労働問題147 精神疾患を否定する社員への休職命令の可否と会社側の対応【会社側弁護士が解説】
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精神疾患の発症が疑われる社員が「自分は就労できる」と主張している場合でも、会社として休職命令を発令することはできるのでしょうか。経営者の方からよく受ける質問の一つです。
結論として、就業規則所定の休職事由に該当すれば、本人の同意なく休職命令を発令することは可能です。しかし、休職事由の存在を客観的に立証できることが大前提であり、立証できない場合は休職命令が無効となるリスクがあります。本ページでは、精神疾患を否定する社員への休職命令について、会社側・使用者側専門の弁護士が解説します。
01本人の同意がなくても休職命令を発令できます
精神疾患の発症が疑われる社員が精神疾患の発症を否定して「自分は就労できる」と主張している場合でも、就業規則所定の休職事由に該当すれば、会社は休職命令を発令することができます。休職命令は会社の使用者権限に基づく業務命令であり、本人の同意は法的な要件ではありません。
ただし、休職命令は社員の就労を制限する重大な措置です。「休職事由に該当する」という客観的な根拠なしに発令した場合、後に「不当な就業排除だ」として損害賠償請求を受けるリスクがあります。休職命令の発令に際しては、必ず弁護士に相談することを強くお勧めします。
02休職事由の立証が最大のポイントです
休職事由の存在を客観的に立証できなければ、休職命令は無効と判断されるリスクがあります。精神疾患の発症が疑われる社員が精神疾患を発症しているにもかかわらずこれを否定している場合、会社が精神疾患の発症(休職事由)を立証しなければなりません。
立証のために重要な証拠としては、指定医(精神科・心療内科専門医)の診断書・意見書、産業医の意見書、客観的な勤怠記録・業務上のミスの記録・本人の言動の記録が挙げられます。特に、就業規則に「会社の指定する医師の診断を受けさせることができる」旨の規定があり、その診断に基づいて休職事由の存在が認められた場合は、休職命令の有効性が認められやすくなります。
これらの証拠を積み上げるためには、精神疾患が疑われた時点から継続的な記録の作成・保存が必要です。「いざとなったら記録を集める」という対応では、証拠が不十分になることがあります。早期の段階から記録を積み上げることが重要です。
03就業規則の整備が先決です
本人が否定している場合の休職命令を有効に発令するためには、就業規則に適切な規定が必要です。具体的には、休職事由として「精神疾患その他の傷病により就業が困難と会社が認める場合」等の規定と、「会社の指定する医師の受診を命じることができ、その診断に基づいて休職を命じることができる」旨の規定が求められます。
これらの規定がない状態で休職命令を発令しても、法的根拠が乏しいとして無効とされるリスクが高くなります。就業規則の整備は、精神疾患社員対応における最も重要な事前準備の一つです。
04「就労できる」と主張する社員への休職命令の注意点
本人が強く就労を主張しているにもかかわらず休職命令を発令し、後に裁判で「休職事由がなかった」と判断された場合、会社は不当な就業排除として損害賠償責任を負う可能性があります。
精神疾患を否定する社員への休職命令は、法的リスクが高い対応の一つです。休職命令発令前には必ず弁護士に相談し、休職事由の立証可能性・就業規則の整備状況・代替的な対応手段(就労拒絶・欠勤扱いの継続等)を慎重に検討することが求められます。弁護士法人四谷麹町法律事務所では、精神疾患社員対応に関する豊富な経験を有しており、使用者側の視点から実務的なアドバイスを提供しています。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。精神疾患を否定する社員への休職命令でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 精神疾患を否定している社員への休職命令は有効ですか。
A. 就業規則所定の休職事由に該当することを客観的に立証できれば、本人の同意なく休職命令を発令することは可能であり、有効と判断される可能性があります。しかし、休職事由の立証が不十分な場合は「不当な就業排除」として無効とされるリスクがありますので、発令前に必ず弁護士に相談してください。
Q2. 休職事由を立証するためにはどのような証拠が必要ですか。
A. 指定医(精神科・心療内科専門医)の診断書・意見書、産業医の意見書、客観的な勤怠記録・業務上のミスの記録・本人の言動の記録が重要な証拠となります。特に、就業規則に指定医受診命令の根拠規定があり、その診断に基づいて休職事由の存在が認められた場合は、休職命令の有効性が認められやすくなります。
Q3. 休職命令を発令する前に確認しておくべきことは何ですか。
A. 就業規則に休職事由・指定医受診命令・休職命令の根拠規定が整備されているかどうかを確認してください。規定が不十分な場合は、まず就業規則を整備することが先決です。また、休職事由の立証に足りる証拠が積み上がっているかどうかも確認が必要です。休職命令発令の前には必ず弁護士に相談してください。
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最終更新日:2026年5月10日