労働問題317 行政解釈は資格や職位の名称と管理監督者の範囲についてどのように考えていますか。

この記事の要点

行政解釈は、「資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様等に着目する必要がある」として管理監督者の範囲を判断するよう求めている

「部長」「課長」等の資格・職位名称は管理監督者性の判断に直接の関係はありません

管理監督者性の判断において着目すべき要素は①職務内容、責任と権限 ②勤務態様等——の2点

316番の「重要な職務と責任」「現実の勤務態様」と対応しており、より具体的な視点からの整理です

「職位」は職務の内容と権限等に応じた地位(部長・課長等)、「資格」は経験・能力等に基づく格付(職能資格等)を指し、いずれも管理監督者性の直接の判断基準にはならない

大企業の職能資格制度等における「資格」も管理監督者性の根拠にはなりません

この行政解釈は314番の「名称にとらわれず、実態に即して判断すべき」という立場を、資格・職位制度の文脈でより具体的に敷衍したものである

312番〜317番を通じて一貫する「実態重視」の行政解釈のスタンスが確認できます

01行政解釈における「資格」と「職位」の意味

 企業の人事管理では、職務の内容と権限等に応じた地位(「職位」)と、経験・能力等に基づく格付(「資格」)の2軸によって人事管理が行われていることがあります。

 行政解釈はこの2軸の制度に言及した上で、資格と職位の名称と管理監督者の範囲の関係について、以下のとおり示しています。

用語 意味(行政解釈の用語定義) 具体例
職位 職務の内容と権限等に応じた地位 部長・課長・係長・主任等の役職名
資格 経験、能力等に基づく格付 職能資格制度における「部長級」「課長級」等の格付け

02行政解釈の立場——資格・職位の名称と管理監督者の範囲に直接の関係はない

 行政解釈は次のとおり述べています。

 「一般に、企業においては職務の内容と権限等に応じた地位(以下「職位」という。)と、経験、能力等に基づく格付(以下「資格」という。)とによって人事管理が行われている場合があるが、管理監督者の範囲を決めるに当たっては、かかる資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様等に着目する必要があること。」

 この記述が意味するのは、「部長職位に就いているから管理監督者」「部長相当の職能資格があるから管理監督者」というような資格・職位名称に基づく形式的な判断ではなく、実際の職務内容・責任と権限・勤務態様等に基づく実態的な判断が必要であるということです。

実務上の重要な注意点

「職能資格制度で『部長格』に格付けられている社員は全員管理監督者」「部長・課長以上の全員が管理監督者」という運用は、行政解釈と相容れません。資格や職位の名称ではなく、個々の社員について実際の職務内容・責任と権限・勤務態様等を検討して管理監督者性を判断する必要があります。

03管理監督者の範囲の判断において着目すべき2つの要素

 行政解釈が資格・職位の名称の代わりに着目すべきとする要素は、以下の2点です。

番号 着目すべき要素 具体的な検討内容
職務内容、責任と権限 実際に担当している業務の内容・採用や解雇・賃金決定等への実質的な関与・部下の勤怠管理・人事評価等に関する責任と権限の有無・程度
勤務態様等 出退勤の管理の有無・自らの裁量で勤務時間を決定できるかどうか・実際の出退勤の自由度・残業・深夜勤務の実態等

①職務内容、責任と権限——実質的な権限があるかどうか

 「職務内容、責任と権限」に着目するとは、規程上(就業規則・職務権限規程等)の権限の記載だけでなく、実際に当該管理職が労働条件の決定・労務管理等について実質的な権限を行使できているかどうかを確認することを意味します。「規程には部長の権限として○○とあるが、実際には一切関与できていない」という場合は、実質的な権限があるとはいえません。

②勤務態様等——出退勤の実態的な自由度

 「勤務態様等」に着目するとは、就業規則上の規定(「管理職は出退勤の制限なし」等)だけでなく、実際に当該管理職が自分の裁量で出退勤時刻を決定できているかどうかを確認することを意味します。実態として上司や会社が出退勤を管理し、遅刻・早退が事実上できない状況にある場合は、②の要件を満たさない可能性があります。

04314番〜317番の行政解釈を通じた「実態重視」スタンスの一貫性

 312番〜317番を通じた行政解釈の各記述を整理すると、以下のとおり一貫して「実態重視」のスタンスが貫かれています。

記事番号 行政解釈の立場 実態重視の表れ
314番 名称にとらわれず、実態に即して判断 「実態に即して」という表現の明示
315番 役付者全員が管理監督者ではない 肩書(役付者)ではなく実態で判断
316番 現実の勤務態様も規制になじまないことが必要 「現実の」「勤務態様」という実態判断の強調
317番 資格・職位の名称にとらわれず職務内容・責任と権限・勤務態様等に着目 名称(形式)ではなく職務内容等(実態)に着目

05まとめ

 行政解釈は、管理監督者の範囲を決めるに当たっては「資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様等に着目する必要がある」としています。「部長」「課長」等の職位名称や「部長格」「課長格」等の職能資格の格付けは、管理監督者性の判断に直接の関係はなく、実際の職務内容・責任と権限・勤務態様等という実態に基づいて判断することが求められます。この立場は、314番〜317番を通じた行政解釈の一貫した「実態重視」のスタンスを反映したものです。自社の管理職が管理監督者に当たるかどうかの判断については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。管理職の管理監督者性の判断・残業代の取り扱い・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。アドバイスします。

Q&Aよくある質問

Q1. 行政解釈は資格や職位の名称と管理監督者の範囲についてどのように考えていますか。

A. 資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様等に着目する必要があるとしています。「部長」等の職位名称や「部長格」等の職能資格の格付けは管理監督者性の判断に直接の関係はなく、実態に基づいて判断することが求められます。

Q2. 「職位」と「資格」の違いは何ですか。

A. 行政解釈の用語定義によれば、「職位」は職務の内容と権限等に応じた地位(部長・課長・係長等の役職名)であり、「資格」は経験・能力等に基づく格付(職能資格制度における「部長格」「課長格」等)です。いずれも管理監督者性の判断に直接の関係はありません。

Q3. 「職務内容、責任と権限」に着目するとはどういうことですか。

A. 規程上の権限の記載だけでなく、実際に当該管理職が労働条件の決定・労務管理等について実質的な権限を行使できているかどうかを確認することを意味します。「規程には部長の権限として○○とあるが、実際には一切関与できていない」という場合は実質的な権限があるとはいえません。

Q4. 職能資格制度で「部長格」に格付けられている社員は全員管理監督者ですか。

A. そうはなりません。行政解釈は「資格及び職位の名称にとらわれることなく」とあるように、「部長格」という格付けそのものは管理監督者性の判断に直接関係しません。「部長格」に格付けられていても、実際の職務内容・責任と権限・勤務態様等が管理監督者の実態を備えていない場合は管理監督者に当たりません。

最終更新日:2026年5月10日


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