労働問題63 有期契約労働者を契約期間満了前に普通解雇することはできますか?

この記事の要点

「やむを得ない事由」があれば契約期間途中でも解雇できますが、正社員よりも厳格な基準です。合意退職の追求か契約期間満了日での雇い止めを優先することをお勧めします。

民法628条により、有期契約労働者も「やむを得ない事由」があれば契約期間満了前に解雇できます。ただしこの基準は正社員の解雇より厳格であり、期間途中での解雇は難しいとされています。実務上は合意退職を優先すべきです。

根拠:民法628条の「やむを得ない事由」

民法628条により「やむを得ない事由」がある場合に限り契約期間満了前の解除が認められます。労働契約法17条1項も同趣旨の規定を置いています。


正社員より厳格な基準:契約期間中の雇用継続の約束があるから

有期契約は少なくとも契約期間中は雇用を継続するという約束を含んでいるため、期間途中での解雇には通常の解雇より厳格な要件が求められます。


実務上の推奨:合意退職の追求か契約期間満了日での雇い止め

期間途中での解雇はリスクが高いため、合意退職を優先し、それが難しければ契約期間満了日での雇い止め(更新拒絶)を選択することをお勧めします。

1. 民法628条と「やむを得ない事由」

民法628条の規定

 民法628条は、「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う」と規定しています。

 したがって、「やむを得ない事由」があれば、有期契約労働者を契約期間満了前に普通解雇することができます。また、労働契約法17条1項も「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」と規定しており、同趣旨の制限を設けています。

「やむを得ない事由」は正社員の解雇より厳格な基準

 民法628条の「やむを得ない事由」は、正社員(期間の定めのない労働者)の解雇における「客観的合理的理由」(労働契約法16条)よりも厳格な基準とされています。契約期間途中での解雇は、期間の定めがない労働者(正社員等)の解雇よりも難しいとされているのです。

 この理由は、有期労働契約を締結した場合、使用者は少なくとも契約期間中は雇用を継続するという約束をしていることにあります。この契約上の拘束力から、期間途中での解雇には通常の解雇よりも厳格な要件が求められます。「やむを得ない事由」とは何かについては労働問題64で詳しく解説しています。

✕ よくある経営者の誤解

「パートやアルバイトは正社員より簡単に辞めさせられる」→ 契約期間途中は逆に難しいです。
有期契約(パート・アルバイト・契約社員等)の契約期間途中での解雇は、「やむを得ない事由」が必要であり、正社員(期間の定めなし)の解雇における「客観的合理的理由」より厳格な基準です。

「有期契約だから、問題があったらいつでも契約を打ち切れる」→ 誤りです。
契約期間満了前の解雇には「やむを得ない事由」が必要です。問題があるだけでは不十分で、契約期間中の雇用継続ができない程度の深刻な事由が必要とされます。問題がある場合でも、まず合意退職を目指すことが実務上の最善策です。

2. 損害賠償リスクにも注意

「やむを得ない事由」が使用者の過失による場合は損害賠償責任が生じる

 民法628条には「その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う」という規定があります。例えば、使用者の過失により職場環境が悪化し、それが「やむを得ない事由」に該当するような場合には、使用者側に損害賠償責任が生じる可能性があります。

 さらに、「やむを得ない事由」がないにもかかわらず期間途中で解雇した場合は、解雇が無効とされ、残期間分の賃金の支払いを求められるリスクがあります。このリスクが正社員の解雇よりも顕著になりやすい点に注意が必要です。

3. 実務上の対応:合意退職の追求か契約期間満了日での雇い止め

まず合意退職(退職届の提出)を目指す

 有期契約労働者に問題が生じた場合、契約期間満了前の解雇ではなく、まず合意退職(退職届の提出を求める話し合い)を優先して追求することをお勧めします。合意退職であれば解雇の有効性を争われるリスクがなく、残期間分の賃金請求等のリスクも生じません。

 問題の内容・程度を具体的な事実に基づいて説明し、「このままでは契約継続が難しい」という状況を丁寧に伝えながら、退職届の提出を求める話し合いを行うことが実務上の最善のアプローチです。

合意退職が難しい場合:契約期間満了日での雇い止めを検討

 合意退職の話し合いがうまくいかない場合は、可能であれば契約期間満了日まで待ち、契約を更新しない(雇い止め)という対応を選択することも一つの方法です。雇い止めについては、「やむを得ない事由」より相対的にハードルが低く(ただし雇い止め法理の適用にも注意が必要)、また契約期間満了という明確な区切りがあるため、交渉がしやすい側面があります。

 期間途中での解雇を検討している場合は、必ず事前に弁護士に相談し、「やむを得ない事由」の有無・証拠の十分性・損害賠償リスク等を確認した上で判断することが不可欠です。

 有期契約労働者への期間途中での対応方針・合意退職の進め方・「やむを得ない事由」の有無の確認について、早めの弁護士へのご相談をお勧めします。→ 経営労働相談はこちら

⚠ 実務でよく見られるパターン(弁護士対応事例より)

・「パートタイマーに問題行動があり、残り3か月の契約期間を待たずに解雇した。『やむを得ない事由』が認められないとして解雇無効・残期間分の賃金の支払いを求められた」

・「契約社員に問題が生じ、合意退職の話し合いを行い退職届を得ることができた。解雇の有効性を争われるリスクなしで円満に解決できた」

 有期契約労働者への期間途中の対応は、正社員以上に慎重な検討が必要です。まず合意退職を目指すことが実務上の最善策です。

4. まとめ

 民法628条により、「やむを得ない事由」があれば有期契約労働者を契約期間満了前に普通解雇することができます(労働契約法17条1項も同趣旨)。ただし「やむを得ない事由」は正社員の解雇における「客観的合理的理由」より厳格な基準であり、契約期間途中での解雇は正社員より難しいとされています。「やむを得ない事由」がない場合の期間途中解雇は無効とされ残期間分の賃金支払いリスクが生じます。実務上は合意退職の追求を優先し、難しければ契約期間満了日での雇い止めを選択することをお勧めします。いずれの場合も事前の弁護士への相談が不可欠です。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

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最終更新日 2026/04/05

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