は懲戒理由とされていなかった非違行為が後から判明した場合,懲戒解雇の有効性を根拠付ける理由とすることはできますか?
懲戒解雇した時点で既に存在していたものの使用者に判明しておらず、当初は懲戒理由とされていなかった非違行為が新たに判明した場合、懲戒解雇の有効性を根拠付ける理由とすることができるかに関し、山口観光事件最高裁第一小法廷平成8年9月26日判決(労判708号31頁)が、「使用者が労働者に対して行う懲戒は、労働者の企業秩序違反行為を理由として、一種の秩序罰を課するものであるから、具体的な懲戒の適否は、その……
懲戒解雇の有効性を判断する際の検討項目を教えて下さい。
懲戒解雇の有効性を判断する際には、
① 就業規則の懲戒解雇事由に該当するか
② 懲戒権濫用(労契法15条)に当たらないか
③ 解雇予告義務(労基法20条)を遵守しているか
④ 解雇が制限されている場合に該当しないか
等の項目を検討する必要があります。 ……
① 就業規則の懲戒解雇事由に該当するか
② 懲戒権濫用(労契法15条)に当たらないか
③ 解雇予告義務(労基法20条)を遵守しているか
④ 解雇が制限されている場合に該当しないか
等の項目を検討する必要があります。 ……