労働問題40 懲戒解雇の有効性判断の4つの検討項目とは?実務上の注意点を会社側弁護士が解説

この記事の要点

懲戒解雇の有効性は4つの検討項目すべてを満たして初めて認められます。特に「懲戒権濫用」の壁は高く、就業規則の整備・事実確認・弁明聴取の手続が不可欠です。

 懲戒解雇の有効性判断には、①就業規則の懲戒解雇事由に該当するか、②懲戒権濫用(労働契約法15条)に当たらないか、③解雇予告義務(労基法20条)を遵守しているか、④解雇が制限されている場合に該当しないか、という4項目の検討が必要です。

①就業規則の懲戒事由への該当:懲戒解雇の絶対的前提

 就業規則に懲戒解雇事由が規定されており、かつ当該行為がその事由に該当することが懲戒解雇の大前提です。規定がない・該当しない場合は懲戒解雇できません。


②懲戒権濫用の有無:最も重い処分として相当かの審査

 事由に該当しても、懲戒解雇という最も重い処分が相当かどうかが問われます。非違行為の重大性・悪質性・反省の有無・均衡性等を総合考慮して判断されます。


③解雇予告義務・④解雇制限:手続面の確認も必須

 懲戒解雇でも原則として30日前の予告または予告手当の支払いが必要です。また傷病休業中等の解雇制限期間に該当しないかも必ず確認が必要です。

1. ①就業規則の懲戒解雇事由に該当するか

懲戒解雇の絶対的前提:就業規則の規定と該当性

 懲戒解雇を行うためには、まず就業規則に懲戒解雇事由が明確に規定されており、かつ当該労働者の行為がその事由に該当することが絶対的な前提です。就業規則がない場合や、就業規則に懲戒解雇事由の規定がない場合、または規定はあっても当該行為が事由に該当しない場合は、懲戒解雇として行うことは原則としてできません(詳細は労働問題41参照)。

 就業規則の懲戒解雇事由の典型例としては、①横領・背任・会社財産の不正使用、②重大なハラスメント(セクハラ・パワハラ等)、③経歴詐称(重要な事項の虚偽申告)、④業務上の重大な過失・故意による損害の発生、⑤懲戒処分を繰り返した後の再度の就業規則違反、⑥刑事上の有罪判決(特に実刑)、などがあります。就業規則の懲戒解雇事由が適切に整備されているかどうかを事前に確認することが不可欠です。

2. ②懲戒権濫用(労働契約法15条)に当たらないか

懲戒権濫用法理の内容

 労働契約法15条は、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないと認められる場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」と定めています。

 つまり、就業規則の懲戒事由に該当する行為があったとしても、懲戒解雇という最も重い処分を科すことが社会通念上相当でない場合には、懲戒権濫用として無効となります。懲戒権濫用の判断では、①非違行為の重大性・悪質性、②会社・被害者への影響の程度、③本人の反省・謝罪の有無、④他の社員への処分との均衡(同種行為への処分水準)、⑤過去の処分歴・指導歴、⑥弁明聴取など手続の適正性、を総合考慮して判断されます。

弁明聴取の手続が重要

 懲戒解雇の相当性判断において、本人から弁明の機会を与えたかどうかが重要な考慮要素となります。本人から十分な弁明を聴取せずに懲戒解雇を行うことは、手続の相当性を欠くとして懲戒権濫用に問われるリスクがあります。事実確認を徹底し、本人から弁明の機会を与えた上で懲戒解雇を行うことが必要です。

✕ よくある経営者の誤解

「就業規則の懲戒事由に該当するから、懲戒解雇は必ず有効だ」→ 誤りです。
 就業規則の懲戒事由に該当することは懲戒解雇の必要条件ですが、十分条件ではありません。さらに懲戒権濫用(労契法15条)の壁を越えなければなりません。非違行為の重大性に照らして懲戒解雇が重すぎる場合、懲戒権濫用として無効となります。

「横領した社員は即日解雇できる。解雇予告手当も不要だ」→ 原則は誤りです。
 即時解雇(解雇予告手当なし)には、労働基準監督署長の除外認定が必要です。認定なしに即時解雇を行うと、解雇予告手当の支払義務が生じます。横領等の重大事案でも、必ず事前に弁護士に確認することをお勧めします。

 懲戒解雇の事由該当性・懲戒権濫用の有無・弁明聴取の手続について、実施前の弁護士への相談が不可欠です。一度誤った対応をすると取り返しがつかなくなることがあります。→ 経営労働相談はこちら

3. ③解雇予告義務(労働基準法20条)を遵守しているか

懲戒解雇も原則として予告義務の対象

 懲戒解雇も労働基準法20条の解雇予告義務(少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う義務)の対象となります。懲戒解雇だから予告義務が免除されるわけではありません。

 ただし、「労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合」で、労働基準監督署長の除外認定(労基法20条1項但書・3項)を受けた場合は、予告なしに即時解雇することができます。横領・背任など重大な非違行為がある場合は除外認定の申請を検討しますが、認定は必ずしも容易ではなく、認定前に解雇することはリスクを伴います。即時解雇を検討する場合は必ず事前に弁護士に相談することをお勧めします。

4. ④解雇が制限されている場合に該当しないか

解雇制限期間・解雇禁止規定の確認

 懲戒解雇を行う場合でも、法令上の解雇制限に該当しないかを必ず確認することが必要です。業務上の傷病による休業期間およびその後30日間・産前産後休業期間およびその後30日間は、解雇が制限されています(労基法19条)。これらは強行規定であり、懲戒解雇であっても例外はありません。

 また、育児休業・介護休業の取得を理由とする不利益取扱いの禁止・労働組合活動を理由とする不当労働行為・内部告発(公益通報)を理由とする不利益取扱いの禁止なども、懲戒解雇に当たって確認が必要な解雇禁止・制限規定です。懲戒事由に該当する行為があったとしても、これらの禁止規定に抵触する場合は懲戒解雇が無効となる可能性があります。

⚠ 実務でよく見られるパターン(弁護士対応事例より)

 懲戒解雇の有効性をめぐる紛争でよく見られるのは、次のようなパターンです。

・「就業規則の懲戒解雇事由には形式的に該当するが、非違行為の程度が軽微で、懲戒解雇は重すぎるとして懲戒権濫用・無効とされた」

・「本人から弁明を聴取せずに懲戒解雇を通告。手続の相当性を欠くとして懲戒権濫用と判断された」

・「業務上の傷病による休業中に懲戒解雇を通告。解雇制限期間に当たるとして無効とされた」

5. まとめ

 懲戒解雇の有効性判断には、①就業規則の懲戒解雇事由に該当するか、②懲戒権濫用(労働契約法15条)に当たらないか、③解雇予告義務(労基法20条)を遵守しているか、④解雇が制限されている場合に該当しないか、という4項目すべての検討が必要です。就業規則の懲戒事由に該当するだけでは不十分であり、懲戒解雇という最も重い処分が社会通念上相当かどうかという懲戒権濫用の審査が特に重要です。弁明聴取等の手続の適正性も問われます。懲戒解雇を検討している場合は、必ず実施前に会社側の労働問題に精通した弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

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最終更新日 2026/3/25

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