労働問題797 情報漏洩、兼業、競業行為を理由として懲戒処分を行う場合のポイントを教えてください。
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企業情報の漏洩は、企業秩序を現実に侵害する場合に懲戒事由となる 業務上知り得た情報を、職務と密接に関連する形で外部に発信する行為は懲戒事由となり得ます。SNSでの漏洩がインターネット上で炎上し、企業秩序を侵害するケースも増えています。 |
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兼業は労務支障や秘密漏洩のおそれがあれば禁止でき、競業行為はより厳格 兼業により労務提供が不能・不完全になる、企業秘密が漏洩するといった事態が生じ得る場合は就業規則で禁止できます。競業行為は会社の利益を害する可能性が高く、より厳格な懲戒処分が有効と判断されやすい傾向にあります。 |
目次
情報化・SNS時代において、従業員による情報の取扱いや副業・兼業への対応は、多くの会社にとって身近な課題となっています。それぞれの類型で、どのような場合に懲戒処分が可能なのかを整理しておく必要があります。
会社側専門の弁護士の立場から、情報漏洩・兼業・競業行為を理由とする懲戒処分のポイントを解説します。
01情報漏洩を理由とする懲戒処分
企業情報等の漏洩は、企業秩序を現実に侵害する場合は懲戒事由となります。たとえば、新聞記者が個人用ホームページに業務上知り得た事実や体験談を掲載したことが、新聞社における職務と密接に関連し、取材源秘匿との会社方針に反する行為であった等として、出勤停止処分が有効とされた裁判例があります(日本経済新聞社事件、東京地裁平成14年3月25日判決)。
02SNSによる漏洩・炎上への対応
近年では、SNSに企業情報の漏洩などを行い、これがインターネット上で炎上し、企業秩序を侵害するケースもありました。SNSで企業情報の漏洩等があれば懲戒処分は可能と考えられますが、プライベートな投稿が炎上した場合には、投稿の内容、企業秩序に与える影響等を考慮して、懲戒処分の可否が検討されることになると考えられます。私的な投稿であっても、内容や炎上の規模によっては、企業秩序への現実の侵害と評価される可能性があるため、一律に「プライベートだから対象外」とはいえない点に注意が必要です。
03兼業を理由とする懲戒処分
兼業により労務の提供が不能または不完全になるような事態が生じたり、企業秘密が漏洩したりするような事態が生ずる場合などについては、就業規則で兼業を禁止することができます。もっとも、懲戒処分に関する事案ではありませんが、労働者の兼業の申出を不許可としたことが違法とされた裁判例もあります(マンナ運輸事件、東京地裁平成24年7月13日判決)。兼業を一律に禁止することが常に許容されるわけではなく、具体的な支障の有無を踏まえた判断が求められます。
また、傷病休職期間中に、休職給を支給されながら、無許可でオートバイク販売店を開業した事案について、休職給を受け取りながら自営業を営むことが職場秩序を乱す等として、懲戒解雇を有効とした裁判例もあります(ジャムコ立川工場事件、東京地裁八王子支部平成17年3月16日判決)。休職中の兼業は、通常の在職中の兼業とは異なる評価を受けやすい点にも留意が必要です。
04競業行為を理由とする懲戒処分
競業行為は、会社の利益を害する可能性が高いため、兼業と比べ、企業秩序に与える影響は大きく、厳格な懲戒処分が有効と判断される余地があると考えられます。単なる副業としての兼業と、同業他社での就労や自ら競合事業を行うといった競業行為とでは、会社側にとっての深刻さが大きく異なるため、両者を明確に区別して規程を整備しておくことが重要です。
05会社側が押さえておくべき視点
情報漏洩については、就業規則やSNS利用ガイドラインで、業務上知り得た情報の取扱いに関するルールを明確にしておくことが重要です。兼業については、近年の働き方改革の流れも踏まえ、一律禁止ではなく、労務提供への支障や秘密漏洩のリスクを個別に審査する仕組みを整備することが望ましいといえます。競業行為については、兼業とは別に、より厳格な禁止規定と処分基準を設けておくことをお勧めします。
06よくある質問(FAQ)
Q. 従業員のプライベートなSNS投稿が炎上した場合、懲戒処分できますか。
投稿の内容や企業秩序に与える影響を考慮して判断されます。単に炎上したというだけでなく、企業情報の漏洩等の要素があれば、懲戒処分の対象になり得ます。
Q. 就業規則で兼業を一律禁止することはできますか。
労務提供への支障や企業秘密漏洩のおそれがある場合には禁止できますが、これらの支障がないのに不許可とすることは違法とされた例があります。個別の審査が望ましいといえます。
Q. 兼業と競業行為は、同じように扱ってよいですか。
同じようには扱えません。競業行為は会社の利益を害する可能性が高いため、兼業よりも企業秩序に与える影響が大きく、より厳格な処分が有効と判断されやすい傾向にあります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。情報漏洩・兼業・競業行為への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日