労働問題998 偽装請負とはどういうものですか?
1. 偽装請負の定義
「偽装請負」とは、形式的には業務請負処理契約の形を取っているが、実質的には、次の4要件を満たしていないため、労働者供給又は労働者派遣の実態を有していることをいいます。
2. 偽装請負の要件
① 作業の完成について事業主としての財政上及び法律上のすべての責任を負うものであること
② 作業に従事する労働者を指揮監督するものであること
③ 作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定されたすべての義務を負うものであること
④ 自ら提供する機械、設備、機材、もしくはその作業に必要な材料、資材を使用し又は企画もしくは専門的な技術もしくは専門的な経験を必要とする作業を行うものであり、単なる肉体的な労働力を提供するものでないこと
3. 労働者供給事業の禁止
労働者供給事業は、労働の強制や中間搾取などの弊害が伴うことが多いことから、職安44条により全面的に禁止されており、厚生労働大臣の許可を受けた場合のみ、無料で事業を行うことができるとされています。このような全面的に禁止されている労働者供給契約と適法な業務処理請負契約の区別は、上記4要件を満たさない業務処理請負契約、及びこれらの4要件を満たしたとしても労働者供給事業の禁止を潜脱するため故意に偽装されたものであり、その事業の真の目的が労働力の供給にある場合は、業務処理委託契約ではなく、労働者供給事業を行う者として取り扱うとされています。
4. 業務処理請負の基準
昭和61年4月17日労働省告示第37号は、業務処理請負というためには、
① 自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること
② 請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること
との基準を示しています。
①について、具体的には、業務の遂行及び労働時間の管理を自ら行うこと、②については、業務処理に要する資金を自ら調達すること、法律に規定された事業主としての責任を全て負うことを挙げています。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
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