労働問題790 懲戒処分が法的に有効とされるために必要な処分の相当性について、具体的に教えてください。

 懲戒処分が法的に有効とされるためには、懲戒事由の他に、懲戒処分を就業規則に明確に定める必要があります。就業規則に記載されていない懲戒処分を行うことはできず、判例(立川バス事件東京高裁平成13年9月12日判決)でも、就業規則において経歴詐称を理由とする懲戒処分の種類を懲戒解雇・出勤停止・減給・格下げにとどめるものと規定している場合には、懲戒の手段はこれらに限定されてしまい、より軽い譴責処分などであっても、特段の事情がない以上は課すことはできないとしました。
 課される懲戒処分は、労働者の懲戒事由の程度・内容に照らして相当なものである必要があります。いかなる処分を選択するかは使用者の裁量に属することになりますが、使用者がこの裁量判断を誤り、不当に重い処分を選択すれば、権利の濫用として無効となります。問題は、考慮要素は何かということになりますが、懲戒事由とされた行為の態様、動機、業務に及ぼした影響、企業の置かれている状況、損害の程度、労働者の態度、情状、処分歴、行った背景、使用者側の原因等が考慮されます。
 また、懲戒処分は、同種の非違行為に対しては、同等のものでなければならないとされています。つまり、懲戒処分については先例を尊重することが要請されますので、突出した処分は事情の各種変更等、懲戒処分を正当化する事情がない限り、処分の相当性が否定されることになります。
 懲戒事由発生時期と懲戒時期が離れている場合については、例えば、労働者の暴行事件から7年経過した後にされた諭旨退職処分は、処分時点において企業秩序維持の観点からそのような重い懲戒処分を必要とする客観的かつ合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとして是認することはできないとした裁判例があります(ネスレ日本事件最高裁第二小法廷平成18年10月6日判決)。
 また、退職を申し出た労働者に対して懲戒処分を行うことが出来るか否かについては、労働者による合意解約の申込みに対して使用者が承諾をしないのであれば、懲戒処分を行うことはできます。問題は辞職のケースで、民法627条によれば、辞職の意思表示は2週間を経過した日あるいは月給制の場合は賃金計算期間の前半に申し出たときに時期の初日から効力が生ずるため、それまでは労働契約関係が継続し、懲戒処分を行えるのではないかと考えます。ただし、裁判例には、懲戒解雇の約1週間前からその非を認めないまでも自ら退職を申し出ていた労働者に対してなされた解雇を無効としたケースがあります(東洋化研事件東京地裁昭和41年8月25日判決)。

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