労働問題92 勤務態度が悪い問題社員を解雇する際に考慮すべき点を教えて下さい。
勤務態度の悪さの程度が甚だしく、十分に注意指導し、懲戒処分に処しても勤務態度の悪さが改まらず、改善の見込みが低い問題社員には、退職勧奨と平行して普通解雇や懲戒解雇を検討することになります。
普通解雇や懲戒解雇が有効となるかどうかを判断するにあたっては、
① 就業規則の普通解雇事由、懲戒解雇事由に該当するか
② 解雇権濫用(労契法16条)や懲戒権濫用(労契法15条)に当たらないか
③ 解雇予告義務(労基法20条)を遵守しているか
④ 解雇が法律上制限されている場合に該当しないか
等を検討する必要があります。
普通解雇や懲戒解雇が有効となるためには、単に①就業規則の普通解雇事由や懲戒解雇事由に該当するだけでなく、②解雇権濫用や懲戒権濫用に当たらないことも必要となります。②解雇権濫用や懲戒権濫用に当たらないというためには、普通解雇や懲戒解雇に客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当なものである必要があります。
普通解雇や懲戒解雇に「客観的に」合理的な理由があるというためには、「裁判官」が、労働契約を終了させなければならないほど社員の勤務態度の悪さの程度が甚だしく、業務の遂行や企業秩序の維持に重大な支障が生じていると判断するに値する「証拠」が必要です。会社経営者、上司、同僚、部下、取引先などが、主観的に普通解雇や懲戒解雇に値すると考えただけでは足りません。
勤務態度が悪い社員の普通解雇や懲戒解雇が②解雇権濫用や懲戒権濫用に当たらないかを判断するにあたっては、勤務態度の悪さが業務に与える悪影響の程度、態様、頻度、過失によるものか悪意・故意によるものか、勤務態度が悪い理由、謝罪・反省の有無、勤務態度の悪さを是正するために会社が講じていた措置の有無・内容、平素の勤務成績、他の社員に対する処分内容・過去の事例との均衡等が考慮されます。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎