労働問題312 管理職にも残業代(割増賃金)を支払う必要がありますか。
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管理職も労基法上の労働者であり、原則として残業代(割増賃金)の支払義務がある 「管理職だから残業代は不要」という考えは誤りです |
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労基法41条2号の「管理監督者」に該当する場合に限り、時間外・休日割増賃金の支払義務が免除される 「管理職」という肩書があるだけでは不十分であり、法的な要件(管理監督者性)を満たすことが必要です |
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管理監督者であっても深夜割増賃金(22時〜5時)の支払義務は消えない——最高裁平成21年12月18日第二小法廷判決(ことぶき事件) 管理監督者が深夜に働いた場合は必ず深夜割増賃金(25%以上)を支払う必要があります |
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管理監督者の要件を満たさない「名ばかり管理職」には、時間外・休日・深夜割増賃金の支払義務がすべて生じる 名ばかり管理職への未払残業代請求は典型的なトラブルの一つです |
目次
01管理職にも原則として残業代の支払義務がある
管理職も労基法上の労働者ですから、原則として労基法37条の適用があり、週40時間・1日8時間を超えて労働させた場合、法定休日(労基法35条)に労働させた場合、深夜(22時〜5時)に労働させた場合は、時間外労働・休日労働・深夜労働に応じた残業代(割増賃金)を支払う必要があります。
「部長・課長だから残業代は不要」「管理職には労基法は適用されない」という考えは法律的に誤りです。
02管理監督者(労基法41条2号)に該当する場合の適用除外
管理職が労基法41条2号にいう「監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」といいます)に該当する場合には、労働時間・休憩・時間外休日割増賃金・休日・賃金台帳に関する規定の適用が除外されます。その結果、法律上、使用者が時間外・休日割増賃金の支払義務を免れることがあります。
03管理監督者でも深夜割増賃金の支払義務は残る——最高裁H21.12.18判決
管理監督者であっても、深夜労働に関する規定(労基法37条4項)は適用されますので、深夜割増賃金を支払う必要があることに変わりはありません。
最高裁判所平成21年12月18日第二小法廷判決(ことぶき事件)は、「労基法41条2号の管理監督者については、同法32条、35条及び37条1項の適用がなく、時間外及び休日の労働についての割増賃金の支払義務を負わないが、午後10時から午前5時までの深夜業については、37条3項の適用があり、深夜業の割増賃金の支払義務を負う」と判示しています。
実務上の重要な注意点
「管理監督者だから残業代は一切払わなくてよい」という運用は誤りです。管理監督者であっても、22時〜5時の深夜時間帯に業務を行った場合は、深夜割増賃金(25%以上)の支払義務が生じます。管理職が夜遅くまで働くことが多い職場では、深夜割増賃金の未払いについて残業代請求を受けるリスがあります。
04「名ばかり管理職」の問題——管理監督者の要件は厳格
287番で解説したとおり、労基法上の「管理監督者」であるためには、①経営者と一体的な立場にあること(経営者との一体性)、②労働時間の規制に縛られない自由な勤務態様であること(勤務態様の自由性)、③名称にふさわしい賃金等の待遇を受けていること(処遇の相当性)——という厳格な要件を満たす必要があります。
「部長」「課長」などの肩書があっても、これらの要件を満たさない場合(いわゆる「名ばかり管理職」)は労基法上の管理監督者に当たらず、時間外・休日・深夜割増賃金の支払義務がすべて生じます。
①経営者との一体性:労働条件の決定・管理等について、経営者と一体的な立場にあること(重要な職務と権限・役職での裁量があること)
②勤務態様の自由性:出退勤について厳格な制限を受けず、自己の判断で決定できること
③処遇の相当性:その職務の重要性に見合った賃金等の処遇を受けていること
これらの要件のいずれかを欠く場合は、たとえ「部長」「課長」等の肩書があっても、労基法上の管理監督者には当たりません。
05まとめ
管理職も労基法上の労働者であり、原則として残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の支払義務があります。労基法41条2号の管理監督者に該当する場合は時間外・休日割増賃金の支払義務が免除されますが、深夜割増賃金(22時〜5時)の支払義務は免除されません(最高裁H21.12.18ことぶき事件)。また、「部長」「課長」等の肩書があっても管理監督者の厳格な要件(経営者との一体性・勤務態様の自由性・処遇の相当性)を満たさない場合は「名ばかり管理職」として時間外・休日・深夜割増賃金の支払義務がすべて生じます。管理職の残業代の取り扱いについては、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。管理職の残業代の取り扱い・管理監督者の要件確認・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。アドバイスします。
Q&Aよくある質問
Q1. 管理職には残業代を支払わなくてよいですか。
A. 原則として支払わなくてよいわけではありません。管理職も労基法上の労働者であり、週40時間・1日8時間を超えて労働させた場合等には残業代の支払義務があります。例外として、労基法41条2号の「管理監督者」に該当する場合は時間外・休日割増賃金の支払義務が免除されますが、深夜割増賃金の支払義務は残ります。
Q2. 「管理監督者」に当たれば残業代は一切不要ですか。
A. 一切不要にはなりません。管理監督者(労基法41条2号)に該当する場合は時間外・休日割増賃金の支払義務が免除されますが、深夜(22時〜5時)に労働させた場合の深夜割増賃金(25%以上)の支払義務は残ります(最高裁H21.12.18ことぶき事件)。
Q3. 管理監督者でも深夜割増賃金の支払は必要ですか。
A. 必要です。最高裁平成21年12月18日判決(ことぶき事件)により、管理監督者であっても22時〜5時の深夜時間帯に労働させた場合は深夜割増賃金(25%以上)の支払義務が生じます。管理監督者に該当する場合でも「深夜割増賃金は別途支払う」という運用が必要です。
Q4. 「管理職」と「管理監督者(労基法41条2号)」の違いは何ですか。
A. 「管理職」は社内の役職・肩書であり、「管理監督者(労基法41条2号)」は法律上の概念です。「部長」「課長」等の肩書があっても、①経営者との一体性・②勤務態様の自由性・③処遇の相当性という3要件を満たさなければ労基法上の管理監督者には当たらず(名ばかり管理職)、時間外・休日・深夜割増賃金の支払義務が生じます。
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最終更新日:2026年5月10日