労働問題920 労働組合法上の使用者性を肯定した裁判例を教えてください。
事案の紹介
- 事案(朝日放送事件最判平成7年2月28日判決)
- 本件は、A社のテレビ番組の制作を請け負っている下請け三社のB氏が構成員である組合が、A社に対して賃上げなどを要求したところ、A社は使用者ではないと主張して団体交渉を拒否したため、A社が労組法上の使用者に該当するか(団交拒否が不当労働行為に該当するか)が問題となった事案です。
判示
- 雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、右事業主は同条の「使用者」に当たるものと解するのが相当である。
- A社は、①請負三社から派遣される従業員が従事すべき業務の全般につき、編成日程表、台本及び制作進行表の作成を通じて、作業日時、作業時間、作業場所、作業内容等その細部に至るまで自ら決定していたこと、②請負三社は、単に、ほぼ固定している一定の従業員のうちのだれをどの番組制作業務に従事させるかを決定していたにすぎないものであること、③A社の下に派遣される請負三社のB氏は、このようにして決定されたことに従い、A社から支給ないし貸与される器材等を使用し、A社の作業秩序に組み込まれてA社の従業員と共に番組制作業務に従事していたこと、④請負三社の従業員の作業の進行は、作業時間帯の変更、作業時間の延長、休憩等の点についても、すべてA社の従業員であるディレクターの指揮監督下に置かれていたことが明らかである。これらの事実を総合すれば、A社は、実質的にみて、請負三社から派遣される従業員の勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境等を決定していたのであり、右従業員の基本的な労働条件等について、雇用主である請負三社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったものというべきであるから、その限りにおいて、労働組合法七条にいう「使用者」に当たるものと解するのが相当である。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
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