労働問題78 勤務成績・勤務態度が悪いことは本人も社員みんなも知っているような場合でも証拠固めが必要なのはなぜですか?

この記事の要点

「本人も知っている、みんなが証言してくれる」は危険な思い込みです。訴訟では労働者は必ず「問題なかった」と主張し、利害関係人の証言は重視されません。客観的証拠が不可欠です。

訴訟になれば労働者側はほぼ間違いなく「問題なかった」と主張します。経営者・同僚等の利害関係人の証言は裁判所からの信用性評価が低く、客観的な書面・記録等の証拠が決め手となります。解雇前の証拠整備と相手の言い分の確認が不可欠です。

訴訟では労働者はほぼ必ず「問題なかった」と主張する

「本人が一番知っているはずだから問題を認めるはず」という期待は裏切られます。訴訟・労働審判では労働者側が問題を否定するのが通常です。


利害関係人の証言は経営者が思うほど重視されない

経営者・同僚等の利害関係人の証言は信用性評価が低く、客観的な書面・記録等の証拠の方が裁判所に重視されます。


解雇前に客観的証拠の整備と相手の言い分の確認が必要

客観的証拠の準備と、解雇前の問題社員の言い分の聴取・確認が、解雇の有効性を支える最重要の準備です。

1. 「本人も周囲も知っている」という安易な考えの危険性

訴訟では労働者はほぼ必ず「問題なかった」と主張する

 十分な証拠固めをしないまま、「彼の勤務成績・勤務態度が悪いことは、本人が一番よく知っているはずだ。このことは社員みんなが知っていて証言してくれるはずだから、裁判にも勝てる」といった安易な考えに基づいて問題社員を解雇する事例が見られますが、これは非常に危険な考え方です。

 訴訟になるような事案では、労働者側はほぼ間違いなく自分の勤務成績・勤務態度には問題がなかったと主張してきます。「本人が一番よく知っているはずだから問題を認めるはず」「まさか問題がなかったとは言わないだろう」という期待は、ほぼ確実に裏切られます。解雇されてしまった後に問題を認めることは、自分の解雇を正当化することになるため、法的な利害関係上、労働者側は問題を否定するのが通常です。

利害関係人の証言は経営者が思うほど重視されない

 「社員みんなが証言してくれるから裁判に勝てる」という期待も危険です。経営者・社員等の利害関係人の証言は経営者が思っているほど重視されません。

 裁判所は、解雇の有効性を判断する際に、利害関係人(経営者・同僚等)の証言よりも、客観的な書面・記録等の証拠を重視します。証言者は意図的にせよ無意識にせよ自分に都合のよい内容を述べる可能性があり、特に使用者側の利害関係者の証言は信用性の評価が低くなりがちです。また、証言者が「解雇無効」とされた場合に問題社員が職場に戻ってくるリスクを考えると、正直に問題を証言することをためらう社員もいます。

✕ よくある経営者の危険な思い込み

「本人も勤務態度が悪いことはわかっているはずだから、まさか否定しないだろう」→ ほぼ必ず否定されます。
訴訟・労働審判では、労働者側はほぼ間違いなく「問題なかった」と主張します。問題を認めることは自分の解雇を正当化するため、法的利害上否定するのが当然です。

「仕事仲間みんなが問題を知っているから、証言してくれれば勝てる」→ 証言は期待通りには機能しません。
利害関係人の証言は裁判所から信用性を疑われます。また「解雇無効で戻ってきたら困る」と思う社員が証言を避けたり内容を緩めたりすることがあります。客観的証拠こそが決め手です。

2. 解雇前に確認すべきこと

客観的証拠の確認

 解雇に踏み切る前の時点で、①解雇されてもやむを得ないと考えられるような具体的事実を説明することができるかどうか、②その事実を立証できるだけの客観的証拠が準備できているかどうかを確認する必要があります。

 客観的証拠としては、注意指導書・業務日報・メール・面談記録・業績評価書等が挙げられます。これらが整備されていない場合、解雇の有効性を主張することが困難になります。

解雇前に問題社員の言い分を聴取する

 相手の言い分を聞かないことには、解雇されてもやむを得ないと考えられるような具体的事実があるのかないのかを確認することが難しいのが通常です。解雇に踏み切る前に、問題社員の言い分を十分に聴取し、使用者側が認識している事実関係と照らし合わせて、客観的にどのような事実が認定できるかを検討すべきです。

 問題社員の言い分を聴取することには二つの重要な意義があります。第一に、使用者側が知らない事情(合理的な弁解・健康上の問題・職場環境の問題等)が判明する可能性があり、解雇の相当性を判断するための情報が得られます。第二に、解雇前に弁明の機会を与えたという事実が、解雇手続の適正性(社会通念上の相当性)を支える要素となります。

 問題社員への対応・客観的証拠の整備・解雇前の言い分聴取の方法について、弁護士へのご相談をお勧めします。→ 経営労働相談はこちら

⚠ 実務でよく見られるパターン(弁護士対応事例より)

・「社員全員が問題を知っていると確信して解雇した。訴訟では労働者が全力で問題を否定し、社員の証言も曖昧なものばかりで客観的証拠が皆無だった。解雇無効・高額バックペイの支払を余儀なくされた」

・「問題社員を解雇する前に弁護士に相談し、証拠の確認と言い分の聴取を実施した。言い分を聴取したところ健康問題が判明し、退職勧奨で合意退職が成立した。客観的証拠の整備と早期対応が成功の鍵だった」

 「本人も周りも知っている」という確信は訴訟では通用しません。客観的証拠と適正な手続が解雇の有効性を支えます。

4. まとめ

 「本人も周囲の社員も勤務態度の悪さを知っているから証拠不要・証言で勝てる」という安易な考えは非常に危険です。訴訟になれば労働者側はほぼ間違いなく「問題なかった」と主張し、利害関係人の証言は裁判所から信用性を疑われます。解雇に踏み切る前に、①解雇されてもやむを得ない具体的事実を説明できるか、②それを立証する客観的証拠が準備できているか、③問題社員の言い分を十分に聴取したか、を確認することが必要です。これらは解雇前にしかできない準備であり、問題が生じた段階ですぐに弁護士に相談することが最善策です。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

 

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最終更新日 2026/04/05

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