労働問題56 試用期間とは何ですか?定義・法的性格・実務上の注意点を会社側弁護士が解説

この記事の要点

試用期間は正社員としての適格性を判断するための期間です。法律上の定義はなく、試用期間中でも解雇には客観的合理的理由が必要です。問題を認識したら先送りにしないことが最重要です。

試用期間中も労働契約は成立しており、自由に解雇できるわけではありません。ただし本採用後と比べてハードルは相対的に低く、問題を把握したら早期に対処することが有利です。試用期間の法的性格・本採用拒否の要件・実務上の対応を正確に理解することが重要です。

試用期間の定義:正社員としての適格性を判断するための期間

試用期間には法律上の定義がなく、正社員として採用された者の人間性・能力等を調査評価し適格性を判断するための期間をいいます。試用期間中も労働契約は成立しています。


試用期間中でも解雇には客観的合理的理由が必要

試用期間中でも自由に解雇できるわけではありません。ただし本採用後と比べてハードルは相対的に低く、採用時に予測できなかった問題が判明した場合は本採用拒否が認められやすくなります。


試用期間中に問題を認識したら先送りにしない

試用期間を経過すれば法的には本採用とみなされます。問題を認識したら早期に対処することが、会社にとって最善の対応です。

1. 試用期間の定義

法律上の定義はなく、実務上の慣行として確立されている

 試用期間には法律上の定義がなく、様々な意味に用いられますが、一般的には、正社員として採用された者の人間性や能力等を調査評価し、正社員としての適格性を判断するための期間をいいます。

 試用期間は会社と従業員の双方にとって「相互確認の期間」としての意味を持ちます。会社側からは、採用時の選考では把握しきれなかった能力・適性・人間性を実際の業務を通じて評価する機会となります。従業員側からは、実際の職場環境・業務内容・社風等を体験し、自分に合う職場かを確認する機会となります。

試用期間中も労働契約は成立している

 重要な点として、試用期間中も労働契約は成立しています。「試用期間中は雇用関係にない」という誤解がありますが、法的には試用期間の開始時から雇用関係(労働契約)は成立しており、各種の労働法が適用されます。したがって、試用期間中でも最低賃金・労働時間・社会保険等の適用があります。

2. 試用期間の法的性格と本採用拒否の可否

解約権留保付き労働契約として理解する

 試用期間の法的性格については、「解約権留保付き労働契約」として理解するのが一般的です(詳細は労働問題57参照)。これは、使用者が一定期間内に労働者の能力・適性を評価した上で本採用するかどうかを決定できる権限(解約権)を留保した形の労働契約です。

 試用期間中の本採用拒否(試用期間中の解雇)については、本採用後の解雇と同様に客観的に合理的な理由が必要であり、社会通念上相当と認められなければなりません。ただし、本採用後と比べてそのハードルは相対的に低く、採用時の段階では知ることができなかった、または知ることが困難であった事実が試用期間中に判明した場合には、本採用拒否が認められやすくなります。

本採用拒否が認められやすいケース・認められにくいケース

 本採用拒否が認められやすいケースとして、①採用選考時には判明しなかった重大な問題(勤怠不良・重大な能力不足・社内でのトラブル等)が試用期間中に判明した場合、②試用期間中に能力や適性が採用時の期待水準を著しく下回ることが明らかになった場合、③経歴詐称等の採用選考における重大な不正が判明した場合、などが挙げられます。

 一方、本採用拒否が認められにくいケースとして、①試用期間中の問題が軽微で改善の余地がある場合、②問題があるにもかかわらず長期間放置し本採用に近い時期になって初めて問題を指摘した場合、③合理的な評価・観察が行われていない場合、などがあります。

✕ よくある経営者の誤解

「試用期間中なら自由に解雇できる」→ 誤りです。
試用期間中でも解雇(本採用拒否)には客観的合理的理由と社会通念上の相当性が必要です。本採用後と比べてハードルが相対的に低いだけで、自由に解雇できるわけではありません。

「本採用の通知をしていないから、まだ試用期間中のはずだ」→ 誤りです。
試用期間として設定した期間が何事もなく経過すれば、本採用の通知がなくても法的には本採用とみなされます。この点は非常に重要です。

3. 試用期間の設定と運用の実務上のポイント

就業規則への明記と適切な期間設定

 試用期間を設けるためには、就業規則に試用期間の規定(期間・延長の可否・本採用拒否の基準等)を明記しておくことが必要です。就業規則の規定なしに口頭だけで「3か月は試用期間です」と伝えても、法的に有効な試用期間として機能しない可能性があります。

 試用期間の長さは一般的に3か月から6か月程度が多く見られます。試用期間を不合理に長く設定すること(例:1年以上)は問題となる場合があります。また、試用期間の延長については、就業規則に延長規定がある場合に限り、合理的な理由があれば認められることがあります。

試用期間中に問題を認識したら先送りにしない

 試用期間中に問題(能力不足・勤怠不良・問題行動等)を認識したら、先送りにせず早期に対処することが最重要です。試用期間として設定した期間が何事もなく経過すれば、本採用の通知がなくても法的には本採用とみなされます。試用期間を経過させてしまうと本採用拒否のハードルが大幅に上がります。

 問題を認識した段階で、①本人への面談と問題点の指摘、②改善目標の設定と改善状況の観察・記録、③合意退職に向けた話し合い、④本採用拒否の判断と実施(弁護士との協議の上)、という手順を早期に踏むことが重要です。

 試用期間中の問題社員への対応・本採用拒否の可否判断・就業規則の試用期間規定の整備について、早めの弁護士へのご相談をお勧めします。試用期間を経過させてしまう前に方針を固めることが重要です。→ 経営労働相談はこちら

⚠ 実務でよく見られるパターン(弁護士対応事例より)

・「試用期間中に問題を認識していたが様子を見ているうちに試用期間が経過してしまった。本採用後に問題が深刻化したが対応が難しくなった」

・「試用期間中なら自由に解雇できると思い合理的な理由なく本採用拒否した。不当解雇として争われ、多額の解決金を支払うことになった」

 試用期間中の問題には早期対応が最善策です。試用期間を経過させてからでは対応の難易度が大幅に上がります。

4. まとめ

 試用期間には法律上の定義がなく、一般的には正社員として採用された者の人間性・能力等を調査評価し正社員としての適格性を判断するための期間をいいます。試用期間中も労働契約は成立しており、解雇(本採用拒否)には客観的合理的理由が必要ですが、本採用後と比べてハードルは相対的に低くなります。試用期間の設定は就業規則への明記が必要であり、試用期間中に問題を認識したら先送りにせず早期に対処することが最重要です。試用期間を経過すると法的には本採用とみなされます。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

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最終更新日 2026/04/05

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