労働問題104 契約期間3年の契約社員が1年半で退職希望|会社経営者は退職を拒否できるか?労基法137条の実務

この記事の要点

3年契約でも1年経過後は退職を拒絶できません(労基法137条)。1年半が経過している本件では、原則として退職の拒絶は困難です。退職阻止より引継ぎ確保・業務影響最小化を優先することが現実的対応です。

適用除外は①一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの、②高度専門職(年収1,075万円以上等)、③60歳以上の労働者に限られます。それ以外の場合、1年経過後の退職自由を前提に対応を整理する必要があります。

労基法137条:1年超の有期契約は1年経過後いつでも退職可能

3年契約でも1年が経過すれば、「やむを得ない事由」なしに退職申出が可能です。現行実務では所定の措置は未実施のため退職自由が認められます。


退職拒絶はリスクが高い——解雇認定・法的問題のリスク

退職を不当に拒絶すると解雇と認定されるリスクや法的問題に発展するリスクがあります。


現実的対応:引継ぎ確保・後任手配・業務影響の最小化

退職を止めることより、円滑な引継ぎと業務への影響最小化を優先する対応が現実的です。

1. 3年契約でも途中退職は可能か——法的枠組みの整理

 契約期間を3年と定めている以上「途中で辞めることはできない」と考えたくなるのが会社経営者の率直な感覚でしょう。しかし、法制度は必ずしもそのように単純ではありません。

 本来、有期労働契約は期間満了までの就労を前提として締結されるものです。そのため、民法628条の原則では「やむを得ない事由」がない限り契約期間途中の一方的解除は認められないとされています。もっとも、労働基準法137条が適用される場合には事情が異なります。本件のように契約期間3年・勤務開始から1年半が経過している場合、原則として労基法137条の適用が問題となります。

2. 労基法137条——1年経過後はいつでも退職可能

1年経過後の退職自由

 労働基準法137条は、契約期間が1年を超える有期労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除く)について、契約開始日から1年を経過した日以後は、労働者はいつでも退職を申し出ることができると定めています。3年契約であっても、1年が経過していれば「やむを得ない事由」は不要です。

 本件では勤務開始から1年半が経過していますので、原則として労基法137条が適用され、退職の拒絶は困難です。

「所定の措置」の現状

 労基法137条は「所定の措置が講じられるまでの間は」という前提のもとで1年経過後の退職自由を認めていますが、現時点において所定の措置は実質的に講じられていない状況にあります。そのため実務上は、1年を超える有期契約については原則として1年経過後にいつでも退職申出が可能という運用がなされています。「所定の措置が講じられていないから退職を制限できる」という理解は誤りです。

✕ よくある経営者の誤解・危険な対応

「3年契約なのだから、1年半で辞めようとしても拒絶できるはずだ」→ 誤りです。
労基法137条により、1年経過後はいつでも退職申出が可能です。1年半が経過している本件では退職を拒絶することは困難です。

「退職届を受け取らなければ退職を阻止できる」→ 危険です。
退職届を受け取らないことは退職の効力発生を止めません。むしろ出社しなくなった際に解雇と認定されるリスクが生じます。

3. 適用除外となるケース

①一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの

 特定のプロジェクト・工事の完了等、一定の事業の完了に必要な期間を定めた有期契約は労基法137条の適用除外となります。この場合、民法628条の「やむを得ない事由」の枠組みで判断されます。

②高度専門職・60歳以上の労働者(労基法14条1項各号)

 専門的な知識・技術・経験であって高度のものを有する労働者(年収1,075万円以上等の基準を満たすもの)および60歳以上の労働者については、労基法14条1項各号の規定により、労基法137条の適用が除外されます。これらに該当する場合は、民法628条の「やむを得ない事由」がなければ途中退職は原則として認められません。

4. 退職を拒絶した場合のリスクと実務上の対応

退職拒絶のリスク

 退職を不当に拒絶した場合、①社員が出社しなくなった際に解雇と認定されるリスク、②就労を強制しようとすることが労働者の自由を侵害するものとして法的問題となる可能性があります。「退職届を受け取らなければ退職を阻止できる」という対応は、法的に無効であるだけでなく、紛争を拡大させるリスクがあります。

現実的な対応方針

 退職を止めることより、①退職届を受け取り退職日を確定させる、②退職日までの引継ぎを書面で要請する、③後任者の手配・業務再配分を早急に進める、④引継ぎ未了による業務上の損害を記録しておく(将来の損害賠償請求に備えて)、⑤対応に迷ったら弁護士に相談する、という対応が現実的です。

 有期契約社員の途中退職への対応・引継ぎ要請の書面作成・損害賠償請求の可否について、弁護士へのご相談をお勧めします。→ 経営労働相談はこちら

5. まとめ

 労基法137条は、所定の措置が講じられるまでの間は、1年を超える有期労働契約を締結した労働者(一定の事業完了型契約・高度専門職・60歳以上を除く)について、契約期間の初日から1年を経過した日以後はいつでも退職できるものとしています。現時点では所定の措置は講じられていないため、3年契約の契約社員が1年半で退職を希望した場合、原則として退職を拒絶することはできません。退職を拒絶するより、引継ぎ確保・後任者手配・業務影響最小化を優先することが現実的な対応です。有期契約設計の見直しについては弁護士に相談することをお勧めします。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

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最終更新日 2026/04/05

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