労働問題807 希望退職募集制度とはどういうものですか。
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退職優遇条件を提示して退職希望者を募る制度 希望退職募集制度とは、労働者に対し、退職優遇条件を提示して退職希望者を募集する制度です。労働者は退職を迫られるわけではなく、優遇条件・利害得失を検討して退職するか否かを判断することが前提となります。 |
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制度内容は原則として使用者の広範な裁量で決定できる 募集要項の内容は、法律、労働協約による制限や公序良俗に違反しない限り、原則として使用者の広範な裁量により自由に決定することができます。承諾要件を設定することも、退職の自由を制限するものではなく問題ありません。 |
801の記事で解説した整理解雇の解雇回避努力の一環として、多くの会社が希望退職募集制度を活用しています。この制度を適切に設計・運用するには、法的な位置づけを正確に理解しておく必要があります。
会社側専門の弁護士の立場から、希望退職募集制度の基本的な仕組みを解説します。
01希望退職募集制度とは
希望退職募集制度とは、労働者に対し、退職優遇条件を提示して退職希望者を募集する制度です。リストラの一環として行われることが多いですが、労働者は退職を迫られるわけではなく、従来どおり勤務を継続できる状況のもと、優遇条件、利害得失を十分に検討し、退職するか否かを判断することが前提となります。この点で、805の記事で解説した退職勧奨とは異なり、制度として広く募集をかける形式をとります。
02募集要項に定める項目
希望退職制度では、募集要項が定められ労働者に告知されるのが通例です。募集要項に定められる項目には、①募集人数、②適用対象者、③退職条件、④募集期間、⑤応募手続、⑥適用条件などがあります。あくまでも労働者の自由な意思に基づく退職を募集するものであるため、その内容は、法律、労働協約などによる制限や公序良俗に違反するものでない限り、原則として使用者の広範な裁量により自由に決定することができます。
退職条件で多いのは退職割増金の給付ですが、他にも、一定期間の年金の給付や再就職支援活動等、様々な条件を設定することができます。
03承諾要件の設定
また、使用者が、希望退職してほしくない労働者を選別する目的から、募集要件や応募に対する承諾要件を設定することがあります。承諾要件とは、労働者が希望退職募集に応じて応募した場合であっても、使用者が承諾しない限り、当該労働者は希望退職制度の適用を受けることができず、同制度で定められた優遇条件での退職はできないというものです。
このような承諾要件は、労働者の退職の自由を制限するものではありませんので、設定することに問題はありません。労働者は、承諾要件により希望退職制度の適用を拒否されたとしても、通常の辞職(803の記事参照)という形で退職すること自体は可能だからです。
04制度実施時の説明義務の範囲
なお、希望退職募集制度の実施に際して、制度実施の背景事情などを説明することが望ましいですが、裁判所は、業務状況の詳細や、再建計画実施後の将来の見通しについて具体的根拠を示して説明する義務はないと述べています(東邦生命保険事件、東京地裁平成17年11月2日判決)。会社の内部情報をどこまで開示するかについては、一定の裁量が認められているということです。
05会社側が押さえておくべき視点
会社側が希望退職募集制度を設計する際には、801の記事で解説したとおり、解雇回避努力として認められるための十分な制度とすることが重要です。金銭的に退職を希望させるだけの魅力的な条件、十分な考慮期間、募集人員の明示などを検討する必要があります。
承諾要件を設定する場合には、その基準を恣意的にならないよう明確にしておくことが望ましいといえます。また、制度実施の背景事情の説明は義務ではないものの、労使関係の円滑化や後の紛争予防の観点から、可能な範囲で誠実に行っておくことをお勧めします。
06よくある質問(FAQ)
Q. 希望退職募集の条件(退職金の割増額等)は、会社が自由に決めてよいですか。
法律、労働協約による制限や公序良俗に違反しない限り、原則として使用者の広範な裁量により自由に決定できます。
Q. 特定の労働者に希望退職に応じてほしくない場合、応募を拒否できますか。
承諾要件を設定していれば、会社が承諾しない限り希望退職制度の優遇条件は適用されません。この承諾要件は労働者の退職の自由を制限するものではなく、問題なく設定できます。
Q. 希望退職募集の際、会社の業績詳細まで説明する義務がありますか。
義務はないとされています。業務状況の詳細や再建計画後の見通しについて具体的根拠を示して説明する義務はないとした裁判例があります(東邦生命保険事件)。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。希望退職制度の設計でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日