労働問題140 精神疾患を発症した社員が長期間にわたって所定労働時間の勤務さえできない場合は、どのように対応すればいいですか?


この記事の要点

長期間にわたって所定労働時間の勤務さえできない場合は、①就業規則に私傷病休職制度がある場合は休職命令を、②休職制度がない場合は普通解雇を検討します。ただし解雇は最終手段であり、休職制度の整備と段階的な対応が会社側のリスク管理上重要です。

1. 長期欠勤・就労不能の段階での対応の基本方針

 精神疾患を発症した社員が、業務量の軽減や時間外労働の免除などの配慮措置を取っても、長期間にわたって所定労働時間の勤務さえできない状態になった場合は、就労継続の枠組みから外れた対応を検討することになります。

 基本的な対応の分岐は、就業規則に私傷病に関する休職制度があるかどうかによって異なります。

2. 私傷病休職制度がある場合——休職命令

 就業規則に私傷病休職制度がある場合は、休職命令を発令します。休職制度は「精神疾患等の私傷病を理由として直ちに解雇するのではなく、一定期間の休養の機会を与えた上で復職を可能にする」趣旨の制度です。

休職命令発令の際の実務上の注意点

 ①医師の診断書の取得:休職命令を発令する前に、社員に医師の診断書(傷病名・就労可否・休養が必要な期間等)を提出させます。②休職期間・休職中の給与・社会保険・復職条件を明確に通知:口頭ではなく書面で通知します。③休職期間中も定期的な状況確認を行う:月1回程度、本人や主治医から状況報告を受ける仕組みを設けます(産業医を通じた情報収集が有効)。④復職判断は主治医の意見だけでなく産業医の意見も踏まえて行う:主治医が「復職可能」と言っても、実際の職場環境に戻れるかどうかは産業医・会社が判断します。

休職期間満了時の対応

 就業規則所定の休職期間が満了しても復職できない場合は、就業規則の規定に基づいて自動退職または解雇の扱いとなります。この場合、就業規則に「休職期間満了時に復職できない場合は自動退職とする」旨の規定があれば自動退職の扱いができます。規定がなければ普通解雇の手続きを取ることになりますが、いずれも法的判断を要するため、弁護士への相談が必要です。

3. 私傷病休職制度がない場合——普通解雇の検討

 就業規則に私傷病休職制度がない場合は、普通解雇を検討することになります。ただし、精神疾患を理由とした解雇は解雇権濫用(労働契約法16条)として無効と判断されるリスクが高く、慎重な対応が必要です。

 普通解雇が有効と認められるためには、①当該精神疾患が業務に起因しないこと(業務起因性がないこと)、②相当期間の療養機会を与えても就労不能の状態が続いていること、③解雇に先立って配置転換等の可能性を検討していること、などの事情が必要とされます。これらの要件を満たすかどうかは個別の事案によって異なるため、解雇を検討する段階で必ず弁護士に相談することが不可欠です。

⚠ 精神疾患を理由とした解雇の危険性

特に業務に起因して精神疾患が発症した可能性がある場合(長時間労働・パワハラ等が背景にある場合)は、使用者に安全配慮義務違反・不法行為責任が問われるリスクがあります。そのような状況で解雇すると、解雇無効+損害賠償という最悪のシナリオになりかねません。精神疾患社員への対応は、早期に弁護士に相談することを強くお勧めします。

 精神疾患社員への休職命令・解雇の可否・休職制度の整備について、弁護士へのご相談をお勧めします。→ 経営労働相談はこちら

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弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

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最終更新日 2026/04/10

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