労働問題92 勤務態度が悪い問題社員を解雇する際に考慮すべき点を教えて下さい。

この記事の要点

勤務態度不良を理由とした解雇は、就業規則の解雇事由に該当するだけでなく、客観的合理的理由と社会通念上の相当性を「証拠」で示せることが必要です。主観的判断では足りません。

普通解雇・懲戒解雇の有効性は①就業規則の解雇事由該当性、②解雇権・懲戒権濫用に当たらないこと、③解雇予告義務の遵守、④法律上の解雇制限に該当しないことを確認することが必要です。解雇権・懲戒権濫用の判断では多数の考慮要素があります。

解雇有効性の4要件:①解雇事由該当・②濫用非該当・③解雇予告・④制限非該当

勤務態度不良解雇の有効性は4つの要件をすべて満たす必要があります。特に②客観的合理的理由と社会通念上の相当性が重要です。


「客観的に合理的」の意味:裁判官が証拠で判断できること

経営者や上司の主観的判断では足りません。裁判官が証拠に基づいて「解雇に値する」と判断できることが必要です。


濫用判断の考慮要素:悪影響の程度・態様・是正措置・均衡等

勤務態度の業務への悪影響・故意/過失の別・謝罪反省の有無・会社の是正措置・他の処分との均衡等が総合的に考慮されます。

1. 勤務態度不良解雇の前提——退職勧奨との並行検討

注意指導・懲戒処分を尽くした上で解雇を検討

 勤務態度の悪さの程度が甚だしく、十分に注意指導し、懲戒処分に処しても勤務態度の悪さが改まらず、改善の見込みが低い問題社員には、退職勧奨と並行して普通解雇や懲戒解雇を検討することになります。

2. 解雇有効性判断の4要件

①就業規則の解雇事由に該当するか

 普通解雇・懲戒解雇が有効となるためには、まず就業規則の普通解雇事由または懲戒解雇事由に該当することが必要です。就業規則に解雇事由の定めがない場合、特に懲戒解雇については原則として行うことができません。

②解雇権濫用・懲戒権濫用に当たらないか

 就業規則の解雇事由に該当するだけでなく、解雇権濫用(労契法16条)や懲戒権濫用(労契法15条)に当たらないことも必要です。これらの濫用に当たらないためには、普通解雇・懲戒解雇に客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当なものである必要があります。

 「客観的に」合理的な理由があるというためには、「裁判官」が、労働契約を終了させなければならないほど社員の勤務態度の悪さの程度が甚だしく、業務の遂行や企業秩序の維持に重大な支障が生じていると判断するに値する「証拠」が必要です。会社経営者、上司、同僚、部下、取引先などが、主観的に普通解雇・懲戒解雇に値すると考えただけでは足りません。

③解雇予告義務(労基法20条)を遵守しているか

 少なくとも30日前に解雇予告をするか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります(労基法20条)。懲戒解雇の場合でも、解雇予告除外認定(労基法20条1項但書)を受けない限り、解雇予告または解雇予告手当の支払が必要です。

④解雇が法律上制限されている場合に該当しないか

 業務上の負傷・疾病による療養中の解雇禁止(労基法19条)、妊娠・出産等を理由とする解雇禁止(男女雇用機会均等法9条)、育児・介護休業中の解雇禁止、労基署への申告を理由とする解雇禁止(労基法104条2項)等に該当しないかを確認する必要があります。

3. 解雇権濫用・懲戒権濫用の判断で考慮される要素

具体的な考慮要素

 勤務態度が悪い社員の普通解雇・懲戒解雇が解雇権濫用・懲戒権濫用に当たらないかを判断するにあたっては、次の要素が考慮されます。

 ①悪影響の程度・態様・頻度:勤務態度の悪さが業務に与える悪影響の程度・態様・頻度。業務に重大な支障が生じているかどうかが重要です。

 ②過失か悪意・故意か:過失によるものか悪意・故意によるものか。悪意・故意による場合は、解雇の相当性が認められやすくなります。

 ③勤務態度が悪い理由:健康上の問題・職場環境の問題等が背景にある場合は、単純な問題行動とは評価が異なる可能性があります。

 ④謝罪・反省の有無:謝罪・反省があるかどうか。謝罪・反省がある場合は解雇の相当性が認められにくくなることがあります。

 ⑤会社が講じていた是正措置の有無・内容:注意指導・懲戒処分等の是正措置を適切に講じていたかどうか。是正措置を講じていない場合は相当性が否定されやすくなります。

 ⑥平素の勤務成績:通常の業務においての勤務成績。全体的には良好な社員の偶発的な問題行動と、慢性的に問題がある社員とでは評価が異なります。

 ⑦他の社員に対する処分内容・過去の事例との均衡:類似の事案で他の社員にどのような処分がされてきたか。均衡を欠く場合は相当性が否定されやすくなります。

 勤務態度不良社員の解雇の有効性評価・考慮要素の確認・解雇前の証拠整備について、弁護士へのご相談をお勧めします。→ 経営労働相談はこちら

4. まとめ

 勤務態度が悪い問題社員の普通解雇・懲戒解雇の有効性は、①就業規則の解雇事由への該当性、②解雇権濫用・懲戒権濫用に当たらないこと(客観的合理的理由+社会通念上の相当性)、③解雇予告義務の遵守、④法律上の解雇制限への非該当を確認することが必要です。特に②の「客観的合理的理由」は裁判官が証拠で判断できることを意味し、経営者の主観的判断では足りません。濫用の判断では業務への悪影響・故意/過失・謝罪反省・是正措置・均衡等の多数の要素が考慮されます。解雇を検討する際は早期に弁護士に相談することが最善策です。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

 

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最終更新日 2026/04/05

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