能力不足の社員は解雇できるか。
採用段階から解雇まで
会社側専門弁護士が実務を解説します。

能力不足の社員を雇用し続けることは、周囲の社員に過重な負担を生じさせ、職場全体の生産性や士気を低下させる要因となります。会社経営者としては、能力不足を理由とした対応の要否及び当否を適切に判断し、会社を守るための措置を講じる必要があります。本ページでは、採用段階から解雇に至るまでの実務を、会社経営者向けに解説いたします。

本記事の要点

能力不足とは「労働契約で予定されている能力と、実際の能力とのギャップ」を意味します。採用段階・試用期間・教育指導・配置転換といった各段階における対応の積み重ねが、解雇・退職勧奨といった最終局面での選択肢を決定的に左右します。会社側(使用者側)専門の弁護士が、採用段階から解雇までの実務を会社経営者向けに体系的に解説いたします。

CHAPTER 01

「能力不足」とは何か

 

 「能力不足の社員を解雇できないのは不合理である」との声を会社経営者からうかがうことは少なくありません。もっとも、能力不足とは何を意味するのかを契約論的に正確に理解することなしに、解雇の可否を論ずることはできません。

 雇用の場における「能力不足」とは、労働契約で予定されている能力と、現実の能力とのギャップを指します。絶対的に能力が高い・低いといった評価や、仕事以外の事柄に関する不得手は、能力不足の有無を左右するものではありません。あくまで当該労働契約で求められている能力と比較して、現実の能力が高いのか低いのかが問題となります。

 例えば、特定の部門を任せることを予定して部長職として月給100万円で採用した社員については、相当に高い水準の能力が契約上予定されていると解釈されるのが通常であり、ある程度の能力があったとしても、予定された水準に満たなければ能力不足と評価されることになります。他方、大学を出たばかりの若年者を中位水準の給与で採用した場合には、即時に社会で通用する能力を要求することはできず、教育を通じて少しずつ育成していくことが契約上予定されていると解釈するのが相当です。

 さらに、時給1,100円から1,200円程度のパートタイマーやアルバイトについては、当該時給に見合った水準の業務を遂行できていれば、能力不足とは評価されないのが通常です。このように、能力不足の判断は、当該労働契約で予定されている能力水準との比較により客観的に行われるものであり、絶対的な能力評価として論ずべきものではありません。

未経験者歓迎・新卒採用は、育成前提の契約と解釈される

 実務上特に重要な論点として、採用時の募集条件と契約内容の関係があります。「未経験者歓迎」として募集を行い採用した場合、当該社員は、経験やスキルがなくても採用される旨を前提として応募してきたと評価されることとなります。そうすると、契約上予定されている能力水準は相応に低く設定されていたと解釈される客観的状況にあります。

 新卒採用についても同様の整理が妥当します。新卒社員は、勉学を経てきたとしても、実務経験はアルバイト程度にとどまることが通常であり、入社時点で即戦力として稼働することを要求する契約とは解釈されません。教育を通じて中長期的に育成していくことが契約上予定されていると解釈するのが相当です。

 したがって、未経験者歓迎として採用した社員や新卒採用の社員について、能力不足を理由に解雇を行おうとする場合、契約で予定されていた能力水準が低く設定されている以上、能力不足該当性の立証ハードルは相当に高くなるのが一般的です。他方、職種を限定し、一定の能力水準を採用条件として明示した採用の場合には、能力不足の主張がしやすい客観的状況にあるといえます。

配置転換権限の有無による相違

 日本企業では、正社員について職種を限定せず、就業規則上も配置転換の権限を会社に広く留保しているケースが多く見られます。このような雇用契約が締結されている場合、「現在担当している職務を遂行できないこと」のみをもって能力不足と評価することは困難です。現実的可能性のある他の職務についても能力不足か否かの検証が必要となり得るためです。

 これは、日本の伝統的雇用慣行と整合する整理です。新卒一括採用を前提として、最初は能力が不足していることを当然の前提とし、向いていない職務については配置転換を通じて別の職務を試し、本人の適性のある職務に定着させていくという運用が、日本企業の標準的な労務管理のあり方であるためです。このような雇用契約を締結している以上、能力不足を理由とした解雇等については一定のハードルがかかることを、前提として受け入れていただく必要があります。

CHAPTER 02

採用段階から検討すべき事項

 

 能力が低い社員に関する相談をお受けしていると、採用の段階で既に能力不足に気づいていたにもかかわらず採用してしまったという事案に一定の割合で遭遇します。面談の時点で、コミュニケーションが円滑に取れない、指示内容の理解が曖昧といった兆候が見られていたにもかかわらず、人員補充の必要性から採用を決断してしまったというケースです。

 採用後に何らかの事情により期待を下回るパフォーマンスとなることは、一定の確率で避け難いものといえます。しかし、採用段階で既に能力不足の兆候を認識していながら採用を強行した事案については、その時点で後日の問題発生を一定程度覚悟していたといわざるを得ず、後日の対応の負担は採用決定者が引き受けるべきものとなります。能力不足の社員を抱え込む事態を最小化する観点からは、採用段階で能力に疑義がある応募者については不採用とする運用を徹底することが基本です。採用困難な状況にあっても、そこは会社経営者として踏みとどまる必要があります。

適正な賃金水準での採用

 採用時の賃金水準の設定も、能力不足の社員への対応を想定する上で重要な論点です。採用後の能力が想定を下回っていた場合であっても、採用時に設定した賃金水準を事後的に引き下げることは、労働条件の不利益変更の問題に直面し、実務上極めて困難です。本人からの同意を取得しようとしても、採用時の合意内容を前提に他社選択を見送った経緯等からの反発が予想され、納得感ある合意形成は困難といわざるを得ません。

 この点を踏まえるならば、応募者の能力に疑義がある場合には、当該能力水準に見合った賃金設定で採用するか、能力の判断がつかない段階では低めの水準で契約し、高いパフォーマンスが確認された段階で賃金を引き上げるという運用が合理的です。後者の運用には、優秀な人材が他社に流れる懸念もありますが、採用時点で高めの賃金を設定してしまった場合の事後の引き下げ困難性を踏まえれば、低めの水準から開始する運用の方が会社のリスクは小さくなります。

CHAPTER 03

試用期間の活用

 

 能力不足の社員に退職していただく可能性のある事案において、試用期間満了までに判断することが基本的対応となります。

 試用期間中の本採用拒否についても、客観的に合理的な理由等が必要である点に変わりはないため、試用期間だからといって自由に雇用を終了できるわけではありません。もっとも、本採用後の解雇と比較した場合、法的ハードルは若干下がります。加えて、実務上はそれ以上に重要な相違として、労働者側の納得感に大きな差異が生じます。

 試用期間中の本採用拒否については、「試用期間の趣旨に照らして能力水準が不足していた」との説明が可能な場合、合意退職に応じていただきやすい客観的状況があります。他方、本採用を経過した後に能力不足を理由に退職を求める場合、「本採用されたにもかかわらず、なぜ今になって能力不足を理由とした退職を求められるのか」という反発を避けることができず、「嫌がらせではないか」「不当な処遇ではないか」との主張を誘発する結果となりがちです。

試用期間の長さの適切性

 試用期間の長さとしては、3ヶ月と定めている会社が最も多く、次いで6ヶ月を定めている会社、その他の期間を定めている会社の順となります。もっとも、適切な試用期間の長さは、会社や業種、担当させる職務の内容によって変わります。

 過去、3ヶ月の試用期間中に能力の有無について判断がつかず、試用期間満了後に対応に苦慮した経験のある会社については、試用期間を6ヶ月に変更することをお勧めします。この場合の「変更」とは、試用期間の延長を意味するのではなく、そもそも原則的な試用期間の定めを6ヶ月とする就業規則改訂を意味します。6ヶ月の試用期間は、3ヶ月の次に一般的な期間であり、求人募集時も特段の違和感を生じさせるものではありません。

 ただし、合理的説明のつかない長期の試用期間は、期間の定め自体が不合理であるとして無効と判断される場合があります。1年を超えるような長期の試用期間を設定する必要性がある場合には、業務内容に即した合理的説明を準備することが必要です。

実務上の留意点 個別の労働契約で試用期間を延ばすのではなく、原則的な試用期間の定めを就業規則で6ヶ月とするのが実務的対応です。求人票への記載も忘れないようにしてください。

CHAPTER 04

能力不足の立証方法

 

 能力不足の社員への対応についてご相談を受ける場面において、能力不足を客観的に立証する準備が不足している会社が少なくありません。会社経営者としては「現実に業務遂行ができていない」「周囲の社員からも苦情が寄せられている」との認識をお持ちであっても、具体的にどのような出来事があったのか、いつの時点のどのような事実を問題としているのかについて、整理された情報をお持ちでないことが多く見られます。

 ここで理解しておくべき基本的整理は、「能力が低い」というのは評価であって事実ではないということです。評価は立場により異なり得るものであり、評価のみを本人に伝達した場合、「会社の恣意的判断である」「本人に対する好悪の感情に基づくものである」「パワハラに該当する」といった反論を誘発しやすい客観的状況にあります。能力不足を客観的に立証するためには、評価を裏付ける具体的事実を積み上げ、当該事実から能力不足の評価が導かれるという論理構造を示す必要があります。

 ここでいう「具体的事実」とは、会社経営者がどう感じたか、周囲の社員がどう評価しているかといった評価ではなく、「何月何日の何時頃、どこで、どのように何をやったのか、あるいはやらなかったのか」といった客観的な出来事を指します。会社経営者が問題視している言動について、5W1Hに整理して具体化していく作業が、立証の出発点となります。

試用期間中の日報と上司コメントによる記録化

 能力不足の立証に必要な記録をどのように蓄積するかについて、実務的に最も推奨できるのは、試用期間中の日報運用です。A4一枚程度の分量で構いませんので、本人に当日の業務遂行状況及び所感を記載させて提出させ、直属の上司又は先輩が当該日報にコメントを付するという運用を、毎日継続していく方法です。

 日報のコメントにおいて特に留意すべき点は、実態に反して褒める記載を行わないことです。実際には業務遂行ができていないにもかかわらず、本人の心情を慮って褒める記載を行うことは、後日の立証において重大な障害となるだけでなく、本人の現状認識を誤らせる点でも望ましい運用ではありません。褒めるべき点は率直に褒め、改善を要する点は具体的事実を示した上で礼儀正しく指摘するという運用を徹底する必要があります。

 このような日報運用は、単なる立証準備の作業にとどまらず、教育指導効果の最大化にも資するものです。具体的事実に即したフィードバックは、抽象的な評価の伝達と比較して、能力向上効果の点でも顕著な差異を生じさせます。教育指導を実効的に行うことがそのまま立証準備として機能する、という構造となっているといえます。

CHAPTER 05

教育指導の進め方

 

 能力が極端に低い社員に対する教育指導は、平均以上の能力を有する社員と同じ方法では実効性を確保できません。基本原則は、徹底的に具体的に指導することに尽きるといってよいでしょう。

 抽象的な指示内容を理解して自律的に行動することができる社員であれば、一般的な指導方針の伝達でも足ります。しかし、能力が低い社員の多くは、抽象的言語の理解力自体が不足している客観的状況にあります。例えば「報連相を徹底すること」と指示したところで、どの場面においてどの程度の内容をどのような手段で伝達すべきかが本人には伝わりません。具体的な事例を示し、場合によっては実際の動作を示した上で、本人にも実施させ、その結果に対し具体的なフィードバックを行うという方法が、実効性のある教育指導といえます。

 具体的指導には、抽象的指導と比較して格段に多くの時間と労力が必要となります。教える側の負担は重くなり、他の業務に支障が生じることも避けられません。そのため、「通常の指導では覚えてくれないため匙を投げた」という対応が現場で取られることも珍しくありません。しかし、求人が容易でない状況にある中小企業においては、能力不足の社員を放出して新規採用で対応することの現実的可能性が低い場合も多く、一定の手間をかけて戦力化する方が経営合理性にかなう場面もあります。具体的教育指導は、このような経営判断を可能にするための現実的手段であるといえます。

別の職務への配置と本人の健康への配慮

 教育指導と並行して検討すべき選択肢として、別の職務への配置転換があります。社員には、職務ごとの適性に差異が存在するのが通常であり、現在の職務に適性が低い社員であっても、別の職務であれば十分な水準の業務を遂行できる可能性があります。

 中小企業においては、配置可能な職務の選択肢に制約がある場合も多いのが実情ですが、現実的可能性のある範囲で配置転換を試みる余地があるのであれば、一度試してみる価値があります。適性のある職務に配置できた場合、会社にとっても本人にとっても満足度の高い結果となり得ます。

 他方、本人が現在の職務に明らかに適性を欠いており、その状態が継続することにより心身の不調をきたしている場合には、会社の安全配慮義務の観点から、適切な対応を検討する必要があります。適応障害やうつ状態の診断書が提出される段階に至ってからでは対応の選択肢が狭まりますので、体調不良の兆候が見られた段階で、配置転換の検討あるいは就業環境の調整を検討することが望ましいといえます。

CHAPTER 06

配置転換の検討

 

 配置転換は、能力不足の社員への対応において、解雇や退職勧奨に先行して検討すべき重要な選択肢です。日本の会社の多くは、就業規則上、配置転換の権限を会社に留保する定めを置いています。そのため、配置転換の可能性を検討することなく解雇等に踏み切った場合、解雇回避努力を尽くしていないとして解雇無効と判断されるリスクがあります。

 現実的可能性のある範囲で他の職務への配置を検討し、それでも配置先がない、あるいは配置先の職務についても能力不足が解消しないといえる客観的状況を整えて初めて、解雇等の検討が適切なものとなります。配置転換の検討は一定の負担を伴うものですが、解雇の有効性を左右する重要な論点である以上、形式的にではなく実質的に行うことが必要です。

関連論点 配置転換命令の具体的な発令手続、拒否への対応、管理職から一般職への降格の可否等の個別論点については、配置転換に関する専用ページで別途詳細に解説する予定です。

CHAPTER 07

退職勧奨の実務

 

 教育指導及び配置転換の検討を経てもなお問題が解消しない場合、退職勧奨を行うことを検討することになります。退職勧奨を行うに当たっては、退職勧奨とは「合意退職」を目指すものであるという基本的性質を正確に理解することが、最も重要な出発点となります。

 合意退職は、労働者の同意を得た上での退職を意味します。これに対し、「解雇」は、退職について労働者の同意がないにもかかわらず、雇い主が一方的に労働契約を終了させる意思表示であり、両者は法的性質を全く異にするものです。退職勧奨を行っているはずが、労働者側から解雇に話を誘導され、いつの間にか「解雇」を行ったものとして扱われる事案は、実務上しばしば発生します。準備不足の解雇は解雇無効を主張して多額の解決金を取得しやすい客観的状況にあるため、労働者側は合意退職の提案を解雇の話に置き換える傾向にあります。この性質の相違を正確に把握し、合意退職の枠組みを維持した交渉を進める必要があります。

退職勧奨において説明すべき二つの事項

 退職勧奨に際しては、主として次の二点を事前に検討し、面談において当該社員に説明することが基本となります。

 第一に、会社を辞めなければならない理由です。この点は軽視されがちですが、極めて重要な項目です。当該社員が会社を辞めなければならない理由が存在しないのであれば、会社の行う退職勧奨には正当性がないことになり、合意退職に応じていただきにくくなります。また、仮に退職の意向を示していただけたとしても、退職条件は会社にとって不利な方向に傾かざるを得ず、解決金の水準も高額化します。

 辞めなければならない理由を説明することは問題をこじらせるとの考えから説明を回避する対応を取る会社も見られますが、理由が正当である限り、説明によって問題がこじれることはほとんどありません。むしろ、理由を説明せずに退職を求めることは「軽く扱われた」との受け止めを誘発し、問題がこじれやすい客観的状況となります。この点は経験の蓄積から明らかといえます。

 第二に、退職条件です。退職条件のうち最も重要なのは退職日です。合意退職が成立したといえるためには退職日の確定が必要であり、退職勧奨を行う会社にとって最も合意すべき事項であるためです。一般論として、同じ事案については退職日が近いほど解決金の水準が高くなりやすく、退職日が先になるほど解決金の水準が低くなりやすい傾向にあります。

 退職条件として次に重要なのは、退職に当たって支払う一時金の額です。名称としては、特別退職金、解決金、和解金等の各種があり得ますが、紛争解決の観点からは全体額で交渉するのが通常です。その他の条件として、会社都合扱いとするか、年次有給休暇の取扱い、退職日までの出社義務及び給与の取扱い、秘密保持、誹謗中傷禁止等があり、必要に応じて退職合意書に記載することになります。

CHAPTER 08

本採用後の解雇

 

 試用期間中の対応により解決できず、本採用を経過した段階で改めて能力不足を理由とした解雇を検討する事案も少なくありません。本採用後の解雇については、純粋な能力不足のみを解雇事由とする場合、ハードルが相当に高くなることを前提とする必要があります。

 法的には、試用期間経過により解約権留保付労働契約が通常の労働契約へと性質を変えることから解雇事由の要求水準が上がるという整理になりますが、実務上それ以上に重要な相違として、労働者側の納得感が大幅に失われるという点があります。本採用を経過した以上は雇用継続が予定されていると受け止めるのが通常であり、そこへ能力不足を理由とした退職要求がなされた場合、「以前から同じ水準であったにもかかわらず、なぜ今になって能力不足といわれるのか」という反発は避けられません。この反発は、解雇の有効性をめぐる紛争において会社側に不利に作用します。

本採用後の解雇が認められやすい典型類型

 本採用を経過した後であっても、能力不足を理由とする解雇が認められやすい類型が存在します。

 第一に、採用時又は採用後しばらくの間は一定の能力水準で業務を遂行できていたにもかかわらず、何らかの事情により能力が大幅に低下したといえる事案です。病気や怪我、加齢等の事情により能力が従来水準から著しく低下したような場合には、能力不足を理由とした解雇が認められる余地があります。

 第二に、能力不足以外の解雇事由が併存している事案です。能力が低いと会社経営者が認識している社員は、同時に他の問題行動を起こしていることが少なくありません。無断欠勤、遅刻早退、業務命令違反、不正行為といった事由が併存しているのであれば、能力不足という切り口に固執せず、企業秩序維持の観点からこれらの事由に基づく懲戒処分又は解雇の当否を検討することが適切です。

 能力が不足しているのみで勤務態度及び勤怠に問題がない社員については、解雇の難易度が高くなる傾向にあるのが実情です。他方、相談を受けて事実関係を精査すると、能力不足のみならず業務命令違反や勤怠不良といった併存事由が認められる事案は相当数存在しますので、能力不足の切り口のみにとらわれず、解雇事由全般を洗い出す検討が重要です。

体調不良を伴う場合──休職期間満了退職の選択肢

 もう一つの重要な解決ルートとして、本人が心身の不調をきたしている場合の休職制度の活用があります。適性のない職務の継続により、頭痛、肩こり、胃痛等の身体症状が生じ、さらに進んで適応障害やうつ状態の診断書が提出される段階に至ることは実務上珍しくありません。

 このような事案については、解雇の検討を急ぐのではなく、就業規則に定める休職制度を適用し、休職期間を満了してもなお復職が困難な場合には自然退職として処理する方法が実務的に採用されることがあります。法的には解雇には該当しませんが、結果として雇用関係の終了を実現する方法であり、本人に過度な負担をかけずに解決できる選択肢として有用です。

CHAPTER 09

当事務所のサポート体制

 

 弁護士法人四谷麹町法律事務所は、会社側(使用者側)の労働問題に特化した法律事務所であり、東京・千代田区四谷麹町に所在いたします。首都圏の会社様はもとより、オンライン面談等を活用し、全国の会社様からのご依頼を受任しております。

 能力不足の社員への対応は、解雇や退職勧奨といった雇用終了局面に至って初めて弁護士が関与すれば足りるというものではありません。むしろ、注意指導の段階からご相談いただくことにより、後日の紛争リスクを大幅に低減することができます。当事務所では、ご依頼をいただいた事案について、定期的なオンライン打合せを通じ、面談の設計、注意指導書・厳重注意書等の文案、日報のコメントの記載方法、退職合意書の各条項に至るまで、具体的にサポートいたします。労働審判又は訴訟に発展した場合についても、同じチームが一貫して対応いたします。

主なご依頼場面

 能力不足の社員への対応に関連して、以下のような場面でのご依頼を承っております。第一に、注意指導・改善指導の段階におけるサポートです。日報等の運用設計、面談における伝達内容の整理、注意指導書の起案等、日常の労務管理について法的観点を踏まえた助言を行います。第二に、退職勧奨の実務サポートです。面談の準備、説明内容の整理、退職合意書の起案及び交渉代理を担当します。第三に、試用期間満了時の本採用拒否及び本採用後の解雇に関する判断支援です。リスク評価を踏まえて判断材料を整理し、解雇通知書等の起案までサポートします。第四に、労働審判及び訴訟の代理です。申立書・訴状が会社に到達した段階からの緊急対応、答弁書等の作成、期日への代理出席、和解交渉までを一貫して担当いたします。

Q & A

よくあるご質問

 

Q.能力不足を理由に社員を解雇することはできますか。

A.能力不足を理由とした解雇は、理論上は可能です。もっとも、能力不足とは労働契約で予定されている能力と実際の能力のギャップを意味しますので、まずは当該労働契約でどの程度の能力が予定されていたのかを明らかにする必要があります。未経験者歓迎として採用した社員や新卒採用の社員については、最初から仕事ができることを求めていない採用の仕方と解釈されるのが通常であり、能力不足を理由とした解雇のハードルは相当に高くなります

Q.能力が低い社員であることを立証するには、どのような証拠が必要ですか。

A.「能力が低い」というのは事実ではなく評価です。評価のみを伝えると、「会社の好悪で言われているのではないか」「パワハラではないか」と受け止められる客観的状況があるため、評価を裏付ける具体的事実の積み上げが必要となります。何月何日の何時頃、どこで、どのように何をやったのか、あるいはやらなかったのかといった具体的言動を記録し、それに対してどのような指導を行ったのかまで明確に残すことが基本です。少なくとも試用期間中は、日報等により業務遂行状況と上司の具体的コメントを記録することをお勧めします。

Q.試用期間中であれば、能力不足で解雇しやすいのでしょうか。

A.試用期間中の本採用拒否についても、客観的に合理的な理由等が必要である点に変わりはありませんが、本採用後の解雇と比較して法的ハードルは若干下がります。加えて、労働者側の納得感についても大きな差異があり、合意退職が成立しやすい客観的状況にあるといえます。能力不足を理由に退職していただく可能性のある社員については、試用期間満了までに判断することが基本的対応となります。

Q.試用期間は3ヶ月と6ヶ月、どちらが適切ですか。

A.会社や業種、担当させる職務の内容により、適切な試用期間の長さは異なります。3ヶ月で判断が可能な会社であれば3ヶ月で足りますが、過去に3ヶ月では判断がつかず満了後に対応に苦慮した経験のある会社については、試用期間を6ヶ月に変更することをお勧めします。他方、合理的説明のつかない長期の試用期間は、期間の定め自体が無効と判断される場合があるため、業務内容に即した合理性のある範囲で設定することが適切です。

Q.本採用後の社員でも、能力不足を理由に解雇できますか。

A.本採用を経過した後の能力不足を理由とする解雇は、純粋な能力不足のみを解雇事由とする場合、ハードルが相当に高くなります。もっとも、以前は一定の水準の業務を遂行できていたにもかかわらず、何らかの事情により能力が大幅に低下したといえる場合には、解雇が有効とされる余地があります。また、能力不足以外に業務命令違反・無断欠勤・勤怠不良等の解雇事由が併存している事案も相当数存在しますので、能力不足という切り口にこだわらず、他の解雇事由の有無もあわせて検討することが適切です。

Q.能力不足の社員に退職勧奨をする場合、退職金はどのように決まりますか。

A.一律の基準はなく、事案ごとの交渉により決定されます。一般論として、同じ事案については退職日が近いほど解決金の水準は高くなりやすく、退職日が先になるほど解決金の水準は低くなりやすい傾向にあります。また、会社が辞めなければならない理由を事実に基づいて具体的に説明できているかによっても、合意水準は大きく変わります。

Q.相談は具体的にどのように進めていただけますか。

A.初回のご相談において、事実関係と資料を踏まえ、法的リスク及び進め方の全体像をご説明いたします。ご依頼いただいた後は、注意指導の段階から関与させていただくことが多く、オンライン面談を活用した定期的な打合せにおいて、面談の設計、注意指導書の文案、退職合意書の条項等について具体的にサポートいたします。

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SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 
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最終更新日 2026/04/18


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