労働問題460 「③報酬の労務対価性」の有無を判断する際には、どのような事情を考慮する必要がありますか。


この記事の結論
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2つの観点から「報酬の労務対価性」を判断する

「報酬の労務対価性」(仕事の完成ではなく労務そのものへの対価か)と「報酬の性格」(一定額保証・定期払いがあるか)の2つの観点から考慮される事情を整理します(労使関係法研究会報告書)。

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出来高給でも直ちに労務対価性は否定されない

報酬が出来高払いであっても、直ちに「報酬の労務対価性」が否定されるわけではありません。業務量や時間に基づく算出要素があるかどうかが重要です。

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これらの事情がある場合に肯定的に解されるが、ない場合でも直ちに否定されない

以下の各事情は肯定方向の考慮要素ですが、これらがないからといって直ちに「報酬の労務対価性」が否定されるわけではありません。あくまで総合判断の一要素です。

01「報酬の労務対価性」とは

 「報酬の労務対価性」とは、労務供給者の報酬が労務供給に対する対価またはそれに類するものとしての性格を有するかどうかという判断要素です(457番参照)。

 請負契約では仕事の「完成」に対して報酬が支払われるのが原則であり、途中で作業が中止されても完成しなければ報酬は発生しません。一方、雇用契約では「労務の提供」そのものに対して報酬が支払われます。「報酬の労務対価性」は、業務委託という形式であっても、実態として労務の提供に対する対価として機能しているかどうかを判断する要素です。

 以下のような事情がある場合に、報酬の労務対価性が肯定的に解されるものと考えるのが一般的です。ただし、これらの事情がない場合でも直ちに報酬の労務対価性が否定されるものではありません(労使関係法研究会報告書)。

02報酬の労務対価性(仕事の完成への対価か労務への対価か)

相手方の労務供給者に対する評価に応じた報奨金等、仕事の完成に対する報酬とは異なる要素が加味されている。

時間外手当や休日手当に類するものが支払われている。

報酬が業務量や時間に基づいて算出されている(ただし、出来高給であっても直ちに報酬の労務対価性は否定されない)。

 「仕事の完成に対する報酬とは異なる要素」が加味されている場合は、報酬が単なる成果物への対価ではなく、労務提供そのものへの対価としての性格を持つことを示します。

 時間外手当や休日手当に類するものの支払いは、労働時間の管理と密接に関連しており、労務対価性を強く示す要素です。また、報酬が時間や業務量に基づいて算出される場合も、労務そのものへの対価として機能していることを示します。

 なお、出来高払いであっても直ちに労務対価性が否定されるわけではない点は重要です。出来高の算定に業務量・従事時間等の労務量が反映されている場合には、労務対価性が肯定される余地があります。

03報酬の性格(安定性・定期性)

一定額の支払いが保証されている

報酬が一定期日に、定期的に支払われている

 一定額の保証があることは、報酬が成果物の完成に依存するのではなく、一定期間の労務提供に対して支払われるという性格を持つことを示します。最低保証額の存在は特に重要な考慮要素です。

 また、毎月末払いや15日払いなど、一定期日に定期的に支払われる場合も、雇用契約に基づく賃金の支払いと類似した性格を持ちます。業務委託でも報酬が定期的・定額的に支払われている場合には、この要素が肯定的に評価されます。

04実務上の注意点

 業務委託契約において報酬を「成果物に対する対価」として設計する場合であっても、実態として毎月定額に近い形で支払われている場合や、業務量・従事時間によって報酬が変動する仕組みになっている場合には、「報酬の労務対価性」が肯定的に評価される可能性があります。

 また、評価に応じた報奨金の支給や、時間外・休日割増に類する追加報酬の支払いは、業務委託という形式であっても労働者性を強く示す要素となります。報酬の設計において、こうした要素がどのように位置付けられているかを意識することが重要です。

経営上のポイント 業務委託先への報酬が実質的に月額定額・時間ベース・労務評価連動の性格を持つ場合、「報酬の労務対価性」が認められやすくなります。業務委託先から団体交渉の申し入れを受けた際には、報酬の支払い実態も含めて、使用者側弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 業務委託先への報酬を出来高払いにすれば、労務対価性は否定されますか。

A. 出来高払いであっても直ちに労務対価性は否定されません。出来高の算定に業務量・従事時間等が反映されている場合や、最低保証額が設けられている場合には、なお労務対価性が肯定される余地があります。報酬の形式よりも実態が重視されます。

Q2. 業務委託先への報酬支払いを成果物ごとの都度払いにすれば問題ありませんか。

A. 成果物ごとの都度払いは、報酬の定期性を否定する方向に働きますが、それだけで労務対価性が直ちに否定されるわけではありません。他の要素(報奨金の有無・時間外手当類の有無・報酬の算出方法等)も含めた総合判断が必要です。

Q3. 「評価に応じた報奨金」とはどのようなものですか。

A. 成果物の完成・納品に対する報酬とは別に、業務態度や従事期間・貢献度などの評価に基づいて支払われる報奨金等を指します。仕事の「完成」とは切り離された形で労務提供の「質」や「量」に対して追加的に報酬が支払われる場合、報酬が労務対価としての性格を持つと評価されやすくなります。

最終更新日:2026年2月25日

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