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出勤停止による無給は労基法91条に反しますか?

 出勤停止による無給は、労働者が出勤停止処分によって労務提供しないことの結果(いわゆるノーワークノーペイ)ですので、減給処分による賃金減額とは異なります。
 労基法91条は減給処分における減額の上限を定めるものですから、出勤停止による無給には適用されません。解釈例規や裁判例でも同様の見解が述べられています(昭和23年7月3日基収2177号、パワーテクノロジー事件東京地裁平成15年7月……

就業規則に「懲戒解雇の場合、退職金は不支給とする。」と定めておけば、懲戒解雇する労働者に退職金を支給しなくてもいいですか。

 退職金には、在職期間中の労務提供の対価(賃金)の後払いという側面があります。賃金の後払いという側面がある以上、懲戒解雇の場合に退職金を不支給とすると就業規則で規定しても、労働者が退職時までに積み上げてきた労務提供に対する対価が否定されるような事情がなければ、退職金を不支給にすることはできないとされています。
 裁判例では、「当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信……

有期労働契約における不更新条項や更新限度特約について,裁判例ではどのような判断がなされていますか?

 雇止めの有効性に関連して問題となっているのが、不更新条項や更新限度特約です。不更新条項とは、有期労働契約について当該契約期間が満了した場合には更新しないことをあらかじめ合意しておくことをいいます。更新限度特約とは、有期労働契約を結ぶ際に、更新の回数の限度についてあらかじめ合意しておくことをいいます。裁判例では、ある程度の更新がなされている場合でも、更新限度特約などから解雇権濫用法理の類推適用が行……

秘密保持義務と不正競争防止法の関係を教えてください。

 営業秘密として管理される知的財産の多くは、労働者や技術者の長年の努力と、使用者の多額の投資の集結です。このような知的財産は、事業者の収益を生み出す源としての価値を有しているとともに、一度侵害されると瞬時に拡散してしまいます。また、人的・組織的な管理によらざるを得ないことから、侵害行為の予防には限界があるという性質を内包しています。このような営業秘密は、企業内部における適切な管理と、法律による侵害……

退職後の従業員による引き抜き行為が違法と評価されるのはどのようなケースですか?

 退職後の従業員による引き抜き行為の法的責任について、フレックスジャパン対アドバンテック事件(東京地裁平成14年9月11日判決)は、「従業員が勤務先の会社を退職した後に当該会社の従業員に対して引き抜き行為を行うことは原則として違法性を有しないが、その引き抜き行為が社会的相当性を著しく欠くような方法・態様で行われた場合には、違法な行為と評価されるのであって、引き抜き行為を行った元従業員は、当該会社に……

在職中の従業員による引き抜き行為が誠実義務違反と評価されるのはどのようなケースですか?

 在職中の従業員による引き抜き行為は、競業そのものではありませんが、裁判例上、競業と同じく、従業員の誠実義務違反と評価され得ると考えられています(フレックスジャパン対アドバンテック事件東京地裁平成14年9月11日判決)。この裁判例では、在籍中の従業員による引き抜きが単なる転勤の勧誘である場合には行為者の法的責任は発生せず、企業の正当な利益を考慮することなく、企業に移籍計画を秘して、大量に従業員を引……

競業行為に対し損害賠償請求する場合、どのようなことに留意する必要がありますか?

 競業行為について損害賠償を請求する場合、使用者は、競業避止義務違反と相当因果関係のある損害(損害の発生と損害額)を主張・立証しなければなりません。
 損害額を算定する際には、使用者がいかなる利益を逸失しているかを具体的に把握し、その上で、把握した逸失利益を金額に換算していきます。この際、一つ一つ具体的に算定することができるものであれば問題ありませんが、具体的な算定が難しい場合は、合……

在職中の従業員が競業や競業準備を行った場合、競業避止義務違反か否かはどのように判断されていますか?

 従業員の競業避止義務については、法令上明確な根拠規定は置かれていませんが、個別の労働契約や就業規則の規定で競業避止義務を定めていなかったとしても、在職中の従業員は、労働契約に付随する誠実義務の一環として、当然に競業避止義務を負うと考えられます。
 在職中の競業行為は、当然、競業避止義務違反となりますが、問題は、在職中に競業準備を行うことが競業避止義務違反となるか否かについてです。裁……

希望退職募集制度とはどういうものですか?

 希望退職募集制度とは、労働者に対し、退職優遇条件を提示して退職希望者を募集する制度です。リストラの一環として行われることが多いですが、労働者は退職を迫られるわけではなく、従来の通り勤務を継続できる状況の下、優遇条件、利害得失を十分に検討し、退職するか否かを判断することが前提となります。
 希望退職制度では、募集要項が定められ労働者に告知されるのが通例です。募集要項に定められる項目に……

会社の解散・倒産に伴う整理解雇についても4要素を充たさなければなりませんか?

 会社解散及び清算型倒産手続に伴って整理解雇を行う場合、必ずしも、整理解雇の法理(①整理解雇の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続の相当性)が適用されるわけではありません。このような解雇の有効性をめぐっては、職業選択の自由や財産権の保障を根拠とする企業廃止の自由を理由として、解散が適法・有効に行われる限り、解散を理由とする解雇は有効とする裁判例(大陸運事件大阪高裁平成15年11月13日判……

整理解雇をするに当たっては、どのようなことを検討しなければなりませんか?

 整理解雇は、使用者の経営上の理由による解雇であることから、解雇権濫用法理が適用されます。
 裁判所は、①整理解雇の必要性があるか、②解雇を回避する努力をしたか、③解雇者の人選基準や人選に合理性があるか、④解雇手続きに妥当性があるかという4つの要素を総合的に判断することにより、解雇権濫用の有無を判断しています。 ①整理解雇の必要性
 整理解雇は、経営上の十分な必要性に……

情報漏洩、兼業、競業行為を理由として懲戒処分を行う場合のポイントを教えてください。

1.情報漏洩
 企業情報等の漏洩は、企業秩序を現実に侵害する場合は懲戒事由となります。例えば、新聞記者が個人用ホームページに業務上知り得た事実や体験談を掲載したことが、新聞社における職務と密接に関連し、取材源秘匿との会社方針に反する行為であった等として、出勤停止処分が有効とされた裁判例があります(日本経済新聞社事件東京地裁平成14年3月25日判決)。近年では、SNSに企業情報の漏洩な……

勤務時間外における企業外での犯罪行為を理由として懲戒処分を行う場合のポイントを教えてください。

 勤務時間外における企業外での行動は、本来は労働者の私生活上の行為であり、使用者が懲戒をもって臨むことはできないはずです。しかし、労働者は信義則上、使用者の業務利益や信用・名誉を毀損しない業務を負っていますので、原則として企業外での行動を規制することはできないものの、それが「企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるときなど企業秩序に関係を有する」場合は、懲戒事由となると判断されています(関西電力事……

経歴詐称を理由として懲戒処分を行う場合のポイントを教えてください。

 経歴詐称とは、採用時に、学歴や職歴、犯罪歴などの経歴を偽ることをいいます。このような経歴詐称は、一般には、使用者と労働者間の信頼関係を壊し、労働力の評価を誤らせ、人事異動等に関する秩序を乱すものであることから、裁判例(スーパーバッグ事件最高裁第一小法廷平成3年9月19日判決)は、詐称された経歴が最終学歴や職歴など、重要なものであることを前提として、経歴詐称の懲戒事由該当性を肯定しています。経歴を……

職務規律違反・不正行為を理由として懲戒処分を行う場合のポイントを教えてください。

 職務規律違反とは、労働の遂行その他の行動に関するルール違反のことをいい、暴行、脅迫行為、ハラスメント行為、業務妨害行為、横領などの不正行為等があります。
 まず、セクハラ行為が被害者及び会社に及ぼす影響の重大性から、セクハラを理由とする厳格な懲戒処分例が増えるとともに、処分の有効性が争われる事例も目立ってきています。L館事件では、原審は、女性従業員に対する管理職のセクハラ発言を理由……

職務懈怠を理由として懲戒処分を行う場合のポイントを教えてください。

 職務懈怠とは、労働の遂行が不適切なことをいい、無断欠勤、遅刻、早退、職場離脱、勤務不良、業務命令違反等が含まれます。
 労働者による職務懈怠が客観的に認められるとしても、その原因や使用者の対応によっては、懲戒処分が無効になる場合があります。
 裁判例では、精神的な不調のために欠勤を続けている社員について、使用者としては精神科医による健康診断を実施するなどした上で、その……

懲戒処分が法的に有効とされるために必要な手続の相当性について、具体的に教えてください。

 懲戒処分が法的に有効とされるためには、本人への弁明機会、賞罰委員会の開催、労働組合等の手続的保障がどこまで求められているのかが問題となります。
 本人への弁明の機会は、規定の有無を問わず必要なものであり、実質的に行われる必要があります。裁判例(ホンダエンジニアリング事件宇都宮地裁平成27年6月24日判決)では、就業規則上、懲戒解雇に際して労働者に弁明の機会を与える旨の規定がない場合……

懲戒処分が法的に有効とされるために必要な処分の相当性について、具体的に教えてください。

 懲戒処分が法的に有効とされるためには、懲戒事由の他に、懲戒処分を就業規則に明確に定める必要があります。就業規則に記載されていない懲戒処分を行うことはできず、判例(立川バス事件東京高裁平成13年9月12日判決)でも、就業規則において経歴詐称を理由とする懲戒処分の種類を懲戒解雇・出勤停止・減給・格下げにとどめるものと規定している場合には、懲戒の手段はこれらに限定されてしまい、より軽い譴責処分などであ……

懲戒処分が法的に有効とされるために必要な懲戒処分事由該当性について、具体的に教えてください。

 懲戒処分が法的に有効とされるためには、まず、懲戒事由を就業規則に明確に定める必要があります。ただし、懲戒事由が就業規則に定められた場合であっても、当該行為が懲戒事由に該当するか否かの判断において合理的な限定解釈を加えることは多くあります。また、一般の就業規則には、列記された懲戒事由の末尾に「その他、これに準ずる場合」という条項が置かれていることが多いですが、このような規定についても、合理的な限定……

降格が人事権濫用と判断されるのはどのような場合ですか?

 降格は、差別や不利益取扱い禁止の規制に該当する場合を除き、労働者との労働契約を根拠とする人事権の行使として行うことができます。そのため、一定の役職を解く降格は、労働契約を根拠として行うことができ、就業規則等の根拠規定は必要ありません。
 もっとも、労働契約上、労働者の役職や職位を限定する合意がある場合は、その役職や職位を引き下げることについて労働契約で予定されていないことになるため……

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