労働問題149 出社と欠勤を繰り返す社員に休職命令を発令するには、就業規則をどう整備すればよいですか。欠勤通算規定の設け方を教えて下さい。

この記事の結論
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「連続〇日以上の欠勤」のみの規定では、出社と欠勤を繰り返す社員に休職命令を発令できない

うつ病等の精神疾患には波があり、一時的な出社を挟んで欠勤が繰り返されると、休職事由に該当しない状態が続くことがあります。

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中断期間(14〜30日程度が目安)の欠勤通算規定と再休職規定をあわせて整備する

問題が起きてからでは対応が難しいため、問題が生じていない段階から就業規則を整備しておくことが最も効果的なリスク管理策です。

解説動画

 欠勤通算規定とは、私傷病による欠勤が一定の中断期間を挟んで断続的に繰り返された場合に、前後の欠勤期間を通算して休職事由の該当性を判断する旨を定めた就業規則上の規定をいいます。精神疾患を発症した社員の中には、休んでは出社し、また休むという形で出社と欠勤を繰り返すケースが少なくありません。うつ病等の精神疾患は波があり、一時的に回復したと思ったら再び悪化するという経過を辿ることが多いためです。

 このような社員への対応において、就業規則の休職事由の規定が不十分だと、休職命令を発令したくても法的根拠が乏しいという事態に陥ります。特に「欠勤通算規定」の有無が、実務上の対応力に大きな差をもたらします。本ページでは、出社と欠勤を繰り返す社員への対応に備えた就業規則の整備について、会社側専門の弁護士が解説します。

01就業規則に欠勤通算規定がない場合の問題

 結論:休職事由を「連続〇日以上の欠勤」とだけ定めている場合、出社と欠勤を繰り返す社員には休職事由が成立せず、休職命令を発令できない状態が続くという問題が生じます。たとえば「29日休んで1日出社、また29日休んで1日出社」という形で欠勤を繰り返されると、休職事由(連続30日欠勤)に当たらない状態が続いてしまいます。

 このような状態が続くと、会社として実質的に何もできないまま長期間が経過し、他の社員への影響・業務への支障・使用者の負担が積み重なっていきます。問題が起きてから就業規則を整備しても、その社員への適用が難しい場合もあるため、事前の対策が不可欠です。

02欠勤通算規定の設け方と規定例

 結論:欠勤通算規定を就業規則に設けることで、中断期間が一定日数未満であれば前後の欠勤期間を通算し、休職事由への該当性を認めることができます。具体的な規定例としては、次のような形が考えられます。

 「第〇条(休職)私傷病により〇日以上欠勤したとき(欠勤期間中に出勤した期間が30日未満の場合は、前後の欠勤期間を通算して連続しているものとみなす)は、休職を命じることがある。」この規定により、「29日欠勤・1日出社・29日欠勤」という形で繰り返された場合でも、中断期間が30日未満であれば欠勤期間が通算され、合計58日欠勤として休職事由に該当させることができます。

03通算期間の目安と実務上のポイント

 結論:欠勤通算の中断期間は会社の実態に応じて14日から30日程度を目安に設計し、再発時の再休職規定もあわせて整備することが推奨されます。中断期間が短すぎると(例えば7日)、少し長めの有給休暇取得後に欠勤が再開した場合に通算される可能性があるため、実態に合わせた設定が必要です。

 また、復職後に一定期間(例えば6か月〜1年)内に再発した場合は残存休職期間を適用するか新たな休職期間を短縮するという再休職規定も合わせて設けることが推奨されます。この規定がないと、休職・復職を繰り返す社員に対して毎回同じ休職期間を付与しなければならないという問題が生じます。就業規則の改定には従業員代表への意見聴取・労働基準監督署への届出など所定の手続が必要です。また、既存の社員に対して不利益となる変更を行う場合は合理性の要件が求められますので、規定の設計段階から弁護士に相談することをお勧めします。

04就業規則の整備は問題が起きる前に行ってください

 結論:欠勤通算規定を含む就業規則の整備は、問題が起きてからでは対応が難しいため、問題が生じていない段階から行っておくことが最も効果的なリスク管理策です。出社と欠勤を繰り返す社員への対応は、就業規則に適切な規定がなければ法的に有効な休職命令を発令することが難しくなります。

 弁護士法人四谷麹町法律事務所では、中小企業の実態に合わせた就業規則の整備・精神疾患社員への対応について、豊富な経験を有しています。会社側専門の弁護士として、経営者の視点からアドバイスを提供しておりますので、就業規則の見直しをご検討の経営者の方はぜひご相談ください。

就業規則整備の比較|適切な対応/NGな対応

○ 適切な対応 ✕ NGな対応(休職命令を発令できないリスク)
欠勤通算規定を設け中断期間を明確に定める 「〇日以上の連続欠勤」のみを休職事由とする
再休職規定もあわせて整備する 復職・再発を繰り返すたびに同じ休職期間を毎回付与する
従業員代表への意見聴取・労基署届出の手続を踏んで改定する 所定の手続を経ずに規定を変更する
問題が起きる前に規定を整備しておく 問題が発生してから慌てて規定を作ろうとする

05よくある質問(FAQ)

Q. 欠勤通算規定がない場合、出社と欠勤を繰り返す社員に対して何もできませんか。

欠勤通算規定がない場合でも、客観的に就労不能と判断できる状態であれば就労拒絶・欠勤扱いの対応は可能です。ただし、休職命令の発令には就業規則の休職事由に該当することが必要であり、欠勤通算規定がない状態では対応が難しくなります。今後のためにも早期に就業規則を整備することを強くお勧めします。

Q. 欠勤通算の「中断期間」を14日に設定することはできますか。

設定は可能ですが、中断期間が短いほど、長めの有給休暇取得後に欠勤が再開した場合に通算される可能性が高まります。自社の有給休暇の取得実態・職種・業務内容などを踏まえて適切な期間を設定することが重要です。就業規則の設計については弁護士に相談しながら進めることをお勧めします。

Q. 再休職規定も設けることをお勧めする理由は何ですか。

再休職規定がないと、復職後に再発した社員に対して毎回同じ休職期間を付与しなければならないという問題が生じます。例えば、休職期間が1年と定められている場合、復職後1か月で再発して再び休職に入った場合でも、また1年の休職期間が与えられることになります。再休職規定を設けることで、こうした問題に対処することができます。

経営上のポイント 休職事由を「連続〇日以上の欠勤」とだけ定めていると、出社と欠勤を繰り返す社員には休職命令を発令できない事態が生じ得ます。中断期間14〜30日程度を目安とした欠勤通算規定と、再発に備えた再休職規定をあわせて整備しておくことが、精神疾患社員対応における実効的なリスク管理となります。休職期間満了日の事前通知とあわせて、就業規則の欠勤通算規定・再休職規定の整備について会社側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。出社と欠勤を繰り返す社員への対応・就業規則の欠勤通算規定でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月9日

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