労働問題151 私傷病の休職制度がある場合に休職させずに解雇できるか【会社側弁護士が解説】
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「精神疾患を発症した社員を、休職させずに直ちに解雇できないか」というご相談は、会社経営者の方から多くいただきます。対応が長引くことへの不安や、業務への支障を早期に解消したいという思いは十分に理解できます。しかし、私傷病に関する休職制度がある場合に休職させずにいきなり解雇することは、大きな法的リスクを伴います。
本ページでは、私傷病に関する休職制度がある場合の直接解雇の可否と、そのリスク・実務上の対応について、会社側・使用者側専門の弁護士が解説します。
01休職制度がある場合の原則はまず休職させることです
私傷病に関する休職制度を設けている会社において、精神疾患を発症した社員に対して休職させずにいきなり普通解雇することは、特段の事情がない限り解雇権濫用(労働契約法16条)として解雇無効と判断されるリスクが高いです。
休職制度は「直ちに解雇するのではなく、まず療養機会を与える」という趣旨の制度です。会社が自らその制度を設けておきながら、使用もせずに解雇するのは、制度設計の趣旨に反しています。裁判所も「なぜ休職させずに解雇したのか」を厳しく問題にします。
実務上の原則は「休職制度があれば、まず休職させる」ということです。休職期間満了後に復職できなければ、就業規則に基づいて自動退職または解雇の扱いとします。このプロセスを踏むことで、会社側のリスクを大幅に低減できます。
02直ちに解雇が認められ得る例外的な場合
休職制度があっても直ちに解雇が認められ得る例外的な事情としては、休職させても休職期間満了までに債務の本旨に従った労務提供ができる程度まで回復する見込みが客観的に乏しい場合(専門医による診断で長期の治療が必要であることが明らかな場合等)や、休職制度を利用する機会を与えても意味がないことが客観的に明らかな場合等が考えられます。
ただし、このような例外を主張するためには客観的な医学的証拠が必要であり、ハードルは高いといえます。「治らないだろうと思う」という主観的な判断では不十分であり、専門医の診断書等の客観的証拠が必要です。例外的な直接解雇を検討する場合は、必ず事前に弁護士に相談してください。
03「長引くのが嫌だから早く解雇したい」は最大のリスクです
精神疾患社員への対応が長引くことを嫌って、休職制度があるにもかかわらず直接解雇を選択することは、後に解雇無効とバックペイという最悪のシナリオを招くリスクがあります。解雇無効となれば、解雇時から解決までの間のバックペイの支払が命じられます。
長期化を恐れて早期に解雇するより、適切な手順(休職命令・期間満了退職)を踏む方が、結果として会社側のリスクを大幅に低減することができます。段階的な対応(業務軽減・休職・期間満了退職)こそが会社を守る最善策です。
04休職から解雇に至るプロセスの設計が重要です
精神疾患社員への対応において会社のリスクを最小化するためには、就業規則に休職制度・休職期間・休職期間満了時の取扱いを明確に定めた上で、休職命令・復職判断・休職期間満了退職という一連のプロセスを整然と実施することが求められます。
このプロセスを機能させるためには、就業規則の整備・記録の積み上げ・段階的な対応が必要です。精神疾患社員への対応は初期段階から会社側・使用者側専門の弁護士に相談しながら進めることが、後のトラブルを防止する上で最も効果的です。弁護士法人四谷麹町法律事務所では、このような対応について豊富な経験を有しています。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。精神疾患社員への解雇の可否・休職対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 休職制度があっても直ちに解雇できる場合はありますか。
A. 例外的に直ちに解雇が認められ得る場合としては、休職期間満了までに回復する見込みが客観的に乏しいことが専門医の診断書等で明らかな場合などが考えられます。ただし、この例外を主張するためのハードルは高く、客観的な医学的証拠が必要です。直接解雇を検討する場合は必ず事前に弁護士に相談してください。
Q2. 解雇無効とバックペイとはどのようなリスクですか。
A. 解雇が無効とされた場合、法的には解雇がなかったものとして扱われます。これにより、解雇時から解決(判決または和解)までの間に支払うべきだった賃金(バックペイ)の支払が命じられます。精神疾患社員対応が長引いた場合でも、不当に解雇するよりは適切な手順を踏む方が、経済的なリスクを大幅に低減できます。
Q3. 休職制度を設けていない会社の場合はどうなりますか。
A. 就業規則に私傷病に関する休職制度を設けていない場合、精神疾患を理由とする解雇の有効性は個別の事情によって判断されます。ただし、解雇権濫用法理(労働契約法16条)の適用は免れませんので、精神疾患を理由とする解雇は引き続き慎重に判断する必要があります。休職制度の設置も含め、就業規則の整備について弁護士に相談することをお勧めします。
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最終更新日:2026年5月10日