労働問題797 情報漏洩、兼業、競業行為を理由として懲戒処分を行う場合のポイントを教えてください。
1.情報漏洩
企業情報等の漏洩は、企業秩序を現実に侵害する場合は懲戒事由となります。例えば、新聞記者が個人用ホームページに業務上知り得た事実や体験談を掲載したことが、新聞社における職務と密接に関連し、取材源秘匿との会社方針に反する行為であった等として、出勤停止処分が有効とされた裁判例があります(日本経済新聞社事件東京地裁平成14年3月25日判決)。近年では、SNSに企業情報の漏洩などを行い、これがインターネット上で炎上し、企業秩序を侵害するケースもありました。SNSで企業情報の漏洩等があれば懲戒処分は可能と考えられますが、プライベートな投稿が炎上した場合には、投稿の内容、企業秩序に与える影響等を考慮して、懲戒処分の可否が検討されることになると考えます。
2.兼業
兼業により労務の提供が不能又は不完全になるような事態が生じたり、企業秘密が漏洩したりするような事態が生ずる場合などについては、就業規則で兼業を禁止することができます。懲戒処分に関する事案ではありませんが、労働者の兼業の申出を不許可としたことが違法とされた裁判例もあります(マンナ運輸事件東京地裁平成24年7月13日判決)。
また、傷病休職期間中に、休職給を支給されながら、無許可でオートバイク販売店を開業した事案について、休職給を受け取りながら自営業を営むことが職場秩序を乱す等として懲戒解雇を有効とした裁判例もあります(ジャムコ立川工場事件東京地裁八王子支部平成17年3月16日判決)。
3.競業行為
競業行為は、会社の利益を害する可能性が高いため、兼業と比べ、企業秩序に与える影響は大きく、厳格な懲戒処分が有効と判断される余地があると考えます。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
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