労働問題61 採用面接時に能力が低い応募者だということが判明した場合であっても、雇用確保に貢献し、就職できない応募者にチャンスを与える意味で採用し、試用期間中の勤務状況から役に立つ人材と判断できたら本採用拒否せずに雇い続けるというやり方をどう思いますか?

 「能力が低いのは分かっていたけど、就職できなくて困っているようだし、もしかしたら会社に貢献できる点も見つかるかもしれないから、チャンスを与えるために採用してあげた。」という発想は、雇用主の責任の重さを考えると、極めて危険な考え方です。
 緩やかな基準で認められる試用期間中の本採用拒否(解雇)は、「当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実」を理由とする本採用拒否(解雇)に限られますから、新たに本採用拒否に値する事実が判明しない限り、本採用拒否はおそらく無効と判断されることでしょう。
 採用されて試用期間中に本採用拒否(解雇)された労働者からは、全く感謝されず、それどころか「中途半端に採用されなければ、他社で正社員として就職することができたのに、人を物のように扱うブラック企業によって人生を狂わされた。」と非難されることも珍しくありません。
 使用者は、その応募者に魅力があって雇いたいと考える場合に初めて雇うべきであり、魅力がないと判断したら不採用とする必要があります。
 「雇ってあげる。」といった発想で社員を雇った場合、会社経営者は「いいことをしたのだから、感謝されないまでも、悪くは思われることはないだろう。」と思い込んだり、自分が面倒見のいい親分になったような気分に浸ったりして脇が甘くなりやすく、トラブルになるリスクが極めて高くなりますので、そうはならないよう、気持ちを引き締めて採用活動に当たって下さい。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎

 

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