労働問題82 問題社員に注意指導や懲戒処分をすると職場の雰囲気が悪くなるから直ちに解雇した方がいいですか?
目次
注意指導なしに問題社員を放置する方が、職場の雰囲気にとってずっと大きな問題です。注意指導・懲戒処分を避けると問題行動がエスカレートし、他の社員にも悪影響が及びます。
問題社員に注意指導・懲戒処分をすることは、会社の秩序と真面目に働いている他の社員を守るために不可欠です。逃げずに注意指導し、改善されない場合には懲戒処分に処することが経営者としての責務です。
■ 注意指導なしの放置の方が職場の雰囲気を悪化させる
注意指導・懲戒処分をしないと問題行動がエスカレートし(態度悪化・新入社員へのいじめ等)、真面目な社員のモチベーションも低下します。
■ 注意指導・懲戒処分は会社の秩序と他の社員を守るために不可欠
問題社員への対応は、他の真面目な社員のためにも必要です。「問題があっても何もされない」という風潮は職場全体に悪影響を及ぼします。
■ 逃げずに注意指導し、改善されなければ懲戒処分
経営者として、注意指導・懲戒処分から逃げることは許されません。逃げずに対応することが、解雇の有効性を支えるとともに職場環境を守ることにもなります。
1. 注意指導なしの放置の方が職場の雰囲気を悪化させる
注意指導をすることで一定の軋轢は生じるが……
確かに、問題社員に注意指導や懲戒処分をした場合、一定の軋轢が生じることは予想されるところです。しかし、注意指導や懲戒処分もせずに問題社員の好き勝手にさせていることの方が、職場の雰囲気にとって大きな問題です。
当然行うべきであった注意指導や懲戒処分をしなかった結果、上司に対する態度もますます悪化したり、新入社員に仕事を教えなかったりいじめたりして何人も辞めさせたりする等の問題行動がエスカレートしてしまうのです。
問題行動がエスカレートするメカニズム
問題社員に注意指導をしないことは、「この程度の問題行動は許容されている」「会社はこのような行動を黙認している」というシグナルを問題社員に与えます。問題行動が許容されると感じた問題社員は、その行動をエスカレートさせる傾向があります。
また、問題社員を放置することは、真面目に働いている他の社員にも悪影響を及ぼします。「ルールを守らなくても何もされない」という職場環境は、全体のモチベーション・規律意識の低下を招きます。優秀な社員が「こんな職場では働けない」と離職するリスクも高まります。
✕ よくある経営者の誤解・回避行動
「注意指導すると関係が悪くなるから、言いたいことを言わずに我慢している」→ 問題が悪化します。
注意指導を避けることは、問題行動を許容するシグナルとなり、問題行動がエスカレートする原因になります。注意指導した方が、長期的には職場環境が改善されます。
「面倒な問題社員への対応は後回しにして、もう少し様子を見よう」→ 問題が複雑になります。
問題行動への対応を先延ばしにするほど、エスカレートした問題行動の証拠が積み上がり、他の社員への被害が拡大し、解決が困難になります。問題が生じた段階で早期に対応することが重要です。
2. 注意指導・懲戒処分は会社の秩序と他の社員を守るために必要
経営者としての責務
問題社員に注意指導や懲戒処分をすることは、会社の秩序や真面目に働いている他の労働者を守るために必要不可欠なことですから、逃げずに注意指導し、それでも改善されない場合には懲戒処分に処するようにしてください。
会社経営者は、すべての社員に対して適切な職場環境を維持する責任を負っています。問題社員による職場環境の悪化(ハラスメント・職場秩序の乱れ等)に対して適切に対応することは、経営者としての当然の責務です。注意指導・懲戒処分から逃げることは、この責務からの逃避であり、長期的には経営者自身の信頼性を損なうことにもなります。
法的観点からも注意指導・懲戒処分は必要
職場環境維持の観点だけでなく、法的観点からも注意指導・懲戒処分の積み重ねは必要です。解雇の有効性を判断する際に(労契法16条)、注意指導・懲戒処分歴の有無が考慮されます。注意指導・懲戒処分を怠った状態での解雇は、「改善の機会を与えなかった」として解雇の相当性が否定されるリスクが高まります。
「注意指導が面倒」「関係が悪くなりたくない」という気持ちで注意指導を怠ることは、後で問題社員を解雇しようとした際に自らの首を絞める結果となります。
問題社員への注意指導・懲戒処分の進め方・職場環境改善の方策について、弁護士へのご相談をお勧めします。→ 経営労働相談はこちら
⚠ 実務でよく見られるパターン(弁護士対応事例より)
・「問題社員への注意指導を避けて放置した結果、その社員が新入社員を次々とパワハラで辞めさせた。被害社員から損害賠償請求を受け、また使用者責任も問われた。問題社員は注意指導・懲戒処分の記録もなく、解雇も困難な状況になっていた」
・「問題社員に書面による注意指導を行い、改善されないため懲戒処分に処した。当初は軋轢が生じたが、毅然とした対応が職場の規律を取り戻す効果をもたらし、真面目な社員からは評価された。最終的に退職勧奨で合意退職が成立した」
「注意指導するのが怖い」という経営者の気持ちは理解できますが、放置する方が長期的にはより大きな問題を招きます。弁護士に相談しながら毅然とした対応を取ることが最善策です。
4. まとめ
問題社員に注意指導・懲戒処分をすることで一定の軋轢が生じることは事実ですが、注意指導・懲戒処分もせずに放置することの方が職場の雰囲気に大きな問題です。注意指導を怠ると問題行動がエスカレートし(態度悪化・新入社員へのいじめ等)、真面目な他の社員のモチベーションも低下します。問題社員への注意指導・懲戒処分は、会社の秩序と真面目に働いている他の社員を守るために必要不可欠です。逃げずに注意指導し、改善されない場合には懲戒処分に処することが、経営者としての責務であり、解雇の有効性を支える証拠にもなります。問題社員への対応は早めに弁護士に相談することをお勧めします。
さらに詳しく知りたい方はこちら
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弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日 2026/04/05