労働問題70 解雇が無効だったとしても、ノーワーク・ノーペイなのですから、働いていない期間の賃金は支払う必要はありませんよね?

 解雇が無効の場合において、労働者が就労の意思と能力があるにもかかわらず、使用者が就労を拒絶しているような場合には、就労不能の帰責事由が使用者にあると評価されるのが通常です。
 したがって、解雇された労働者が現実には働いていなかったとしても、使用者は賃金支払義務を免れず(民法536条2項)、実際には働いていない期間についての賃金についても、支払わなければならなくなります。
 例えば、月給30万円の労働者を解雇した1年後に解雇が無効と判断された場合、既に発生している過去の賃金だけで、30万円×12か月=360万円の支払義務を使用者が負担するリスクを負っており、その後も毎月30万円ずつ支払額が増額されていくリスクがあることになります。
 上記具体例を見れば、解雇が無効と判断された場合、働いてもいない労働者に対し、高額の賃金を支払わなければならないことが分かると思います。
 無効な解雇をさせることができれば、働かずに働いたのと同じ賃金を取得できることから、勤労意欲の低い問題社員の中には、使用者に対し積極的に自分を解雇するよう働きかけて自分を解雇させ、解雇無効を主張して働かずに毎月の賃金(高額の解決金)を取得しようとする者もいます。
 最近、無断で録音機をポケットに忍ばせて、経営者に対して解雇だと言わせようと頑張る問題社員が増えていますので、見え透いた罠にはまらないようくれぐれもご注意下さい。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎

 

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