労働問題81 問題社員の解雇に臨むに当たってのあるべきスタンスを教えて下さい。

この記事の結論
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「解雇ありき」ではなく「正常な労使関係を回復する方法がないか検討したうえで、やむなく解雇に踏み切る」

最初に解雇を決めてから「どうやって辞めさせるか」を考えるアプローチは、法的に危険です。労使関係の回復に向けた努力を尽くしたうえでやむなく解雇に至る、というスタンスが解雇の有効性を支えます。

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注意指導・懲戒処分等の代替手段を尽くした経過が、解雇の相当性を支える

よほど悪質な事案でない限り、注意指導・懲戒処分・配置転換の検討・退職勧奨を経て、それでも改善しない場合に初めて解雇へ進むべきです。この経過が「解雇以外に方法がない」ことを客観的に示します。

01あるべきスタンス:「やむなく解雇に踏み切る」

「解雇ありき」ではなく「やむなく解雇」

 問題社員の解雇に臨むにあたってのあるべきスタンスは、最初に解雇を決定してから「どうやって問題社員を辞めさせるか」を検討するのではなく、解雇せずに正常な労使関係を回復する方法がないかを検討したものの、回復のための現実的な方法がないために、やむなく解雇に踏み切る、というものです。

 「解雇ありき」で「どうやって辞めさせるか」を考えるアプローチには、二つの問題があります。第一に、解雇の有効性判断で重視される「正常な労使関係の回復に向けた努力」が欠けてしまうこと。第二に、注意指導・懲戒処分の積み重ねをおろそかにさせ、証拠不足や改善機会の未付与といった解雇無効のリスクを高めてしまうことです。出発点のスタンスが、そのまま結論の有効性に響いてきます。

注意指導・懲戒処分の積み重ねが前提

 よほど悪質な事案でない限り、まずは十分に注意指導し、懲戒処分を積み重ね、それでも改善されない場合に初めて解雇に踏み切ることになります。これは単なる「手続の問題」ではなく、「解雇の有効性を支える実体的な準備」です。注意指導・懲戒処分を積み重ねることには、次の三つの効果があります。

①問題行動の具体的事実の証拠が蓄積される

②「改善の機会を与えた」という事実が積み上がる

③「それでも改善されなかった」という「解雇以外に方法がない」状況が客観的に示せるようになる

よくある会社経営者の危険なスタンス

 「まず解雇すると決めてから、解雇できる理由を集めればいい」→ 法的に危険です。この進め方は「解雇のための後付けの証拠集め」と評価されるリスクがあり、正常な労使関係の回復に向けた努力の欠如とも見られかねません。

 「注意指導・懲戒処分は面倒だから、問題があればすぐ解雇したい」→ かえってリスクが高まります。注意指導・懲戒処分を経ない解雇は「改善の機会を与えなかった」として相当性が否定されやすく、正攻法のほうが結果として解雇の有効性が高まります。

02「正常な労使関係を回復する方法がない」状況の作り方

段階的対応の基本プロセス

 正常な労使関係を回復する方法がないという状況に至るまでには、通常、次のような段階的対応が必要です。

①口頭での注意指導
問題行動を認識した段階での最初の対応。具体的な問題点を指摘し、改善を求めます。

②書面による注意指導(改善指示書等)
口頭指導後も改善が見られない場合に、問題点・改善事項・期限を書面で明確にします。

③懲戒処分(戒告・譴責・減給・出勤停止等)
書面指導後も改善されない場合に、問題の程度に応じた処分を段階的に行います。処分は就業規則の定めの範囲内で行い、減給には労働基準法91条の限度があります。

④配置転換・業務変更の検討
配置転換によって問題が解消できる可能性がある場合には、その検討も必要になることがあります。

⑤退職勧奨
以上の手順を踏んでもなお改善がない場合に、まず退職勧奨(合意退職の提案)を試みます。

⑥解雇
退職勧奨にも応じない場合に、初めて解雇に踏み切ります。

「余程ひどい事案」の場合は例外

 「余程ひどい事案でない限り」という留保は重要です。横領、重大な背任、職場での暴力、重大なハラスメント等の極めて深刻な非違行為がある場合には、注意指導・懲戒処分の積み重ねがなくても解雇(懲戒解雇)に踏み切ることが正当化される場合があります。しかし、これはあくまで例外であり、通常の問題社員への対応では、段階的なプロセスが必要になると考えておくべきです。

実務でよく見られるパターン

・「解雇ありき」で対応し、注意指導・懲戒処分をせずに解雇したところ、正常な労使関係の回復に向けた努力が評価されず、解雇の相当性が否定され、高額の解決金を支払うことになった。

・問題社員への対応を早めに弁護士に相談し、注意指導・懲戒処分・退職勧奨というプロセスを数か月間丁寧に積み重ねた結果、退職勧奨に応じてもらえ、合意退職が成立した。

経営上のポイント 問題社員の解雇に臨むあるべきスタンスは、「解雇ありき」で辞めさせ方を考えるのではなく、正常な労使関係を回復する方法がないかを検討したうえで、現実的な方法がないためにやむなく解雇に踏み切る、というものです。よほど悪質な事案でない限り、注意指導・懲戒処分・配置転換の検討・退職勧奨を積み重ね、それでも改善しない場合に初めて解雇へ進むべきです。この経過そのものが、解雇の有効性を支える証拠と客観的事実になります。問題社員の解雇退職勧奨の進め方は、早期に会社側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月1日

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