労働問題921 店舗の店長は管理監督者に該当しますか。

この記事の結論
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日本マクドナルド事件は店長の管理監督者性を否定した

東京地裁は、店長の権限が店舗内業務に限られ経営への一体的関与といえないこと、労働時間の自由裁量が実質なかったこと、待遇面で管理監督者にふさわしい優遇がなかったことから、管理監督者性を否定しました(東京地裁平成20年1月28日判決)。

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通達により管理監督者性の判断要素が具体化された

厚労省通達(平成20年9月9日基発第0909001号)は、多店舗展開する小売業・飲食業の店舗責任者について、管理監督者性を否定する重要要素・補強要素を具体的に整理しています。

 店舗の店長・施設責任者が「管理監督者」に該当するかどうかは、残業代請求の有無を左右する重大な問題です。管理監督者に該当する場合は労働基準法上の労働時間・休憩・休日規制が適用されず、時間外・休日労働に対する割増賃金の支払いが不要となります(深夜割増は別途必要)。854の記事で解説した基本的な判断枠組みを踏まえ、本稿では、この問題を社会的に広く知らしめた日本マクドナルド事件を詳しく解説します。

 会社側専門の弁護士の立場から、管理監督者の法的要件と判断基準、日本マクドナルド事件で管理監督者性が否定された理由、実務ポイントを解説します。

01管理監督者の法的要件と判断基準

 労働基準法第41条2号は、「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)を労働時間・休憩・休日規制の適用除外としています。管理監督者に該当するかどうかは、役職名・名称ではなく実態によって判断されます。

 行政解釈(昭和22年9月13日発基17号ほか)および裁判例の蓄積により、管理監督者性は次の三つの観点から総合的に判断するとされています。第一に、職務内容・権限・責任について、労務管理を含む企業経営上の重要事項に関与しているか(経営者との一体性)。第二に、勤務態様が労働時間規制になじまない実態があるか(出退勤の自由裁量)。第三に、給与・賞与・役付手当等において管理監督者にふさわしい待遇がされているか(賃金上の優遇)。これらは独立した要件ではなく、相互に関連して総合判断されます。一つの要素が否定的であっても他の要素が強ければ管理監督者性が肯定される場合もありますが、全体として実質的に経営者と一体的な立場にあるといえることが必要です。

02日本マクドナルド事件の判断内容

 東京地裁は、日本マクドナルドの店長について管理監督者性を否定しました(東京地裁平成20年1月28日判決)。その理由として、まず職務・権限の点では、店長の権限は採用・育成・シフト決定・販売促進といった店舗内業務に限られており、企業全体の経営に関する重要事項に経営者と一体的な立場から関与しているとはいえないと判断されました。

 勤務態様の点では、店長が自らのスケジュールを決定する権限を形式的に有していても、実態として店舗のシフトマネージャー補充のため法定労働時間を超える長時間労働を余儀なくされており、労働時間の自由裁量があったとは認められないとされました。賃金・待遇の点では、下位職位であるファーストアシスタントマネージャーの平均年収と店長(C評価)の年収を比較すると、C評価店長(全店長の10%)の年収は下位職位を下回り、B評価(全体の40%)でも差額は年額44万円程度にとどまりました。インセンティブ制度も店舗従業員全員を対象とするもので、管理監督者扱いの代償措置とはいえないとされました。

03事件後の行政通達と実務への影響

 日本マクドナルド事件を契機として、厚生労働省は平成20年9月9日付けで「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」(基発第0909001号)を発出しました。この通達は、飲食・小売業等の店舗責任者について管理監督者性を否定する重要要素・補強要素を整理し、職務内容・責任と権限・勤務態様・賃金等の待遇の各点から具体的な指針を示しています。

 通達によれば、店舗責任者について管理監督者性を否定する重要要素としては、採用・解雇・人事考課・労働条件の決定等の権限がないこと、遅刻・欠勤等について制裁を受ける地位にあること、賃金面で管理監督者にふさわしい処遇がないこと等が挙げられています。この通達以降、労働基準監督署は多店舗展開企業の管理職扱いについて厳しく対応するようになっており、実態に伴わない管理監督者指定は未払残業代請求のリスクを高めます。会社側としては、管理監督者制度の実態を定期的に見直すことが不可欠です。

04会社側が実務上すべき対応

 管理監督者の扱いについて、会社側が実務上取るべき対応は次のとおりです。第一に、管理職・店長等の役職者について、管理監督者性の要件(職務権限・勤務態様・待遇)を実態として充足しているかを定期的に確認します。法的要件を充足していない役職者を管理監督者として扱うことは、多額の未払残業代債務を生じさせるリスクがあります。

 第二に、管理監督者性を否定されるリスクが高い役職者については、適切な残業代管理の仕組みを整備します。名ばかり管理職問題は、労働審判・訴訟において大きなリスクとなるため、労働時間の実態把握と残業代の適切な支払いを徹底することが重要です。第三に、管理監督者として扱う役職者については、実質的な権限(人事・採用・労働条件決定への関与)、出退勤の自由、待遇(賃金上の優遇)の三要素を実態として整備します。また、その実態を示す証拠(業務日誌・労働時間管理記録等)を適切に保存しておくことが、紛争発生時に重要となります。

05よくある質問(FAQ)

Q. 「店長」という肩書きがあれば管理監督者として扱ってよいですか。

よくありません。管理監督者性は名称ではなく実態で判断されます。日本マクドナルド事件では、店長という肩書きにもかかわらず管理監督者性が否定されました。

Q. なぜ日本マクドナルドの店長は管理監督者と認められなかったのですか。

権限が店舗内業務に限られ経営への一体的関与といえないこと、労働時間の自由裁量が実質なかったこと、待遇面で管理監督者にふさわしい優遇がなかったことが理由です。

Q. 通達(基発第0909001号)は何を定めていますか。

多店舗展開する小売業・飲食業等の店舗責任者について、管理監督者性を否定する重要要素・補強要素を、職務内容・権限・勤務態様・賃金等の待遇の観点から具体的に整理しています。

経営上のポイント 管理監督者性は、職務内容・権限・責任(経営者との一体性)、勤務態様(出退勤の自由裁量)、給与等の待遇(賃金上の優遇)という3要素を総合的に判断します。日本マクドナルド事件(東京地裁平成20年1月28日)は、この3要素すべてを否定し、店長という肩書きにもかかわらず管理監督者性を認めませんでした。厚労省通達(平成20年9月9日基発第0909001号)は、多店舗展開する小売業・飲食業の店舗責任者について、この判断要素をより具体化しています。会社側としては、管理職・店長等の実態を定期的に見直し、法的要件を充足していない場合は適切な残業代管理の仕組みを整備することが重要です。管理監督者制度の設計・見直しは、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。管理監督者制度の見直しでお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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