労働問題42 懲戒解雇した時点で既に存在していたものの使用者に判明しておらず、当初は懲戒理由とされていなかった非違行為が後から判明した場合,懲戒解雇の有効性を根拠付ける理由とすることはできますか?
懲戒解雇した時点で既に存在していたものの使用者に判明しておらず、当初は懲戒理由とされていなかった非違行為が新たに判明した場合、懲戒解雇の有効性を根拠付ける理由とすることができるかに関し、山口観光事件最高裁第一小法廷平成8年9月26日判決(労判708号31頁)が、「使用者が労働者に対して行う懲戒は、労働者の企業秩序違反行為を理由として、一種の秩序罰を課するものであるから、具体的な懲戒の適否は、その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものである。したがって、懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情のない限り、当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないものというべきである。」と判示していますので、懲戒解雇した時点で使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情のない限り、懲戒解雇の有効性を根拠付ける理由とすることはできません。
この点は、原則として解雇事由の追加主張が認められる普通解雇と大きく異なります。
懲戒解雇した時点で認識していなかった非違行為が新たに判明した場合は、
① 山口観光事件最高裁平成8年9月26日判決のいう「特段の事情」があるかどうか
② 懲戒解雇の意思表示が同時に普通解雇の意思表示でもあると評価することができるか
③ 当初の懲戒解雇とは別途、予備的解雇をする場合の懲戒解雇又は普通解雇の理由とするか
等について検討していくことになります。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎