労働問題793 職務規律違反・不正行為を理由として懲戒処分を行う場合のポイントを教えてください。

この記事の結論
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セクハラ・パワハラを理由とする厳格な懲戒処分が認められやすくなっている

被害者が抗議や申告を差し控えることが少なくない事情を、加害者に有利に斟酌するのは相当でないとして、セクハラを理由とする出勤停止処分を有効とした最高裁判例があります(L館事件、最高裁平成27年2月26日判決)。

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不正行為は企業の信用失墜を招くため、重めの処分も許容されやすい

横領行為、収賄行為、企業利益相反行為等の不正行為は、懲戒事由該当性は当然として、重めの処分も許容されやすくなっています。通勤手当の不正受給では、受給額や態様、会社の管理体制も考慮されます。

 セクハラ・パワハラ・横領などの職務規律違反は、被害の重大性や企業への影響から、懲戒処分の中でも特に厳格な対応が求められる分野です。近年の最高裁判例は、この分野での使用者の対応を後押しする方向性を示しています。

 会社側専門の弁護士の立場から、職務規律違反・不正行為を理由とする懲戒処分のポイントを解説します。

01職務規律違反とは

 職務規律違反とは、労働の遂行その他の行動に関するルール違反のことをいい、暴行、脅迫行為、ハラスメント行為、業務妨害行為、横領などの不正行為等があります。

02セクハラを理由とする懲戒処分(L館事件)

 セクハラ行為が被害者及び会社に及ぼす影響の重大性から、セクハラを理由とする厳格な懲戒処分例が増えるとともに、処分の有効性が争われる事例も目立ってきています。L館事件では、原審は、女性従業員に対する管理職のセクハラ発言を理由とする出勤停止処分について、女性従業員から明白な拒否の姿勢を示されておらず、管理職がセクハラ発言について女性従業員から許されていると誤信したこと等を、処分を軽くする方向で考慮していました。

 しかし、最高裁は、職場の人間関係の悪化等を懸念して、加害者に対する抗議や抵抗、会社に対する被害の申告を差し控えることが少なくないことや、セクハラ発言の内容等から、原審が考慮したこれらの事由を加害者に有利に斟酌することは相当でないとして、出勤停止処分を有効としました(最高裁第一小法廷平成27年2月26日判決)。この判例は、被害者が声を上げにくいというセクハラ被害の実情を踏まえ、加害者側の「誤信」や「拒否がなかった」という主張を安易に有利な事情として扱わない姿勢を示したものといえます。

03パワハラを理由とする懲戒処分

 パワーハラスメントについては、継続的な指導啓発を行いハラスメントのない職場作りを経営上の明確な指針としていた会社において、幹部社員が長期間にわたり継続的に部下にパワーハラスメントを行ったことに対し降格処分をしたことについて、有効とした裁判例があります(M社事件、東京地裁平成27年8月7日判決)。会社が日頃からハラスメント防止に取り組んでいたという事情が、処分の正当性を裏付ける要素として評価されています。

04不正行為を理由とする懲戒処分

 不正行為には、金銭・物品の横領行為、取引先からの収賄行為、自己の地位・権限を利用しての企業利益相反行為等があります。これらは、企業の信用失墜を招き、損害を与えることから、懲戒事由該当性は当然として、重めの処分も許容されやすくなっていると考えられます。

 会社からの通勤手当の不正受給を理由とする懲戒処分については、受給額の多寡や態様、会社側の管理体制などが考慮され、その有効性が判断されています。少額であっても、悪質性が高ければ重い処分が是認される一方、会社側の管理体制が不十分であった場合には、その点も考慮要素になり得ます。

05会社側が押さえておくべき視点

 セクハラ・パワハラ事案では、被害者が声を上げにくい心理的な状況を前提に、L館事件の判示を踏まえた対応が求められます。加害者側の「誤信」や「拒否されなかった」という弁解を、安易に処分を軽くする理由として扱わないよう注意が必要です。あわせて、平時からハラスメント防止研修等を実施しておくことが、実際に処分を行う際の正当性を高めます(M社事件参照)。

 不正行為については、金額の多寡にかかわらず、悪質性や再発防止の必要性を踏まえた処分を検討することが重要です。同時に、会社側の管理体制に不備があった場合には、その点も処分の相当性判断に影響することを念頭に置き、日頃からの管理体制の整備にも努める必要があります。

06よくある質問(FAQ)

Q. 被害者から明確な拒否がなかったセクハラは、処分を軽くすべきですか。

軽くすべきではありません。被害者が職場の人間関係の悪化等を懸念して抗議や申告を差し控えることは少なくないため、明確な拒否がなかったことを加害者に有利に斟酌するのは相当でないとされています(L館事件)。

Q. 幹部社員によるパワハラで降格処分は認められますか。

認められる場合があります。継続的な指導啓発を行いハラスメント防止を経営上の指針としていた会社で、長期間のパワハラに対して降格処分をしたことが有効とされた例があります(M社事件)。

Q. 少額の不正受給でも、重い懲戒処分は認められますか。

受給額の多寡や態様、会社側の管理体制等が総合的に考慮されます。少額でも悪質性が高ければ重い処分が是認される場合があります。

経営上のポイント セクハラ行為が被害者・会社に及ぼす影響の重大性から、厳格な懲戒処分例が増えています。被害者が抗議や申告を差し控えることが少なくない実情を踏まえ、加害者側の「誤信」等を有利に斟酌するのは相当でないとして、出勤停止処分を有効とした最高裁判例があります(L館事件、最高裁平成27年2月26日)。パワハラについても、ハラスメント防止を経営上の指針としていた会社での長期継続的なパワハラに対する降格処分が有効とされています(M社事件)。横領・収賄等の不正行為は、企業の信用失墜を招くため重めの処分も許容されやすい一方、通勤手当の不正受給では受給額・態様・会社の管理体制も考慮されます。会社側としては、加害者側の弁解を安易に有利に扱わないこと、平時からのハラスメント防止研修と管理体制の整備が重要です。懲戒処分の実施は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。ハラスメント・不正行為への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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