問題社員(モンスター社員)対応の総合解説

 

FOR COMPANY OWNERS

問題社員(モンスター社員)対応の総合解説。
注意指導から懲戒処分・解雇まで
実務対応を、会社側専門の弁護士が解説します。

 問題社員への対応は、注意指導→懲戒処分→退職勧奨・解雇という段階を踏んで進めていくのが基本です。本ページでは、なぜ問題社員に対処しなければならないのかという根本的な考え方から、注意指導の具体的な進め方、懲戒処分の実施、そして退職勧奨・解雇に至るまでの実務対応の全体像を、会社側専門の弁護士が会社経営者向けに解説いたします。


VIDEO

本ページの基となる解説動画

 

 本ページは、藤田進太郎弁護士による「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTubeチャンネル)の各動画解説を素材として、当事務所が問題社員対応の全体像を統合的に文章化したハブページです。各テーマの詳細は、それぞれの専門ページおよび元動画でご確認いただけます。

CHAPTER 01

なぜ問題社員に対処しなければならないのか

 

「社員を大事にする」の意味を整理する

 問題社員対応の相談を多く受けていると、長い間問題社員を放置して、にっちもさっちもいかなくなってから相談にお越しになる方が多くいらっしゃいます。周りの社員から「あの方をなんとかしてくれないんだったら、私が会社を辞めます」と詰め寄られて、それでやっと対応を始めるというケースです。

 注意するのが面倒くさい、ハラスメントと言われたくない、という理由もあるかもしれません。しかしそれだけではなく、問題のある社員であっても、あまりうるさく注意するのは「社員を大事にする」ことにならないのではないかと感じている社長さんが多いのです。しかし冷静に考えてみると、問題を起こしている人だけが社員ではありません。その周りで嫌な思いをしながら毎日働いている方々も大事な社員です。

大事な社員を守るために対処する

 問題社員の態度がどんどんエスカレートしていくと、直接的な被害を受けるのは周りで一緒に働いている社員たちです。毎日出社するたびに態度の悪い人がそこにいて、普通に声をかけても喧嘩越しで言い返される。そのような状況が続けば、「こんな会社にいてもしょうがないな」と思って辞めてしまうかもしれません。ひどい場合にはうつ病になる社員が出てくることもあります。人手不足の原因がそこにあるかもしれないのです。

 周りの社員たちをしっかり守って、生き生きと才能を発揮してもらう。そのためには、問題のある方が出てきたときにしっかり対処しなければなりません。それであってこそ「社員を大事にする社長」です。問題社員対応は、問題社員を追い出すためにやるのではなく、大事な社員たちを守るためにやるのです。これが問題社員対応のスタートラインになります。

誰かと相談しながら対応する

 問題社員対応で何と言っても一番大事なのは、誰かと相談しながら対応するということです。社内の従業員との関係になると、どうしても感情的になりがちです。普段であれば冷静で的確な判断ができる社長さんであっても、問題のある社員の言動に対応しようとすると感情が入ってしまいます。ものすごく頭のいい方が自力で頑張るよりも、ほどほどの方であっても誰かと相談しながら対応すると冷静になって、間違いが起こりにくくなるのです。

CHAPTER 02

注意指導の基本:具体的事実を伝える

 

「解雇するため」ではなく「直してもらうため」に注意指導する

 注意指導の目的を間違えている会社が多く見られます。注意指導を全然やらないまま放置しておいて、問題がエスカレートしてどうにもならなくなったところで「どうやら注意指導と懲戒処分を積み重ねないと解雇できないらしい」と知り、そこから逆算して注意指導を始める。このパターンは失敗しやすい思考です。

 注意指導の目的は、直してもらうことです。注意指導を重ねて懲戒処分も何回もやったのに治らなかった場合、いわば「失敗事例」として解雇するのが本来の順序です。解雇のための下準備として注意指導するという逆算的な発想では、後の紛争でもギリギリの戦いになりやすく、和解する場合も条件が不利になりやすい傾向にあります。

会議室で、具体的事実を伝える

 普通の社員であれば、本人のそばで「これやっといてね」「これやっちゃダメだよ」と言えば通じます。ところが問題のある社員に同じやり方で伝えても通じないことが多いのです。その場合は、会議室などにしっかり呼んで、改まった雰囲気の中で話すことが大事です。できるだけ早い段階で、問題がエスカレートする前にやることが大切です。早い段階であれば大体会議室に来てくれますが、問題がエスカレートすると「なんで会議室に行かなきゃならないんですか」と話すことすらしてくれなくなることがあります。

 そして最も重要なのは、何月何日の何時頃、どこで、誰が、誰に対して、どのように、何をしたのか。これらの具体的事実を伝えることです。「あなたは常日頃から勤務態度が悪い」「協調性がない」といった抽象的・評価的な言葉では、教育効果がほとんどなく、「嫌いだから嫌がらせで言っているのではないか」「パワハラだ」と受け止められてしまうことがあります。仕事と関係のある具体的な事実を的確に伝えてパワハラだということになることはほとんどありません。

適切な日本語を使うことの大切さ

 問題社員対応で大事なのは法律や判例だけではありません。日本語のやりとりがとても大切です。パワハラと言われないようにするために的確な日本語を使うという意味もありますが、それ以上に、適切な日本語を使わないと教育指導の効果がないのです。抽象的な言葉で注意しても相手には伝わりません。具体的にどんな言葉で、どんな項目を伝えればいいのか。そこがわからなければ、弁護士に相談しながら日本語の指導を受けるのがよいでしょう。

CHAPTER 03

注意指導のレベルアップ:練習と書面

 

スポーツや楽器と同じで、練習しなければ上達しない

 注意指導しなければならないのはわかっている、本を読んでコツもわかった。にもかかわらず、実際にやってみるとうまくいかない。そういった経営者の方は多くいらっしゃいます。その原因は単純で、練習していないからです。

 ゴルフをマスターするには、実際に練習場に行ってスイングしなければなりません。野球でも素振りをしたりボールを投げたりして、実際にやることでだんだん上手になっていきます。注意指導も同じです。本を読んだりYouTubeで学んだだけでは上達しません。実際に練習をしながら情報を仕入れることが大切です。自分一人で練習しても効果はありますが、しっかり結果を出したい大事な案件であれば、こういった仕事ばかりやっている弁護士と一緒にトレーニングをして本番に臨むと、うまくいく確率が高くなります。

書面での注意指導:口頭で治らない場合の次の段階

 口頭での注意指導で治らなかった場合に活躍するのが、書面での注意指導です。普段口頭で注意しているときは割と軽く考えている問題社員であっても、書面で注意されると「これは大事だ」と感じるのが普通です。懲戒処分まで至らなくても、書面での注意指導にはそれだけの効果があります。

 ただし、書面での注意指導はインパクトが強いがゆえに、何でもかんでもいきなりやればいいというものではありません。まず口頭で会議室での面談を何度もしっかり行い、どこがどう悪くてどう直せばいいのかを話してください。口頭での注意指導で改善する人がほとんどです。本当にどうにもならないケースは、口頭での対話が上手な方が対応すれば一部のケースだけだったりします。口頭でいくらやっても治らない方が出てきたとき、書面での注意指導の出番がやってきます。

CHAPTER 04

懲戒処分:早い段階から丁寧に

 

「懲戒処分をすると雰囲気が悪くなる」は本当か

 意外と懲戒処分をしていない会社がたくさんあります。よく聞くのが「うちのような小さい会社で処分なんてしたら会社の雰囲気が悪くなる、だから懲戒処分なんてできない」というお話です。しかし本当にそうでしょうか。

 やめさせなければならないほどの問題社員がいる会社の雰囲気は、すでに悪くなっています。懲戒処分をしなくても、問題行動があれば雰囲気は悪くなるものです。むしろ懲戒処分をすることで、「あの本当に迷惑だった問題社員に対して会社はしっかり対応してくれた」ということが伝わり、かえって会社の雰囲気が良くなることがあります。

コップの水が溢れてからでは遅い

 懲戒処分をしないまま我慢に我慢を重ねて、コップの水が溢れるように我慢しきれなくなったところで「もうやめさせるしかない」と相談に来る。このパターンが非常に多いのです。にっちもさっちもいかなくなってからでは遅いです。もっと早い段階で丁寧に懲戒処分をしていく必要があります。早い段階であれば、懲戒処分を受けたことをきっかけに立ち直るケースもあります。

懲戒処分で一番大事なのは「事実認定」

 懲戒処分を行うにあたって一番大事なのは事実認定です。何月何日の何時頃、どこで、誰が、誰に対して、どのように、何をしたのかをはっきりさせること。懲戒処分通知書にも、この具体的事実をしっかり記載します。「あなたは常日頃から勤務態度が悪い」「協調性がない」では足りません。具体的事実を記載することにより、問題の対象が明確になりますので、教育効果が高くなりますし、懲戒処分が正当なものであることを説明しやすくなります。

 また、懲戒処分の前には本人に弁解の機会(言い分を聞く機会)を与える必要があります。その弁解を聞く際も、事実について議論するようにしてください。就業規則に懲戒の種類と事由を定め、従業員が見ようと思えば見られる状態にしておくことも重要です。

CHAPTER 05

退職勧奨・解雇:最終手段としての判断

 

「追い詰められていきなり解雇」が最も危険

 問題社員を解雇した場合にトラブルになりやすい典型事例は、追い詰められていきなり解雇というパターンです。普段は割と優しくていい経営者であっても、問題のある方がいてもあまりうるさく言わず、懲戒処分もやらないまま放置している。どんどんひどくなっていって、ある時、周りの社員たちから「もう耐えられません、やめさせてください」と詰め寄られて慌てて解雇したところ、「解雇無効」と内容証明が届き、労働審判や訴訟で多額のお金を取られてしまう。こういったケースが非常に多いのです。

 解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。「客観的」というのは、社長がそう思っているという意味ではなく、裁判官が「解雇はしょうがないよね」と思ってくれるような事情があるかどうかです。注意指導をどれだけ的確にやっていたか、懲戒処分を積み上げていたか。これが解雇の有効性を左右します。

退職勧奨のコツ:理由を具体的に説明する

 退職勧奨で最も大事なのは、退職条件を話す前に、やめなければならない理由を具体的に説明することです。具体的な理由を説明しないでやめてほしいと伝えると、「大した理由もないのに嫌いだからやめてくれと言っているのだろう」と受け止められやすくなります。注意指導を常日頃からしっかり行い、懲戒処分をしてきたという積み上げがあれば、退職勧奨の説明にも説得力が生まれます。

 また、退職勧奨を断られた場合に有効に解雇できる状況が作れていれば、合意退職も成立しやすくなりますし、上乗せ条件として求められる金額も低くなりやすいです。逆にそれがないと、断られたら終わりです。退職を断られた問題社員はもっと問題が大きくなりますから、しっかり準備を整えてから退職勧奨に臨むことが大切です。

能力不足の社員:試用期間中の判断が最も重要

 能力が極端に低い社員にやめてもらう場合のコツとして、まず試用期間中にやめてもらうことが最も重要です。試用期間中であっても客観的に合理的な理由がなければ本採用拒否はできないという解釈は正しいのですが、現実の話として試用期間中の方が絶対にやめてもらいやすいのは間違いありません。ご本人にとっても、向いていない仕事を続けることは苦しいことですから、適性がないことがわかった段階で早めに判断することが双方にとって望ましい結果につながります。

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能力不足型の問題社員への対応

 

「何度指導しても仕事が改善しない」「周りの社員の負担が限界に来ている」。能力不足型の問題社員は、放置すればするほど、周囲の社員の疲弊と職場全体の生産性低下につながります。中小企業では人を入れ替える余裕がない中で、いかに既存社員を育てつつ、改善見込みのない社員を整理していくかが経営の急所になります。

「能力不足」の正確な意味:契約と実態のギャップ

能力不足とは、絶対的に能力が高いか低いかの問題ではありません。雇用契約で予定されていた能力と、実際の能力のギャップを指します。月給100万円で特定の部門を任せるために中途採用した管理職と、新卒をほどほどの給与で採用した社員とでは、「能力不足」の判断基準がまったく異なります。

採用時に期待した役割を果たせていないことが「能力不足」の本質です。したがって、対応の出発点は「採用時に何を期待していたのか」を改めて整理することにあります。

能力不足社員の主なパターン

弁護士法人四谷麹町法律事務所では、以下のパターンのご相談を多くお受けしています。

  • 仕事の処理速度が極端に遅い社員:手順通りに行えばいい単純作業でも他の社員と比べて著しく遅く、「自分は遅いから無理」と開き直って改善しようとしないケース
  • 営業成績が極端に悪い営業社員:外回りに出しても全然成果が上がらない。能力不足なのか、サボっているのかの見極めが対応の分かれ目になる
  • 給与額に能力が見合わない社員:周囲の不公平感が職場全体のモラルを下げるが、給与減額には労働契約上の根拠が必要で、安易な実施は労使紛争につながる
  • 中途採用した管理職が機能しない:部門全体・拠点全体の機能不全につながり、一般社員の能力不足とは比較にならないダメージが会社に及ぶ
  • パソコン等の業務ツールを習得できない社員:努力しても業務水準に達しない場合、配置転換も含めた対応が必要
  • ミスが多く会社に損害を与える社員:単なる能力不足では損害賠償請求が困難な場合が多く、人事上の対応を優先する判断が現実的

ケーススタディ1:中途採用した管理職が機能しない場合

想定される状況

特定の部門を任せるつもりで中途採用した管理職が、任せた部門の業務をうまく回せず、部下も育てられない。アルバイト1人分の損失で済む話ではなく、部門全体・拠点全体の機能不全に直結します。

中途採用の管理職には「期待していた水準」を契約や採用時の合意で明確にしておくことが重要です。求人票・労働条件通知書・採用面接の記録などに、求める役割と能力水準を明記しておくことで、能力不足を主張する際の根拠になります。

管理職としての能力不足が明らかになった段階では、降格(人事権行使または懲戒)も選択肢となります。一般社員に降格してそのまま雇用を継続するか、退職勧奨に踏み切るかは、当人の意向と会社の人員配置事情を踏まえて判断します。

ケーススタディ2:営業成績が極端に悪い社員:能力不足かサボりかを見極める

想定される状況

外回りに出した営業社員の成績が極端に悪く、本当に仕事をしているのかわからない。「能力不足」と「サボり」とでは、必要な対応が全く異なります

能力不足の可能性が高い場合:本人と面談してアドバイスする、営業先に同行してフィードバックする、難易度の低い案件にシフトさせるなど、まず育成でできる限り改善を図ります。それでも成果が出なければ、配置転換・退職勧奨の判断に進みます。

サボりの可能性が高い場合:日報・GPS・営業先からの裏付けなどで行動実態を把握します。サボりが確認できれば、具体的事実を示した上での注意指導・懲戒処分という手順を踏みます。どちらか判断がつかない段階では、断定せず面談で確認することが重要です。

ケーススタディ3:仕事が極端に遅く「自分は無理」と開き直る社員

想定される状況

手順通りに行えばいい比較的単純な作業なのに、極端に処理速度が遅い。注意しても「自分は他の人のように早く仕事はできない」と開き直って改善しようとしない

このタイプの社員は、意図的にサボっているわけではないケースが多いという特徴があります。わざとサボる方は「自分は遅い」などと素直に認めないことが多く、このセリフが出る場合は純粸な能力不足として対応します。

対応としては、同じ作業を他の社員がどれくらいの時間で処理しているかを客観的に示し、本人の処理速度との差を具体的に伝えます。その上で教育指導・配置転換を検討し、それでも改善が見られなければ退職勧奨も視野に入ります。

能力不足を「立証」する:評価ではなく事実で語る

能力不足対応で最も多い失敗が、「能力が低い」「出来が悪い」という評価だけを記録し、具体的事実を残していないことです。「能力が低い」というのは評価であり、見方によって変わります。評価だけを本人に伝えると「嫌いだから嫌がらせで言っているのではないか」「パワハラだ」と受け止められます。

立証に必要なのは具体的な事実です。何月何日に・どのような業務で・どのようなミスをしたか・どのような指示に従えなかったか。いつのことかまで含めて記録します。同じ給与水準の他の社員と比べてどう違うのか、業務マニュアル通りにできていないのかなど、比較できる客観的な材料を蓄積することが後の法的判断の根拠になります。

対応の3ステップ

ステップ1:教育指導と記録
まず教育でできる限り改善を図ることが会社に求められます。指導内容・日時・結果を具体的に記録します。「何月何日、何時から、どのような指導をして、本人がどう反応し、どのような結果だったか」。この事実の積み重ねが後の法的判断の根拠になります。

ステップ2:人事評価と賃金の適正化
「能力が低い」と社内では認識しているのに、人事評価では高い評価をつけている会社が多くあります。これは後に能力不足を理由とする退職勧奨・解雇を行う際の大きな障害になります。ありのままに評価し続けることが、後の選択肢を確保します。

ステップ3:退職勧奨か解雇かの判断
教育指導を尽くしても改善が見られない場合、退職勧奨を検討します。能力不足を理由とした解雇は、①能力不足の事実を証拠で立証できること、②教育機会を十分に与えたこと、③配置転換等の解雇回避努力をしたこと、の3点が揃わなければ無効になるリスクが高く、早期から弁護士と連携した対応が不可欠です。

経営者がやりがちな2つの誤り

誤り①:人事評価を実態より甘くつけている

「本人の今後のためを思って」「波風を立てたくない」という理由で、能力が低い社員の人事評価を実態より高くつけている会社が多くあります。しかし、いざ退職勧奨や解雇に進もうとした際に、過去の人事評価が「悪くない」と本人から反論される事態を招きます。ありのままに評価することが、後の選択肢を残します。

誤り②:給与減額を安易に行う

「能力に見合わないから」と給与を一方的に減額することは、労働契約上の根拠がなければできません。就業規則の根拠規定・本人の同意・降格処分など、適法な手続きを踏まずに減額すると賃金未払請求の対象になります。給与の問題は、降格や配置転換などの人事上の処分とセットで設計する必要があります。

→ 能力不足社員の対応については、以下の専門解説ページもご覧ください。

能力不足社員の対応 総合解説

ハラスメント加害者型の問題社員への対応

 

パワハラ・セクハラといったハラスメントは、加害者と被害者の個人間の問題ではありません。会社が自社の問題として対処しなければならない経営上の課題です。従業員同士のハラスメントを放置すると、使用者責任を問われるだけでなく、被害者が離職し、職場全体の生産性が低下します。「あの問題のある社員を会社はなんとかしてくれない」と感じた社員が次々と辞めていく。その引き金になりかねません。

ハラスメント加害者の主なパターン

弁護士法人四谷麹町法律事務所では、以下のパターンのご相談を多くお受けしています。

  • 部下に威張り散らす管理職:役に立たない強い言い方で指示を出し、部下のモチベーションを下げ続けるタイプ。「自分のことを守ってくれない社長の言うことは聞かない」という不信感につながる
  • 「仕事を真面目にやっている」認識でパワハラを繰り返す社員:よかれと思って職場をよくしようとしているつもりで自覚がない。周囲の社員のメンタル不調を引き起こし、生産性を下げてしまう
  • グループで嫌がらせをする社員たち:複数名が結託して特定の社員を標的にするケース。反乱群のような構図になり対応難度が高く、新入社員がターゲットになりやすい
  • 「自分は平気だからセクハラではない」と言い張る社員:被害者が「平気」と言っていても、上下関係や職場の人間関係から本音を言えない可能性がある。客観的に見て性的な言動かどうかで判断する
  • 注意指導するとパワハラだと言い返す社員:パワハラかどうかは相手の主観ではなく客観的に判断される。言い返されても必要な注意指導を止めてはならない
  • パワハラを認めない・開き直る社員:「パワハラをやったかどうか」ではなく「何をどのように言ったか・やったか」という具体的事実の確認が先決

ケーススタディ①:部下に威張り散らす管理職を放置するリスク

想定される状況

役に立たない強い言い方で部下に指示を出し、不機嫌な様子を周囲に見せる管理職がいる。注意しようとしても「部長なんだから多少厳しくて当然」と思われているケース。

社員が社長の言うことを聞くのは、「自分のことを守ってくれている」と信じているからです。問題のある管理職を放置し続けると、「この社長は自分を守ってくれない」という不信感が広がり、社長への信頼そのものが失われます

対応としては、管理職だからといって特別扱いせず、具体的な言動を確認した上で注意指導を行います。改善がなければ降格・配置転換・退職勧奨と段階を踏みます。管理職に対する降格人事は人事権の行使として行えますが、就業規則の根拠規定と手続きを確認してから進めることが重要です。

ケーススタディ②:グループで嫌がらせをする社員たちへの対応

想定される状況

数名の社員が結託して、特定の社員(特に新入社員)に対して嫌がらせを繰り返している。言うことを聞かない社員をターゲットにして、辞めさせようとする動きも見られる。

グループによる嫌がらせは、1人の問題社員と比べて対応の難易度が格段に上がります。管理職が注意しようとしても、数の力で圧倒されてしまうことがあります。

対応のポイントは、グループのリーダー格を特定し、その人物への対応を優先することです。全員を一度に相手にするのではなく、中心人物への注意指導・懲戒処分を先行させることで、グループの結束が崩れやすくなります。全員に対してそれぞれ個別の面談記録を残すことも重要です。

ケーススタディ③:「自分は平気だからセクハラではない」と言い張る加害者

想定される状況

特定の女性社員に対して性的な発言を繰り返す男性社員がいる。周囲から問題視されているが、被害者の女性が「自分は平気だからセクハラではない」と言っており、処分に踏み切れずにいる。

被害者が「平気」と言っていても、それを額面通りに受け取ってはいけません。上司と部下の関係、職場の人間関係など、波風を立てたくないという理由から本音を言えない可能性があります。セクハラかどうかは被害者の主観だけで決まるのではなく、客観的に見て性的な言動と評価できるかで判断されます。

被害者へのヒアリングでは、言葉遣いと聞き方に細心の注意を払います。「それってセクハラじゃないですか」と誘導するのではなく、「どんなことを言われたか」「それを聞いてどう感じたか」という事実確認を丁寧に行います。

「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」は誤解

「相手がパワハラだと思ったらパワハラになる」という考え方は誤りです。パワハラかどうかは平均的な労働者の感じ方を基準に客観的に判断されます。注意指導する際に「パワハラだ」と言い返されても、それだけでパワハラになるわけではありません。

この誤解から必要な指導を控えてしまうと、周囲の社員が守られない結果になります。「パワハラだ」と言い返す社員を恐れて注意指導をやめることは、被害を受けている他の社員への責任を果たさないことに等しいです。

パワハラ対応の急所:「事実」から入る

パワハラ問題が起きた時、加害者が「パワハラなんてしていない」と否定しても対応を止める必要はありません。大事なのは「パワハラをやったかどうか」ではなく「何月何日の何時頃、どこで、誰に対して、何をどのように言ったか・やったか」という具体的事実の確認です。

具体的事実が確定すれば、それがパワハラに該当するかどうか、懲戒処分の対象になるかどうかを判断できます。逆に事実が曖昧なままでは、どんな処分も根拠を欠きます。調査と記録が最初のステップです。

ハラスメント対応の3ステップ

ステップ1:事実確認と記録
申告があった場合、まず被害者・加害者・目撃者の三者から個別にヒアリングを行います。被害者には「被害者に寄り添いつつもバイアスのない状態で」聴取することが重要です。ヒアリング内容は記録に残し、感情的な判断を排除して証拠に基づき事実認定を行います。

ステップ2:加害者への注意指導と懲戒処分
事実が確認できたら、速やかに加害者へ注意指導を行います。悪質なケースでは懲戒処分の検討が必要です。処分前には必ず本人に弁明の機会を与え、その内容も記録します。処分内容と手続きについては事前に弁護士に確認することをお勧めします。

ステップ3:再発防止策の実施
個別対応に加えて、ハラスメント防止規程の整備、相談窓口の設置、管理職向け研修の実施など、組織全体の再発防止策を講じます。これらの対策は、万が一訴訟になった場合の会社の対応姿勢の証拠にもなります。

経営者がやりがちな2つの誤り

誤り①:「パワハラだと言われたら怖い」と注意指導をやめてしまう

「パワハラだと言い返されるのが嫌で、問題のある社員への注意指導を控えてしまう」という経営者は非常に多いです。しかし、具体的事実を伝える正当な注意指導がパワハラと認定されることはほとんどありません。「態度が悪い」「協調性がない」など抽象的・評価的な言葉を使うことの方がリスクは高く、具体的事実を伝えることで教育効果も高まります。

誤り②:ハラスメント問題を「個人間の問題」として放置する

「当事者間で解決してほしい」と放置するのは経営上の判断ミスです。従業員同士のハラスメントは会社自身の問題として対処する義務があります。放置すれば使用者責任を問われ、被害者から損害賠償請求を受けるリスクがあります。早期に会社として対応する姿勢を示すことが、紛争の拡大防止にもつながります。

→ ハラスメント対応については、以下の専門解説ページもご覧ください。

ハラスメント対応

休職・メンタル不調型の問題社員への対応

メンタル不調を抱える社員への対応は、会社が最も頭を悩ませるテーマの一つです。適切に対処しなければ安全配慮義務違反を問われるリスクがある一方、対応を誤ると休職・復職を繰り返す長期的な問題に発展します。感情ではなく、就業規則と医師の意見に基づいた手順の対応が求められます。

休職・メンタル不調型の主なパターン

弁護士法人四谷麹町法律事務所では、以下のパターンのご相談を多くお受けしています。

  • 休職を繰り返す社員:復職後6ヶ月が経過するとまた休み始め、休職期間がリセットされるケース。就業規則の休職期間の設計と運用が対応の鍵になる
  • 「復職可」の診断書を提出したのに仕事ができない社員:主治医は職場の業務内容を詳しく知らないまま診断書を書くことが多い。診断書だけで復職を認めるのではなく、会社独自の復職判断プロセスが必要
  • 休職期間満了ギリギリで復職を求めてくる社員:満了直前の駆け込み復職要求。退職を避けるための申請である可能性も高く、本当に働けるかどうかの慎重な確認が求められる
  • 復職してすぐまた休む社員:復職のための仕事の準備をしていた周囲の社員が振り回される。復職判断の手順と基準を事前に整備しておくことが重要
  • メンタルを理由に業務を選り好みする社員:できる業務・できない業務を自己判断で決め、周囲に負担を押しつける。そもそも出社を認めるかどうかの判断が先決
  • 職場では体調不良なのに週末はアクティブな社員:周囲の不満が高まりやすい。休日の過ごし方への干渉は原則できないが、職場のパフォーマンス低下はマネジメントの問題として対応する
  • 試用期間経過後すぐにメンタル不調で休職する社員:前の職場でも同様の経緯があるケースも。退職させたい場合は「願い出による退職」ではなく退職勧奨として方针を明確にして進める

ケーススタディ1:休職を繰り返し、期間がリセットされる社員

想定される状況

2年近く休職し、復職しても6ヶ月が経過するとまた休み始める。休職期間がリセットされるたびにカウントがゼロに戻り、いつまでも職場復帰できない。

この問題は就業規則の休職期間の設計に起因することが多いです。「復職後一定期間内に再休職した場合は前回の休職期間と通算する」という規定を設けておくことで、リセット問題を防ぐことができます。規定がない場合、まず就業規則の整備から着手する必要があります。

なお、休職制度はそもそも設ける義務がありません。規模の小さい会社では休職期間を3~6ヶ月に設定し、その間に回復しなければ退職というルールにしている会社も多くあります。休職制度の有無と期間の設計は、会社の規模・人員・業態に応じて弁護士と相談しながら決めることをお勧めします。

ケーススタディ2:「復職可」の診断書を出したのに仕事ができない社員

想定される状況

主治医の「復職可」という診断書を信じて復職させたところ、まともに仕事ができず、結局また休むことになった。

主治医は医学の専門家ですが、その会社の職場環境や業務内容を詳しく知っているわけではありません。「復職可」という記載は「医学的に概ね回復した」という意見であり、担当業務を問題なくこなせることを保証するものではありません。

会社独自の復職判断が必要です。具体的には、①主治医の診断書を必要条件とした上で、②産業医への相談、③試し出勤(リハビリ出勤)、④段階的な業務負荷の確認、を経て最終的に会社が復職可否を判断する手順を設けておくことが重要です。

ケーススタディ3:休職期間満了ギリギリで復職を求めてくる社員

想定される状況

休職期間満了直前に愴てて「復職できます」と連絡が来る。退職を避けるために無理に復職を申し出ている可能性があり、本当に働けるのか判断が難しい。

特にメンタルの問題は外から見ても回復の判断が難しく、無理に復職させると体調をさらに悪化させてしまい、安全配慮義務違反を問われるリスクもあります。

対応としては、主治医の診断書を確認した上で、会社が独自に復職可否を判断する手順を踏むことが重要です。「診断書があるから復職させなければならない」という発想は誤りです。会社の判断で「まだ復職には早い」と判断することは適法です。ただし根拠と手順が重要ですので、事前に弁護士と確認した上で対応することをお勧めします。

診断書への対応で多い2つの誤り

誤り①:「休職を要する」の診断書が出たら即休職させる

主治医が「休職を要する」と書く場合、その意味は「このまま働かせると体調が悪化するので休んで療養が必要」という医学的な意見です。会社の休職制度の内容を詳しく知っているわけではなく、「直ちに就業規則の休職制度を適用せよ」という意味ではありません。休職制度のない会社もありますし、制度があってもルール通りの手順で進める必要があります。

誤り②:「復職可」の診断書が出たら即復職させる

主治医は患者の職場環境・業務内容・職場の人間関係を詳しく知らない状態で診断書を書いています。「復職可」は「医学的に概ね回復した」という意見です。担当業務を問題なくこなせることを保証するものではないため、会社独自の復職判断を必ず別途行ってください。

対応の基本姿勢

メンタル不調の社員への対応では、まず具体的な事実を収集・記録することが出発点です。「なんとなくメンタルが弱い」という印象だけで動くと後の対応に根拠がなくなります。いつ・どこで・誰が・何をしたかを記録した上で、休職・復職の判断を就業規則と医師の意見を踏まえて行ってください。

また、同じ職場で働く周囲の社員への配慮も忘れてはなりません。メンタル不調の社員の穴埋めをしている社員たちの負担が限界に達すると、その社員たちが辞めてしまうという本末転倒な事態になります。メンタル不調の社員への配慮と、周囲の社員の保護はセットで考える必要があります。

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休職・復職対応の総合解説

無断欠勤・勤怠不良型の問題社員への対応

遅刻・欠勤・早退を繰り返す社員は、職場の業務遂行を妨げるだけでなく、真面目に働いている周囲の社員のモチベーションも低下させます。ただし対応を誤ると「不当解雇」とみなされるリスクもあるため、事実の記録と原因の把握を最初のステップとすることが重要です。

勤怠不良型の主なパターン

弁護士法人四谷麹町法律事務所では、以下のパターンのご相談を多くお受けしています。

  • 遅刻・欠勤・早退を繰り返す社員:タイムカードや日報等で勤怠の事実を客観的に記録することが対応の前提。原因が「体調不良」なのか「だらしなさ」なのかで対処法が異なる
  • 突然出社しなくなり連絡が取れない社員:電話・メール・LINEなど複数手段で連絡を取る努力を記録することが重要。連絡できない場合、本人の自宅へ出向く判断も必要になる
  • 無断欠勤を繰り返しながら反省しない社員:「連絡できないくらい体調が悪かった」などと弁解して診断書も出さないケース。注意指導の記録を積み重ね、段階的な懲戒処分につなげる
  • 遅刻を注意すると逆ギレする社員:前任の上司が黙認していたことで遅刻が既得権化しているケースが多い。原因を特定した上で毅然と対応する
  • 仕事が忙しくなると休む社員:メンタルの問題が背景にあることも多い。体調不良か意図的な回避かを見極めた上で対応方针を決める
  • 年休を使い切って欠勤を繰り返す社員:年休の取得自体は権利であり処分の対象にはならない。ただし年休消化後の欠勤については就業規則に基づく処分を検討できる

ケーススタディ1:突然出社しなくなり連絡が取れない社員の初動対応

想定される状況

昨日まで普通に出社していた社員が突然出社しなくなり、電話もメールも反応がない。自宅に行っても不在のようだ。どう対応すればよいかわからない。

まず重要なのは「連絡を取る努力をした記録を残すこと」です。電話・メール・LINEなど複数の手段で連絡を取り、いつ・どの手段で・何回試みたかを記録します。この記録が後の法的判断(解雇の有効性や退職扱いの正当性)において重要な証拠になります。

連絡が取れない状態が続いた場合の退職処理については、無期契約の正社員と有期契約のパート・アルバイトで対応が異なります。正社員の場合、一定期間経過後に「無断欠勤が続いたため退職扱いとする」という処理が可能ですが、就業規則にその根拠規定が必要です。根拠規定なく退職扱いにすると解雇と評価されるリスクがあります。

ケーススタディ2:無断欠勤後「体調が悪かった」と言い訳する社員

想定される状況

1週間以上会社に全く連絡せず無断欠勤し、何事もなかったかのように出勤してくる。理由を聞くと「連絡できないくらい体調が悪かった」と言って反省しない。就業規則で求めている診断書の提出もない。

「体調が悪かった」という言い訳は確認する方法がなく、診断書の提出もない場合は、その欠勤が正当な理由による欠勤かどうか判断できません。このような場合、就業規則に定める手続き(診断書提出義務など)を守っていないこと自体を理由に注意指導することが重要です。

具体的には、「何月何日から何月何日まで無断欠勤したこと」「就業規則第○条に定める診断書を提出しなかったこと」という具体的事実を書面で指摘し、注意指導します。こうした記録の積み重ねが、後の懲戒処分・解雇の有効性を支える根拠になります。

ケーススタディ3:遅刻を注意すると逆ギレする社員

想定される状況

遅刻を注意すると逆ギレして反省せず、遅刻を繰り返す。前任の上司が黙認していたためか、遅刻することを当然のように考えている。

逆ギレが起きる背景として多いのは、前任の担当者や上司が長期間黙認してきたことです。本人からすると「今まで何も言われなかったのに急に怒られる」という感覚になります。

まず原因を特定することが重要です。単なるルール意識の低さなのか、何らかの事情(通勤困難・体調不良・家庭の事情)があるのかによって対応が異なります。原因が確認できたら、「始業時刻に出社することは労働契約上の義務である」という事実を冷静かつ具体的に伝え、改善を求めます。改善がなければ書面での注意指導・懲戒処分へと進めます。

対応の2つのポイント

ポイント①:原因を見極める
勤怠不良の原因は大きく「体調不良」と「だらしなさ・ルール意識の低さ」の2つに分かれます。体調不良の場合は医師への受診勧奨・休職命令・傷病手当金の案内といった対応が必要になります。ルール意識の低さが原因であれば注意指導・懲戒処分へと進めます。最初から決めつけず、面談で原因を確認してください。

ポイント②:事実を記録する
「いつ・何時間・何日間」欠勤・遅刻したかを客観的証拠で管理することが不可欠です。タイムカード・日報・欠勤届を記録・保管し、「何月何日に何時間遅刻した」という事実を積み上げることで、後の懲戒処分・解雇の正当性を立証できます。記録がなければどんな処分も根拠を欠きます。

注意:年休取得後の欠勤について

年次有給休暇の取得は労働者の権利であり、年休の行使自体を理由に処分することはできません。ただし、年休を使い切った後に無断欠勤や理由のない欠勤を繰り返す場合は、その欠勤の部分について就業規則に基づく処分を検討できます。年休の行使と、年休消化後の欠勤は分けて考える必要があります。

→ 無断欠勤・勤怠不良への対応の詳細はこちら

欠勤・遅刻を繰り返す問題社員への対応

横領・不正行為型の問題社員への対応

横領・手当の不正受給といった不正行為は、金錢的な損害にとどまらず、会社と社員の間の信頼関係を根底から崩し、職場全体の秩序を乱します。「まさかうちでは」と思っていても、不正ができる環境を放置していること自体が問題です。同じ人でも、しっかり管理されていれば不正はできません。不正ができない環境を作ることが経営者の責務です。

横領・不正行為型の主なパターン

弁護士法人四谷鹹町法律事務所では、以下のパターンのご相談を多くお受けしています。

  • 会社の金錢・備品を着服する社員:経理担当や現金を扱うポジションで発生しやすい。チェック体制が甘い環境ほど不正が起きやすく、管理体制の整備が予防策になる
  • 出張旅費・通勤手当などを不正請求する社員:小額であっても繰り返されるケースが多く、発覚が遅れるほど被害額が膨らむ。申請内容のチェック体制を見直すことが重要
  • 横領発覚と同時に年休消化・退職を申し出る社員:調査への協力を拒絶するために年休取得と退職届を同時に提出するケース。時期変更権の行使を検討しつつ、事前に証拠を確保しておくことが胝心
  • 返還に応じるが懲戒処分を嫌がる社員:「返せばいい」という意識では職場の秩序が保てない。金錢の返還と懲戒処分は別問題として、けじめとして処分を行うことが他の社員への示しになる

ケーススタディ①:信頼していた経理担当者の横領が発覚した場合

想定される状況

長年信頼してきた経理担当者の横領が発覚。本人は年休消化・退職を申し出て調査を拒絶している。どこから手をつけるべきかわからない。

まず最初にすべきは証拠の収集と情報整理です。聴き取り調査よりも先に、領金口座の出入金記録・申請書類・通報内容などの客観的証拠を確保します。本人が調査を拒絶していても、客観的証拠があれば事実関係をある程度確定できます。

年休取得と退職届を同時提出して調査を拒絶するケースは、横領発覚時に比較的多く見られます。時期変更権の行使(別の日に年休を取り直させる)を検討できますが、退職日までに振り替える余地がなければ行使できません。いずれにせよ、客観的証拠の確保を先行させることが最重要です。

ケーススタディ②:「返します」と言うが懲戒処分には応じない社員

想定される状況

横領が発覚した社員が「お金は返す。でも懲戒処分は受け入れられない」と主張している。穏便に済ませたい気持ちもあるが、このままでよいのか判断できない。

金錢の返還と懲戒処分は別の問題です。他の社員が真面目に働いて得た給与と同等以上の金額を不正に取得した行為を、「返せば済む」として処分なしにすることは、職場全体の公平感を損ないます。

懲戒処分をためらう経営者は多いですが、「けじめをつけない」ことで、他の社員から「ずるいことをしても得をする会社」という印象を持たれ、職場の秩序が崩れるリスクがあります。処分の重さ(戒告・減給・降格・懲戒解雇)は不正行為の態様・金額・反省の度合いを総合して判断します。

発覚時の対応手順

ステップ1:証拠の収集と情報整理(最優先)
聴き取り調査の前に、領金口座の出入金記録・申請書類・通報内容などの客観的証拠を先に収集・整理します。証拠を確保してから調査に入ることで、本人が否定・隐蔽しても対抗できる状態を作ります。調査に入ったことが本人に伝わると不正行為はほぼストップしますが、それより前に証拠を確保しておくことが重要です。

ステップ2:早期に聴き取り調査を実施する
証拠確保の後、速やかに聴き取り調査を実施します。調査が遅れるほど証拠が隐滅され、被害額の確定も困難になります。本人の言い分も聞いた上で事実を確定します。

ステップ3:返還金額を確定し書面で合意する
横領・不正受給した金額を確定し、いつまでにいくら返すかを書面で合意します。口頭での「返します」では後にトラブルになります。関係が良好であっても必ず書面で残してください。

ステップ4:懲戒処分でけじめをつける
金錢の返還とは別に、懲戒処分を行います。処分の種類と重さは事実関係・金額・反省の有無を総合して判断します。懲戒解雇を選択する場合は特に手続きの正確性が重要であり、事前に弁護士と確認することをお勧めします。

予防が最大の対策:不正ができない環境を作る

横領・不正受給への最大の対策は予防です。同じ人でも、しっかり管理されていれば不正はできません。現金の管理者を複数にする、申請内容のダブルチェック体制を設ける、定期的に第三者が帳簿を確認するといった環境整備が「不正行為を起こさせない職場」につながります。不正ができる環境をそのままにしておくこと自体が、経営上の問題です。

詳細は以下の専門解説ページもご覧ください。

横領・手当不正受給した社員への対応

当事務所のサポート体制と監修者

 

 弁護士法人四谷麹町法律事務所は、会社側(使用者側)専門の法律事務所として、問題社員対応を中心とした労働問題を取り扱っております。懲戒処分を行うにあたって、本人の言い分を聞いたり個別のやりとりが必要になったりして大変かもしれません。そういう場合、タイムリーに対応しなければなりませんので、こういった仕事に慣れている弁護士とオンラインで短時間の打ち合わせを繰り返し入れながら、やりとりをやっていくのが効果的です。自力でやるのは怖いなと思ったら、弁護士に相談しながらやっていけば怖くもなんともありません。

 問題社員対応は、大事な社員たちを守るために行うものです。しっかり適切に対応することで、社員みんなが気持ちよく才能を発揮できる職場にしていきましょう。

弁護士 藤田 進太郎

監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

問題社員(モンスター社員)対応でお悩みの会社経営者の皆様へ

まずは経営労働相談までご連絡ください。事務所会議室でのご相談、Zoom・Teamsでのオンライン相談、いずれも対応しています。

経営労働相談のお問い合わせ

FAQ

よくあるご質問

 

Q. 問題のある社員に困っています。すぐに解雇してもいいですか。

 解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です。私が相談を受ける中で最もトラブルになりやすいのが、「追い詰められていきなり解雇」という典型事例です。問題がちっちゃい時点から注意指導をしっかり行い、必要に応じて懲戒処分を積み上げていくことが大切です。注意指導も懲戒処分もやらないまま解雇すると、ほぼ確実に不当解雇とされます。

Q. 注意指導するとパワハラだと言い返してくる社員にはどう対応すればいいですか。

 「何月何日の何時頃、どこで、何をしたことが問題なのか」を具体的に伝えてください。仕事と関係のある具体的な事実を的確に伝えてパワハラだということになることはほとんどありません。むしろ「態度が悪い」「協調性がない」といった評価的な言葉を連発する方が、パワハラと認定される方向に近づいていきます。

Q. 懲戒処分を行うと会社の雰囲気が悪くなりませんか。

 懲戒処分をしなければならないほどの問題社員がいる会社の雰囲気は、すでに悪くなっています。むしろ懲戒処分をすることで、「会社はしっかり対応してくれた」ということが伝わり、かえって会社の雰囲気が良くなることがあります。早い段階で適切な懲戒処分を行えば、立ち直るケースもあります。

Q. 注意指導のやり方がわからないのですが。

 注意指導はスポーツや楽器と同じで、知識を入れただけでは上達しません。実際に練習することが大切です。自分一人で練習しても効果はありますが、大事な案件であれば、問題社員対応を日常的に行っている弁護士と一緒にトレーニングをして本番に臨むことをおすすめします。ZoomやTeamsでの短時間の打ち合わせを繰り返しながら進めていくやり方が効果的です。

Q. 退職勧奨を行いたいのですが、何から準備すればいいですか。

 退職勧奨で最も大事なのは、退職条件を話す前に、やめなければならない理由を具体的に説明することです。常日頃から注意指導をしっかり行い、懲戒処分をしてきたという積み上げがあれば、退職勧奨の説得力が高まりますし、断られた場合でも有効に解雇できる状況が作れていれば、合意退職も成立しやすくなります。

Q. 遠方の会社ですが、相談できますか。

 対応しております。事務所会議室での対面相談のほか、ZoomやTeamsによるオンライン相談を実施しており、日本全国各地の会社経営者からのご相談を承っています。最初の1回は事務所にお越しいただく方もいらっしゃいますが、2回目以降はほとんどオンラインで相談している社長さんが多いです。

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