労働問題94 会社に無断でアルバイトした社員を解雇することができますか。

この記事の要点

無断アルバイトを理由とする解雇は難しい事案が多く、慎重な検討が必要です。就業規則の兼業禁止規定が前提であり、業務への支障・名誉信用毀損・競業等の事情が必要です。まず注意指導・懲戒処分が先決です。

就業時間外の行動は自由が原則であるため、処分するには就業規則の兼業禁止規定への違反と、業務への具体的な支障等の事情が必要です。解雇は紛争になりやすく、段階的対応が求められます。

前提:就業規則に兼業禁止規定が必要

就業時間外の行動は自由が原則。兼業を禁止するためには就業規則に兼業禁止を定めて労働契約の内容にしておく必要があります。


処分に必要な事情:業務への支障・名誉信用毀損・競業のいずれか

業務遂行への支障、会社の名誉・信用等を害する行為、競業他社での兼業、といった事情が処分の要件となります。


対応手順:注意指導→書面指導→懲戒処分→解雇(慎重に)

解雇は難しい事案が多く紛争になりやすい。口頭注意→書面指導→懲戒処分という段階を経た上で、解雇の有効性を慎重に検討します。

1. 前提:就業規則の兼業禁止規定が必要

就業時間外の行動は自由が原則

 就業時間外の行動は自由なのが原則のため、社員の兼業を禁止するためには、就業規則に兼業禁止を定めて、兼業禁止を労働契約の内容にしておく必要があります。就業規則に兼業禁止の規定がなければ、そもそも兼業を理由として処分することは困難です。

 兼業(副業・アルバイト)は、2018年以降の政府の副業・兼業推進方針もあり、社会的に容認される方向性にあります。就業規則に兼業禁止規定がある場合でも、その規定の有効性・適用範囲について争われる可能性があることに注意が必要です。

2. 処分に必要な事情

3つの事情のいずれかが必要

 就業規則に兼業禁止規定があることを前提として、何らかの処分をするためには、次のような事情が必要となります。

 ①業務遂行への支障:兼業により十分な休養が取れないなどして本来の業務遂行に支障を来す場合。兼業による疲労・睡眠不足等が本業の業務に悪影響を及ぼしている具体的な事実が必要です。

 ②会社の名誉・信用等を害する行為:アルバイトの内容・態様が会社の名誉や信用を害するような場合。例えば、会社の社会的評価を著しく低下させるような業態でのアルバイト等。

 ③競業他社での兼業:競業他社でアルバイトをしている場合。会社の営業秘密・顧客情報等が漏洩するリスクがあり、競業避止義務違反の観点からも問題となります。

上記の事情がない場合は処分が困難

 上記①〜③のいずれの事情もなく、単に就業規則の兼業禁止規定に違反して無断でアルバイトをしているというだけでは、解雇はもちろん、重い懲戒処分も困難なケースが多いです。副業・兼業推進の社会的な流れの中では、軽微な違反として注意指導にとどまることが相当と判断される可能性があります。

✕ よくある経営者の誤解

「就業規則に兼業禁止と書いてあるから、無断アルバイトが発覚したら即解雇できる」→ 原則として誤りです。
就業規則の兼業禁止規定への違反だけで即解雇することは、解雇権濫用として無効となる可能性が高いです。業務への支障・名誉信用毀損・競業等の具体的事情がなければ、解雇は困難です。

「就業規則がないが、無断アルバイトは常識的にダメだから処分できる」→ 誤りです。
就業規則に兼業禁止の規定がなければ、兼業を理由とした処分は法的根拠を欠きます。まず就業規則に兼業禁止規定を整備することが必要です。

3. 実務上の対応手順

段階的な対応が基本

 企業秩序を乱すようなアルバイトを辞めるよう注意指導しても辞めようとしない場合は、書面で注意指導し、それでも改善しない場合は懲戒処分を検討することになります。

 解雇までは難しい事案が多く、紛争になりやすいので、解雇に踏み切る場合は、その有効性について慎重に検討する必要があります。具体的には、①就業規則の兼業禁止規定の有効性・適用範囲、②業務への支障・名誉信用毀損・競業等の具体的事情の有無、③注意指導・懲戒処分の積み重ねの有無、④解雇の相当性、を弁護士と十分に検討した上で判断することが必要です。

 無断アルバイト社員への対応方針・就業規則の兼業禁止規定の整備・処分の有効性評価について、弁護士へのご相談をお勧めします。→ 経営労働相談はこちら

4. まとめ

 無断アルバイトを理由とする解雇は難しい事案が多く紛争になりやすいため、慎重な検討が必要です。まず、兼業禁止を定めた就業規則の規定が前提となります。次に、業務遂行への支障・会社の名誉信用毀損・競業他社での兼業のいずれかの事情が処分の要件となります。対応手順としては、口頭注意→書面指導→懲戒処分という段階を踏んだ上で、解雇の有効性を弁護士と十分に検討することが必要です。また、就業規則に兼業禁止規定がない場合は、まず規定の整備が先決です。具体的な対応については早めに弁護士に相談することをお勧めします。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

 

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最終更新日 2026/04/05

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