労働問題816 秘密保持義務と不正競争防止法の関係を教えてください。
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不正競争防止法は在職中・退職後を問わず秘密保持義務を課す 不正競争防止法は、営業秘密の不正な取得・使用・開示を「不正競争」と規制しており、これにより、労働者は、在職中、退職後を問わず、営業秘密を保持すべき義務を負います。 |
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保護対象となるには3要件を満たす必要がある 不正競争防止法の保護対象となる営業秘密は、①秘密として管理されていること、②有用な営業上・技術上の情報であること、③公然と知られていないことの3要件を満たす必要があります。就業規則・誓約書は①の判断要素になります。 |
目次
815の記事で解説した就業規則・個別合意に基づく秘密保持義務とは別に、不正競争防止法という法律そのものによる保護の仕組みがあります。両者の関係を正確に理解しておくことが、営業秘密の実効的な保護につながります。
会社側専門の弁護士の立場から、秘密保持義務と不正競争防止法の関係を解説します。
01営業秘密という知的財産の特殊性
営業秘密として管理される知的財産の多くは、労働者や技術者の長年の努力と、使用者の多額の投資の集結です。このような知的財産は、事業者の収益を生み出す源としての価値を有しているとともに、一度侵害されると瞬時に拡散してしまいます。また、人的・組織的な管理によらざるを得ないことから、侵害行為の予防には限界があるという性質を内包しています。このような営業秘密は、企業内部における適切な管理と、法律による侵害行為に対する実効的な抑止を通じて保護が図られることが重要です。
02不正競争防止法による保護と救済
不正競争防止法は、営業秘密の不正な取得・使用・開示を「不正競争」と規制しており、これにより、労働者は、在職中、退職後を問わず、営業秘密を保持すべき義務を負います。815の記事で解説した就業規則・個別合意に基づく義務とは異なり、法律上当然に生じる義務であることが特徴です。
労働者が不正競争を行った場合、使用者は、差止め、損害賠償、侵害行為を組成した物の廃棄、侵害行為に供した設備の除去、信用回復措置を請求することができます。また、営業秘密侵害罪に該当する場合は、刑事罰が科されることも考えられます。811・812の記事で解説した契約・不法行為に基づく請求と比べ、不正競争防止法に基づく請求は、より多様な救済手段が用意されている点が特徴です。
03営業秘密の3要件
不正競争防止法は、営業秘密を「秘密として管理されている生産方法、販売方法、その他事業活動に有用な技術上、又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定義しており、次の3つの要件を満たす情報を保護の対象としています。
04就業規則・誓約書と秘密管理性の関係
労務管理との関係では、就業規則の規定や個別合意による秘密保持義務の設定を、①の秘密管理性を肯定する判断要素としている裁判例があります。たとえば、秘密保持を内容とする就業規則の規定および誓約書を、事業者が対象情報を秘密として管理していた態勢の一つとして認定した裁判例(東京地裁平成11年7月23日判決)があります。また、従業員を引き抜いて独立する動きがある特殊な状況下で情報を知り得る立場にある従業員全員に秘密保持を内容とする誓約書を作成させたことにより、秘密管理性を認めた裁判例(大阪高裁平成20年7月18日判決)もあります。
このように、就業規則・誓約書の整備は、単に労働契約上の義務を根拠づけるだけでなく、不正競争防止法上の営業秘密該当性(秘密管理性)を裏付ける重要な証拠としても機能します。
05会社側が押さえておくべき視点
会社側が営業秘密を実効的に保護するには、単に「重要な情報がある」というだけでは足りず、不正競争防止法の3要件、特に秘密管理性を満たすための具体的な管理措置が必要です。パスワードによるアクセス制限、「マル秘」表示、アクセスログの記録に加え、就業規則・秘密保持誓約書の整備が、秘密管理性を客観的に裏付ける重要な要素になります。
815の記事で解説した契約上の秘密保持義務と、本稿の不正競争防止法上の保護は、重なり合いつつも別個の根拠です。契約上の義務は柔軟に設計できる反面、労働契約という限られた当事者間でしか主張できないのに対し、不正競争防止法上の保護は、法律上の権利として、より広範な救済(差止め、信用回復措置等)を可能にします。両方の保護を実効的に機能させるためには、就業規則・誓約書の整備と、実際の秘密管理体制の両輪が必要です。
06よくある質問(FAQ)
Q. 就業規則に秘密保持義務の規定がなくても、不正競争防止法で保護されますか。
保護される可能性があります。不正競争防止法上の義務は法律上当然に生じますが、営業秘密として保護されるには秘密管理性等の3要件を満たす必要があり、就業規則・誓約書の存在はこの立証に役立ちます。
Q. 不正競争防止法に基づく請求と、就業規則違反に基づく請求は、どちらが有利ですか。
不正競争防止法に基づく請求は、差止めや信用回復措置等、より多様な救済手段が用意されている点で有利ですが、営業秘密の3要件を満たす必要があります。両方の根拠を併用することが望ましい場合もあります。
Q. 秘密管理性を認めてもらうには、どうすればよいですか。
パスワード制限、「マル秘」表示等の物理的・技術的措置に加え、秘密保持を内容とする就業規則や誓約書の整備が、秘密管理性を肯定する判断要素として活用されています。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。営業秘密の保護体制の整備でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日