労働問題457 労組法上の「労働者」に該当するかどうかは、どのような基準で判断すればよろしいでしょうか。


この記事の結論
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労組法上の「労働者」は、6つの判断要素を総合的に考慮して判断する

基本的判断要素3つ(①事業組織への組み入れ・②契約内容の一方的決定・③報酬の労務対価性)、補充的判断要素2つ(④業務依頼への応諾関係・⑤指揮監督と時間的場所的拘束)、消極的判断要素1つ(⑥顕著な事業者性)で総合判断します。

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契約の形式ではなく、実態を重視して判断する

「業務委託」や「フリーランス」という契約形式だけで判断するのではなく、当事者の認識や契約の実際の運用を重視して判断することが求められます。

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労基法上の「労働者」より広い概念

労組法上の「労働者」は、労働基準法上の「労働者」より広い概念です。業務委託契約を結んでいるフリーランスや個人事業主であっても、実態に応じて労組法上の「労働者」に当たると判断されることがあります。

01労組法上の「労働者」とは

 労組法上の「労働者」に該当するかどうかは、以下の判断要素を用いて総合的に判断すべきものです(労使関係法研究会報告書)。

 判断にあたっての重要な前提として、次の3点に留意する必要があります。基本的判断要素の一部が充たされない場合でも、直ちに労働者性が否定されるわけではありません。また、各要素を単独に見た場合にそれ自体で直ちに労働者性を肯定されるとまではいえなくとも、他の要素と合わせて総合判断することにより労働者性を肯定される場合もあります。さらに、各判断要素の具体的検討にあたっては、契約の形式のみにとらわれるのではなく、当事者の認識や契約の実際の運用を重視して判断する必要があります。

 また、労組法上の「労働者」は、労働基準法上の「労働者」よりも広い概念です。業務委託契約を締結しているフリーランスや個人事業主であっても、実態に応じて労組法上の「労働者」に当たると判断されることがあります。

02判断要素の全体像

労組法上の「労働者」性の判断要素

【基本的判断要素】
① 事業組織への組み入れ
② 契約内容の一方的・定型的決定
③ 報酬の労務対価性

【補充的判断要素】
④ 業務の依頼に応ずべき関係
⑤ 広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束

【消極的判断要素】
⑥ 顕著な事業者性

03基本的判断要素(①②③)

 基本的判断要素は、労組法上の「労働者」性を判断するうえで中核となる要素です。

① 事業組織への組み入れ

労務供給者が相手方の業務の遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に確保されているかどうかを検討します。例えば、特定の事業者の業務に専属的に従事しており、その事業にとって不可欠な存在となっている場合には、この要素が肯定されやすくなります。

② 契約内容の一方的・定型的決定

契約の締結の態様から、労働条件や提供する労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているかどうかを検討します。相手方が提示した契約内容を実質的に変更する余地なく受け入れるしかない状況であれば、この要素が肯定されやすくなります。

③ 報酬の労務対価性

労務供給者の報酬が労務供給に対する対価又はそれに類するものとしての性格を有するかどうかを検討します。出来高払いであっても、仕事の完成に対する対価というよりも時間・労力に対する対価の性格が強い場合には、この要素が肯定されやすくなります。

04補充的判断要素(④⑤)

 補充的判断要素は、基本的判断要素を補充する形で労働者性の有無を判断する際に考慮される要素です。

④ 業務の依頼に応ずべき関係

労務供給者が相手方からの個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係にあるかどうかを検討します。業務の依頼を自由に断ることができる場合には、この要素は否定されやすくなります。一方で、事実上断ることが難しい関係にある場合(断ると契約を打ち切られるリスクが高い場合など)は、この要素が肯定されやすくなります。

⑤ 広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束

労務供給者が、相手方の指揮監督の下に労務の供給を行っていると広い意味で解することができるかどうか、また、労務の提供にあたり日時や場所について一定の拘束を受けているかどうかを検討します。「広い意味」での指揮監督であり、労基法上の判断より緩やかに捉えられています。

05消極的判断要素(⑥)

 消極的判断要素は、労働者性を否定する方向に働く要素です。

⑥ 顕著な事業者性

労務供給者が、恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し自らリスクを引き受けて事業を行う者と見られるかどうかを検討します。複数の取引先を持ち、自己の設備や道具を保有し、自らの判断でビジネスリスクを負担している実態がある場合には、この要素が認められやすく、労働者性が否定される方向に働きます。

06会社経営者として注意すべき点

 フリーランスや業務委託の個人事業主と取引している会社にとって、労組法上の「労働者」性の問題は無縁ではありません。業務委託という形式を採っていても、実態上の関係が上記の判断要素に照らして「労働者」性を肯定する方向に傾いている場合には、その個人事業主が所属するユニオンから団体交渉を申し入れられる可能性があります。

 特に、特定の事業者への専属性が高い場合(①)、報酬が実質的に時間単位の対価である場合(③)、業務の依頼を事実上断れない関係にある場合(④)などは、労働者性が認められやすい状況といえます。

経営上のポイント 業務委託先から団体交渉の申し入れを受けた場合、まず相手方が労組法上の「労働者」に当たるかどうかを検討する必要があります。「業務委託だから関係ない」と安易に判断するのではなく、使用者側弁護士に相談したうえで対応方針を決めることが重要です。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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Q&Aよくある質問

Q1. 労組法上の「労働者」と労基法上の「労働者」はどう違いますか。

A. 労基法上の「労働者」は、使用者に使用されて賃金を支払われる者と定義されており、指揮命令関係の有無が重要な判断要素です。労組法上の「労働者」はより広い概念であり、労働契約を締結していない個人事業主やフリーランスでも、実態として相手方への従属性が認められる場合には該当する可能性があります。

Q2. 業務委託先の個人から団体交渉を申し入れられました。対応する必要がありますか。

A. まず、その個人が労組法上の「労働者」に当たるかどうかを検討する必要があります。「業務委託だから関係ない」と一律に判断するのではなく、実態に基づいた判断が必要です。判断を誤って対応を拒否すると、不当労働行為と判断されるリスクがあります。使用者側弁護士に相談することをお勧めします。

Q3. 複数の取引先と契約している個人事業主は労組法上の「労働者」に当たりませんか。

A. 複数の取引先と契約していることは⑥(顕著な事業者性)の方向に働く要素ですが、それだけで直ちに労働者性が否定されるわけではありません。特定の一社への依存度が高い場合や、他の要素(①③④等)が肯定される場合には、なお労組法上の「労働者」と判断される可能性があります。総合的な判断が必要です。

最終更新日:2026年2月25日

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