労働問題793 職務規律違反・不正行為を理由として懲戒処分を行う場合のポイントを教えてください。
職務規律違反とは、労働の遂行その他の行動に関するルール違反のことをいい、暴行、脅迫行為、ハラスメント行為、業務妨害行為、横領などの不正行為等があります。
まず、セクハラ行為が被害者及び会社に及ぼす影響の重大性から、セクハラを理由とする厳格な懲戒処分例が増えるとともに、処分の有効性が争われる事例も目立ってきています。L館事件では、原審は、女性従業員に対する管理職のセクハラ発言を理由とする出勤停止処分について、女性従業員から明白な許否の姿勢を示されておらず、管理職がセクハラ発言について女性従業員から許されていると誤信したこと等から、職場の人間関係の悪化等を懸念して加害者に対する抗議や抵抗、会社に対する被害の申告を差し控えることが少なくないことや、セクハラ発言の内容等から、原審が考慮したこれらの事由を加害者に有利に斟酌することは相当でないとして、出勤停止処分を有効としました(最高裁第一小法廷平成27年2月26日判決)。
パワーハラスメントについては、継続的な指導啓発を行いハラスメントのない職場作りを経営上の明確な指針としていた会社において、幹部社員が長期間に渡り継続的に部下にパワーハラスメントを行ったことに対し降格処分をしたことについて、有効とした裁判例があります(M社事件東京地裁平成27年8月7日判決)。
次に、不正行為には、金銭、物品の横領行為、取引先からの収賄行為、自己の地位・権限を利用しての企業利益相反行為等があります。これらは、企業の信用失墜を招き、損害を与えることから、懲戒事由該当性は当然として、重めの処分も許容されやすくなっていると考えます。会社からの通勤手当の不正受給を理由とする懲戒処分については、受給額の多寡や態様、会社側の管理体制などが考慮され、その有効性が判断されています。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
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