労働問題463 「⑥顕著な事業者性」の有無を判断する際には、どのような事情を考慮する必要がありますか。


この記事の結論
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「顕著な事業者性」は労働者性を消極的に評価する要素

「顕著な事業者性」が認められる場合には、総合判断の結果として労働者性が消極的に解されます。自己の才覚で利得する機会・損益の負担・他人労働力の利用可能性・機材費の負担など6つの観点から判断されます(労使関係法研究会報告書)。

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一方的に決定された契約による損失・費用負担は「事業者性」にならない

相手方が一方的に決定した契約により労務供給者が損失を被ったり機材費を負担させられたりする場合は、「顕著な事業者性」とは評価されません。自発的なリスク負担かどうかが重要です。

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「消極的判断要素」であり、これだけで労働者性が否定されるわけではない

「顕著な事業者性」は労働者性を否定する方向に働く消極的判断要素ですが、他の要素を含めた総合判断の結果として評価されます。この要素だけで判断が決まるわけではありません。

01「顕著な事業者性」とは

 「顕著な事業者性」とは、労務供給者が恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し自らリスクを引き受けて事業を行う者と見られるかどうかという消極的判断要素です(457番参照)。

 この要素が認められる場合には、判断要素の総合判断の結果として労働者性が消極的に解されます。以下の各事情が認められる場合に顕著な事業者性が肯定されると考えるのが一般的です(労使関係法研究会報告書)。

02自己の才覚で利得する機会

契約上だけでなく実態上も、独自に営業活動を行うことが可能である等、自己の判断で損益を変動させる余地が広範にある。

 自ら顧客を開拓したり、価格交渉を行ったりするなど、労務供給者が独自の営業判断で利益を拡大する機会を実質的に持っている場合に認められます。相手方から与えられた仕事をこなすだけでなく、自ら能動的にビジネスを展開できるかどうかが判断のポイントです。

03業務における損益の負担

相手方から受託している業務で想定外の利益や損失が発生した場合に、相手方ではなく労務供給者自身に帰属する(ただし、相手方が一方的に決定した契約により、労務供給者が一方的に損失を被るような場合は、事業者性が顕著であると評価されない)。

 業務から生じた損益が労務供給者に帰属する場合は、事業リスクを自ら負担していることを示します。ただし、相手方が一方的に決定した契約によって労務供給者に損失が押し付けられている場合は「事業者性が顕著」とは評価されません。

 自発的・対等な意思決定に基づくリスク負担であることが、この要素の前提です。

04他人労働力の利用可能性

労務供給者が他人を使用している

契約上だけでなく実態上も相手方から受託した業務を他人に代行させることに制約がない

 自己が直接労務を提供するのではなく、他の者を使って業務を遂行できる場合は、事業主としての性格が認められやすくなります。「他人を使用している」という事実だけでなく、代行が可能な実態があるかどうかも考慮されます。

05他人労働力の利用の実態

現実に、相手方から受託した業務を他人に代行させる者が存在する

 04の「可能性」に加えて、実際に代行させている者が存在するという客観的事実も考慮されます。書面上は可能であっても実態として代行が行われていない場合は、この要素による評価が弱まります。

06他の主たる事業の有無・機材費の負担

相手方から受託する事業以外に主たる事業を行っている

労務供給者が、一定規模の設備、資金等を保有している

業務に必要な機材の費用、交通費、保険料、修理代などの経費を、実態として労務供給者が負担している(ただし、相手方が一方的に決定した契約により労務供給者側による機材等の経費の負担が求められている場合は、事業者性が顕著であると評価されない)。

 複数の事業を主体的に営んでいることは、特定の相手方への依存度が低く、独立した事業主としての実態があることを示します。また、一定規模の設備・資金の保有や機材費の自己負担も、事業者として自らリスクを引き受けていることを示す事情です。

 ただし、機材費負担についても、相手方が一方的に決定した契約によって押し付けられている場合は「顕著な事業者性」とは評価されない点に注意が必要です。

経営上のポイント 業務委託先が複数の取引先との事業を行い、他人を使って業務を遂行し、機材・設備への投資を自ら行っている場合には「顕著な事業者性」が認められ、労働者性が否定される方向に働きます。ただし、「顕著な事業者性」だけで労働者性が全て決まるわけではなく、他の5つの要素との総合判断が必要です。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 業務委託先が開業届を出して個人事業主になっていれば、事業者性が認められますか。

A. 開業届の提出は形式的な事情であり、それだけで事業者性が認められるわけではありません。実態として独立した事業を営んでいるかどうか(自らリスクを負って利益を追求しているか、他人を使って業務を展開しているか等)が重視されます。

Q2. 業務委託先に車両等の経費を自己負担させている場合、事業者性になりますか。

A. 「相手方が一方的に決定した契約により労務供給者側による機材等の経費の負担が求められている場合は、事業者性が顕著であると評価されない」とされています。発注者が一方的に経費負担を求めているだけでは事業者性とは評価されません。自発的・主体的に設備投資・経費負担を行っているかどうかが重要です。

Q3. 「顕著な事業者性」が認められれば、労組法上の労働者ではなくなりますか。

A. 「顕著な事業者性」は消極的判断要素であり、労働者性を否定する方向に働く要素ですが、これだけで判断が決まるわけではありません。①〜⑤の肯定的な要素との総合判断により決まります。他の要素が強く肯定されている場合には、事業者性が認められても労働者性が肯定されることがあります。

最終更新日:2026年2月25日

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