労働問題85 問題社員の解雇で苦労しないようにするためのポイントを教えて下さい。
目次
問題社員の解雇トラブルの多くは採用時の見極めの甘さが原因です。「採用に積極的理由がなければ不採用」という原則を徹底し、経営者自らが採用に深く関わることが最大の予防策です。
弁護士に相談しなければならないほどの問題社員事案は、採用時にすでに問題を感じていたにもかかわらず、手間・費用・人手不足を理由に採用してしまったケースが相当割合を占めています。採用段階での見極めこそが最大のトラブル予防策です。
■ 採用に積極的な理由がなければ不採用——この原則を徹底する
採用することに積極的な理由が必要であって、不採用にすることに積極的な理由が必要なわけではありません。少しでも引っかかりを感じたら不採用にする勇気が重要です。
■ 「採用の手間・費用・人手不足」を理由に自分を偽らない
問題があると感じながら採用の手間・コスト・人手不足解消を優先して採用を正当化してしまうことが、解雇トラブルの主な原因です。
■ 会社経営者自らが採用活動に深く関わる
中小企業では経営者自らが採用に深く関わることが重要です。部下に任せる場合も、経営方針に協力的で人間性に優れた人物に担当させるべきです。
1. 解雇トラブルの根本原因は採用時の見極めの甘さ
問題社員事案のかなりの割合が「採用時に既に問題を感じていた」
問題社員の解雇で苦労することになった原因のかなりの部分は、会社経営者が多忙であることなどから、採用活動にかける手間や費用を惜しんだり、人手不足の解消を優先させたりして、問題社員であるかもしれないと感じていながら、採用してしまったことにあります。
弁護士に相談しなければならないほどの事案は、採用時にあまりいい印象を持たなかった応募者を採用してみたところ、やはり問題社員だったという事案が、かなりの割合を占めています。応募者からだまされて採用してしまったというより、問題があることには気づいていたものの、採用の手間や費用を惜しんだり、人手不足の解消を優先させたりして自分を偽り、問題がある人物を採用することを自分で正当化して採用してしまったという表現の方が適切な事案が多いのです。
「使ってみなければ分からない」という一般論の落とし穴
あまり深く考えていないと、「実際に使ってみなければ良い社員かどうか分からない」といった一般論に説得力があるように聞こえるかもしれませんが、実際には「良くない社員だということは採用の時点から分かっていた」ということが多いのです。経験豊富な会社経営者の目をごまかすことは、容易ではありません。
2. 採用の原則:積極的理由がなければ不採用
「採用に積極的理由がなければ不採用」という原則
会社経営者が、会社にとって魅力的な人物だと判断できれば採用する、魅力的だと思わなければ不採用にするといった、当たり前の方針を貫いていただければ、採用で失敗するリスクは相当下がるはずです。
採用することに積極的な理由が必要なのであって、不採用とすることに積極的な理由が必要なわけではありません。採用に値する積極的な理由がない場合には、不採用とすることをお勧めします。
「人手が足りないから」「採用の手間をかけたくないから」という消極的な理由で採用することは、後の解雇トラブルの種をまくことに等しいです。少しでも引っかかりを感じたら、その直感を信じて不採用とする勇気が必要です。
✕ よくある経営者の採用時の自己正当化
「面接では少し問題がありそうだったが、働かせてみれば変わるかもしれない」→ ほぼ変わりません。
面接で感じた違和感は、実際に働かせてみても基本的には変わりません。むしろ「試用期間が過ぎたら問題行動がより明確になる」というケースの方が多いです。
「今すぐ人手が必要だから、問題がありそうでも採用するしかない」→ 長期的にはコストが高くつきます。
短期的な人手不足解消のために問題のある人物を採用すると、後の解雇トラブルで多額の解決金・弁護士費用・時間的コストを負担することになります。「採用しない」という選択が長期的には最良のコスト管理です。
3. 採用は経営者自らが深く関わる
中小企業では経営者自らが採用に深く関わるべき
会社経営者を中心とした結束が生命線の中小企業の場合は、会社経営者自らが採用活動に深く関わるべきと考えます。採用は会社の将来を左右する重要な意思決定であり、経営者自身が最終的な判断を行うべきです。
部下に任せる場合の注意点
「類は友を呼ぶ」ということわざのとおり、部下に採用を任せた場合、その部下は、仕事に関し、自分と似た価値観・ものの考え方を持った人物を採用する傾向にあります。仮に部下の誰かに採用を任せることになった場合は、会社経営者の会社経営に協力的で人間性も優れている人物に採用を担当させるべきと考えます。
採用時の見極め方・問題社員への早期対応・解雇トラブルの予防策について、弁護士へのご相談をお勧めします。→ 経営労働相談はこちら
⚠ 実務でよく見られるパターン(弁護士対応事例より)
・「面接で少し違和感があったが人手不足だったので採用した。半年後から問題行動が顕在化。注意指導・懲戒処分・退職勧奨・解雇と1年以上の労力と法律費用をかけることになった。あの時に不採用にしていればよかった」
・「採用面接に必ず経営者自身が参加するルールを設けた。以前は部下任せだったが、経営者の目で見ると気になる点が多々あった。経営者が参加するようになってから採用の質が上がり、問題社員が激減した」
問題社員の解雇で苦労しないための最善策は、採用時の見極めを徹底することです。「採用に積極的理由がなければ不採用」という原則こそが、最大のトラブル予防策です。
4. まとめ
問題社員の解雇で苦労しないための最大のポイントは採用時の見極めです。解雇トラブルの多くは、採用時に問題を感じながら手間・費用・人手不足を理由に採用を正当化してしまったことが原因です。採用することに積極的な理由が必要であって、不採用にすることに積極的な理由が必要なわけではありません。魅力的だと思わなければ不採用にするという当たり前の方針を貫くことで、採用失敗リスクは相当下がります。また、中小企業では会社経営者自らが採用活動に深く関わることが重要です。採用後に問題が生じた場合は早急に弁護士に相談することをお勧めします。
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弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日 2026/04/05