労働問題461 「④業務の依頼に応ずべき関係」の有無を判断する際には、どのような事情を考慮する必要がありますか。


この記事の結論
1

3つの観点から「業務の依頼に応ずべき関係」を判断する

「不利益取扱いの可能性」「業務の依頼拒否の可能性」「業務の依頼拒否の実態」の3つの観点から判断されます(労使関係法研究会報告書)。

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契約上の自由があっても実態上断れない関係にあれば肯定される

契約書上は業務依頼の拒否が債務不履行等を構成しなくても、実態として断れない状況や断ると不利益を受ける状況であれば、この要素が肯定的に評価されます。

3

これらの事情がない場合でも直ちに否定されない

以下の各事情は肯定方向の考慮要素ですが、これらがないからといって直ちに「業務の依頼に応ずべき関係」が否定されるわけではありません。あくまで総合判断の一要素です。

01「業務の依頼に応ずべき関係」とは

 「業務の依頼に応ずべき関係」とは、労務供給者が相手方からの個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係にあるかどうかという補充的判断要素です(457番参照)。

 以下のような事情がある場合に、業務の依頼に応ずべき関係が肯定される方向で判断されるものと考えるのが一般的です。ただし、これらの事情がない場合でも直ちに業務の依頼に応ずべき関係が否定されるものではありません(労使関係法研究会報告書)。

02不利益取扱いの可能性

契約上は個別の業務依頼の拒否が債務不履行等を構成しなくても、実際の契約の運用上、労務供給者の業務依頼の拒否に対して、契約の解除や契約更新の拒否等、不利益な取り扱いや制裁の可能性がある

 契約書の文言上は業務依頼を断ることが可能であっても、実態として断ると契約を打ち切られる、次の仕事を回してもらえなくなる等の不利益を受けるリスクがある場合には、この要素が肯定的に評価されます。

 判断は契約の形式ではなく実態を重視して行われるため、書面上の権利と実際の関係のあり方との乖離が重要な考慮事情となります。

03業務の依頼拒否の可能性

実際の契約の運用や当事者の認識上、労務供給者が相手方からの個別の業務の依頼を拒否できない

 当事者がどのような認識を持っているかという主観的側面も考慮されます。労務供給者本人が「断れない」と認識している場合や、相手方も「断られない」という前提で業務の依頼を行っている場合には、この要素が肯定的に評価されます。

 これは契約書の文言とは別に、実際の取引関係の中で形成された当事者間の認識・慣行を重視するものです。

04業務の依頼拒否の実態

実際に個別の業務の依頼を拒否する労務供給者がほとんど存在しない。また、依頼拒否の事例が存在しても例外的な事象にすぎない

 拒否できるかどうかという可能性の問題に加えて、実際に拒否している者がどの程度いるかという客観的な実態も考慮されます。拒否する者がほぼいないという状況は、個々の当事者の認識を超えて、その関係全体として「応ずべき関係」が形成されていることを示します。

05実務上の注意点

 業務委託先に対して「業務は自由に断れる」という建前を維持していても、実態として断ると不利益を受ける関係になっている場合には、この要素が肯定的に評価されるリスクがあります。

 また、業務委託先が実際に断っている事例があるかどうかも重要です。断った場合に実際に不利益が生じていれば、断れない関係であることを裏付ける事情となります。

経営上のポイント 業務委託先が事実上業務依頼を断れない状況になっている場合、「業務の依頼に応ずべき関係」が肯定され、労組法上の「労働者」と判断されるリスクが高まります。業務委託先から団体交渉の申し入れを受けた際には、使用者側弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 契約書に「業務の受託は任意」と明記すれば、この要素は否定されますか。

A. 契約書上の文言だけで判断するのではなく、実態を重視して判断されます。「任意」と書かれていても、実際に断ると不利益を受ける関係になっている場合には、この要素が肯定的に評価されます。書面と実態が乖離している場合には書面の文言だけでは否定できません。

Q2. 業務委託先が実際に仕事を断ったことがあれば、この要素は否定されますか。

A. 拒否の事例が存在しても、それが「例外的な事象にすぎない」場合には否定されません。拒否する者がほとんど存在しない関係が全体として形成されているかどうかという観点から判断されます。ごく少数の例外的な拒否事例が存在するだけでは、この要素が否定されるわけではありません。

Q3. この要素は「基本的判断要素」と「補充的判断要素」のどちらですか。

A. 「業務の依頼に応ずべき関係」は、457番で解説した判断要素のうち「補充的判断要素」(④)に位置付けられます。基本的判断要素(①②③)を補充する形で機能する要素であり、この要素単独で労働者性の判断が決まるわけではなく、他の要素との総合判断の中で考慮されます。

最終更新日:2026年2月25日

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