労働問題794 経歴詐称を理由として懲戒処分を行う場合のポイントを教えてください。

 経歴詐称とは、採用時に、学歴や職歴、犯罪歴などの経歴を偽ることをいいます。このような経歴詐称は、一般には、使用者と労働者間の信頼関係を壊し、労働力の評価を誤らせ、人事異動等に関する秩序を乱すものであることから、裁判例(スーパーバッグ事件最高裁第一小法廷平成3年9月19日判決)は、詐称された経歴が最終学歴や職歴など、重要なものであることを前提として、経歴詐称の懲戒事由該当性を肯定しています。経歴を詐称したと評価されるのは、労働者が、面接担当者の質問に対し、虚偽の事実を応答した場合や、履歴書に虚偽の事実を記載した場合であり、質問がなかったために自発的に申告しなかった場合は含まれないとした裁判例があります(中央タクシー事件長崎地裁平成12年9月20日判決、学校法人尚美学園事件東京地裁平成24年1月27日判決)。
 中途採用の場合の経歴詐称については、企業では中途採用の場合、当該労働者の職歴及び能力を重視して採用を決めることが多いため、労働者がこれらの点について詐称した場合には、懲戒解雇が有効とされる裁判例もあります(グラバス事件東京地裁平成16年12月17日判決、KIPソリューションズ事件東京地裁平成27年6月2日判決)。
 また、採用の際に視力障害を告げずに重機運転手として雇用されたが、後に視力の減退に伴う車両の運転への支障の発生を理由に解雇されたケースについて、視力障害が具体的に重機運転手としての不適格性をもたらすとは認められない等として解雇を無効とした例もあります(サン石油事件札幌高裁平成18年5月11日判決)。

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