労働問題794 経歴詐称を理由として懲戒処分を行う場合のポイントを教えてください。
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重要な経歴の詐称は、懲戒事由該当性が肯定される 経歴詐称は、使用者と労働者間の信頼関係を壊し、労働力の評価を誤らせるものであることから、詐称された経歴が最終学歴や職歴など重要なものであれば、懲戒事由該当性が肯定されます(スーパーバッグ事件、最高裁平成3年9月19日判決)。 |
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質問への虚偽回答は詐称、聞かれなかった不申告は詐称に含まれない 経歴を詐称したと評価されるのは、面接や履歴書で虚偽の事実を述べた場合であり、質問がなかったために自発的に申告しなかった場合は含まれないとされています。 |
目次
採用選考の過程で、応募者から申告された経歴に虚偽があった場合、会社としてはどこまで厳しく対応できるのでしょうか。経歴詐称を理由とする懲戒処分は、実務上よく問題になるテーマです。
会社側専門の弁護士の立場から、経歴詐称を理由とする懲戒処分のポイントを解説します。
01経歴詐称とは
経歴詐称とは、採用時に、学歴や職歴、犯罪歴などの経歴を偽ることをいいます。このような経歴詐称は、一般には、使用者と労働者間の信頼関係を壊し、労働力の評価を誤らせ、人事異動等に関する秩序を乱すものとされています。
02懲戒事由該当性の基本(スーパーバッグ事件)
裁判例(スーパーバッグ事件、最高裁第一小法廷平成3年9月19日判決)は、詐称された経歴が最終学歴や職歴など、重要なものであることを前提として、経歴詐称の懲戒事由該当性を肯定しています。重要度の低い経歴(趣味や些細な資格等)の詐称であれば、懲戒事由該当性が否定される可能性がある一方、採用の可否に直結するような重要な経歴の詐称であれば、懲戒事由に当たると判断されやすくなります。
03詐称と不申告の違い
経歴を詐称したと評価されるのは、労働者が、面接担当者の質問に対し虚偽の事実を応答した場合や、履歴書に虚偽の事実を記載した場合であり、質問がなかったために自発的に申告しなかった場合は含まれないとした裁判例があります(中央タクシー事件、長崎地裁平成12年9月20日判決、学校法人尚美学園事件、東京地裁平成24年1月27日判決)。つまり、労働者に、聞かれてもいないことまで自ら申告する義務までは、通常課されていないということです。この点は、実務上見落とされやすいポイントであり、質問の仕方が結果を左右します。
04中途採用者の経歴詐称
中途採用の場合の経歴詐称については、企業では中途採用の場合、当該労働者の職歴および能力を重視して採用を決めることが多いため、労働者がこれらの点について詐称した場合には、懲戒解雇が有効とされる裁判例もあります(グラバス事件、東京地裁平成16年12月17日判決、KIPソリューションズ事件、東京地裁平成27年6月2日判決)。新卒採用に比べ、中途採用は職歴・能力の申告に依拠して採否を決めることが多いため、それらの虚偽申告に対する処分が厳格に判断される傾向があります。
05告知義務が否定された例(サン石油事件)
もっとも、あらゆる不告知が問題になるわけではありません。採用の際に視力障害を告げずに重機運転手として雇用されたが、後に視力の減退に伴う車両の運転への支障の発生を理由に解雇されたケースについて、視力障害が具体的に重機運転手としての不適格性をもたらすとは認められない等として、解雇を無効とした例もあります(サン石油事件、札幌高裁平成18年5月11日判決)。この事案は、経歴詐称というよりも、健康状態の不告知に関する判断ですが、告知しなかった事実が具体的に業務遂行への支障をもたらすかどうかが、重要な判断要素であることを示しています。
06会社側が押さえておくべき視点
会社側が経歴詐称による懲戒処分を有効に行うためには、まず、採用面接や履歴書において、重要な経歴事項(最終学歴、職歴、犯罪歴等)を明確に質問・確認しておくことが重要です。質問していなかった事項について、後から「申告しなかったのは詐称だ」と主張しても、認められない可能性が高いためです。
中途採用の場合には、職歴・能力の申告が採否に直結することが多いため、これらの申告内容の裏付け確認(前職への照会、資格証明の確認等)を、採用選考の段階から丁寧に行っておくことをお勧めします。発覚後の対応としては、詐称された経歴の重要性(採否への影響度)を明確に説明できるようにしておくことが、懲戒処分の有効性を確保するために重要です。
07よくある質問(FAQ)
Q. 学歴詐称は、常に懲戒事由になりますか。
詐称された経歴が最終学歴や職歴など重要なものであれば、懲戒事由該当性が肯定されます(スーパーバッグ事件)。重要度の低い経歴の詐称は、扱いが異なる可能性があります。
Q. 面接で聞かれなかったことを自分から言わなかった場合、経歴詐称になりますか。
なりません。経歴詐称と評価されるのは、質問に対して虚偽を答えた場合や、履歴書に虚偽を記載した場合であり、質問がなく自発的に申告しなかった場合は含まれません。
Q. 中途採用者の経歴詐称は、新卒者より厳しく扱われますか。
その傾向があります。中途採用は職歴・能力を重視して採否を決めることが多いため、これらの詐称に対して懲戒解雇が有効とされる裁判例もあります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。経歴詐称への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日