労働問題802 会社の解散・倒産に伴う整理解雇についても4要素を充たさなければなりませんか。

この記事の結論
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会社解散・清算型倒産では、4要素の適用に裁判例のばらつきがある

会社解散・清算型倒産手続に伴う整理解雇には、必ずしも整理解雇の4要素がそのまま適用されるわけではなく、企業廃止の自由から解雇を有効とする裁判例と、整理解雇の要件を適用して権利濫用を認める裁判例が併存しています。

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再建型倒産手続では、整理解雇の法理がそのまま適用される

企業が解散せず存続再建される再建型倒産手続では、整理解雇の法理がそのまま適用されるのが裁判例の傾向です(日本航空事件、東京地裁平成24年3月29日判決等)。

 会社の解散や倒産に伴う人員削減は、通常の整理解雇とは異なる考慮が必要になる場面です。801の記事で解説した4要素が、そのまま適用されるとは限りません。

 会社側専門の弁護士の立場から、会社解散・倒産に伴う整理解雇の考え方を解説します。

01解散・清算型倒産に伴う整理解雇の考え方

 会社解散および清算型倒産手続に伴って整理解雇を行う場合、必ずしも、整理解雇の法理(①整理解雇の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続の相当性)が適用されるわけではありません。会社そのものが消滅する場面では、通常の整理解雇とは前提が異なるためです。

02裁判例の3つの立場

 このような解雇の有効性をめぐっては、裁判例が乱立しています。第一に、職業選択の自由や財産権の保障を根拠とする企業廃止の自由を理由として、解散が適法・有効に行われる限り、解散を理由とする解雇は有効とする裁判例(大陸運事件、大阪高裁平成15年11月13日判決等)です。第二に、会社の解散と解雇は無関係として、解雇について整理解雇の要件を適用するなどして解雇権濫用を認めた裁判例(静岡フジカラーほか2社事件、静岡地裁平成16年5月20日判決)です。第三に、整理解雇の要件を修正した基準による裁判例(グリン製菓事件、大阪地裁平成10年7月7日判決等)です。

 一般的には、解散に伴う解雇を当然に有効と認めるよりは、労使交渉等の手続の相当性も考慮して解雇の有効性を判断する傾向にあると考えられます。「解散するから自動的に解雇が有効になる」という単純な理解は、実務上のリスクを伴います。

03再建型倒産手続における整理解雇(日本航空事件)

 他方、再建型倒産手続は、企業が解散せず存続再建されるため、整理解雇の法理がそのまま適用されるというのが裁判例の傾向です。会社更生手続下での整理解雇が初めて争われた日本航空事件(東京地裁平成24年3月29日判決等)では、管財人による整理解雇には労働契約法16条の適用があり、4要素をもって解雇権濫用の有無を判断するとしつつも、合理的な会社更生案に則って行われた整理解雇で、人選にも不合理な点がないことから、その後の業績の急回復、新規従業員の採用という事実があったとしても整理解雇は有効だと判断しました。

 この判例は、更生管財人が行う整理解雇であっても、通常の整理解雇と同じ4要素による判断枠組みが用いられること、そして、解雇後に業績が回復したという事後的な事情だけでは、解雇当時の判断が誤っていたことにはならないことを示した点で、実務上重要な意味を持ちます。

04会社側が押さえておくべき視点

 会社解散や倒産に直面した会社としては、まず、清算型(会社解散、破産等、会社が消滅する手続)と再建型(会社更生、民事再生等、会社が存続する手続)のどちらの倒産手続に該当するかを正確に把握することが重要です。再建型であれば、通常の整理解雇と同様、4要素を意識した準備が必要です。

 清算型の場合であっても、裁判例が「解散すれば当然に解雇が有効」という単純な立場をとっていない以上、労使交渉等の手続の相当性については、可能な限り誠実に対応しておくことが望ましいといえます。特に、解散の意思決定過程や、従業員への説明のタイミング・内容については、後の紛争を見据えて記録を残しておくことが重要です。

05よくある質問(FAQ)

Q. 会社を解散すれば、従業員を自由に解雇できますか。

当然には自由に解雇できるとは限りません。企業廃止の自由から解雇を有効とする裁判例がある一方、整理解雇の要件を適用して解雇権濫用を認めた裁判例もあり、実務上は労使交渉の相当性も踏まえた慎重な対応が必要です。

Q. 会社更生手続中の整理解雇には、通常の整理解雇と同じ基準が使われますか。

はい。再建型倒産手続では、整理解雇の法理がそのまま適用される傾向にあります。管財人による整理解雇にも労働契約法16条が適用され、4要素で判断されます(日本航空事件)。

Q. 整理解雇後に業績が回復した場合、解雇は無効になりますか。

当然には無効になりません。合理的な更生案に則り人選にも不合理な点がなければ、その後の業績回復や新規採用があっても整理解雇は有効と判断された例があります(日本航空事件)。

経営上のポイント 会社解散・清算型倒産手続に伴う整理解雇には、必ずしも整理解雇の4要素がそのまま適用されるわけではなく、企業廃止の自由から解雇を有効とする裁判例、整理解雇の要件を適用する裁判例、修正した基準による裁判例が併存しています。一般的には、解散に伴う解雇を当然に有効と認めるよりは、労使交渉等の手続の相当性も考慮して判断する傾向にあります。他方、再建型倒産手続(会社更生・民事再生等)では、企業が存続する以上、整理解雇の法理がそのまま適用されるのが裁判例の傾向です(日本航空事件、東京地裁平成24年3月29日)。合理的な更生案に則り人選に不合理な点がなければ、事後の業績回復があっても解雇は有効とされます。会社側としては、清算型か再建型かを正確に把握し、清算型でも手続の相当性に配慮した対応が重要です。整理解雇の実施は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。会社解散・倒産時の整理解雇でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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