労働問題854 労働者に「課長」「店長」等の肩書きを付ければ残業代を支払わなくてもよいのですか。

この記事の結論
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管理監督者性は、名称ではなく実態に即して判断される

通達上、管理監督者にあたるか否かは、資格及び職位の名称にとらわれず、実態に即して判断すべきとされています(昭和63年3月14日基発第150号)。

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4つの判断要素で実態を確認する必要がある

重要な職務内容・責任権限、労働時間規制になじまない勤務態様、地位にふさわしい待遇の4つの要素から、具体的な実態に即して判断されます。

 779の記事で解説した管理監督者性の肯定・否定例とも関わりますが、実務上非常によくある誤解が、「肩書きさえ付ければ管理監督者として扱え、残業代を払わなくてよい」というものです。いわゆる「名ばかり管理職」問題の根本にある誤解でもあります。

 会社側専門の弁護士の立場から、肩書きと管理監督者性の関係を解説します。

01名称ではなく実態で判断される(通達の考え方)

 通達上、管理監督者にあたるか否かは、資格及び職位の名称にとらわれず、実態に即して判断すべきとされています(昭和63年3月14日基発第150号)。「課長」「店長」「マネージャー」といった肩書きが付いているかどうかは、管理監督者該当性の判断において、それ自体は決定的な要素ではありません。

02管理監督者性の4つの判断要素

 管理監督者にあたるか否かの具体的な判断要素は、次のとおりです。

管理監督者性の判断要素
労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有しているか
労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有しているか
現実の勤務態様も、労働時間等の規制に馴染まないものであるか
賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされているか

03肩書きだけでは足りない理由

 したがって、形式的に肩書を「課長」「店長」等としたとしても、管理監督者に該当するわけではなく、管理監督者に該当するかは具体的な実態に即して判断することになります。779の記事で解説したとおり、実際の裁判例でも、「店長」「課長」等の肩書きを持つ従業員について、経営者と一体的な立場での重要な権限・責任がない、出退勤の自由がない、待遇が一般社員と大差ない等の事情から、管理監督者性が否定されたケースが数多く存在します。

 管理監督者に該当すれば、労基法上の労働時間・休憩・休日に関する規制の適用が除外され、残業代(時間外・休日の割増賃金)の支払義務がなくなります(ただし深夜割増は別途必要です)。この効果の大きさゆえに、安易に肩書きだけで管理監督者扱いとする運用は、後の労働審判・訴訟で多額の未払残業代請求を招くリスクがあります。

04会社側が押さえておくべき視点

 会社側としては、「課長」「店長」等の肩書きを付与している従業員について、上記4つの要素に照らして、実質的に管理監督者と評価できる実態が伴っているかを、定期的に点検する必要があります。特に、出退勤について会社の管理を受けているか(タイムカードでの厳格な管理、遅刻・早退による賃金カットの有無等)、賃金水準が一般社員と比較して十分に高いか(残業代が支給されないことを踏まえた水準になっているか)は、実務上重要な確認ポイントです。

 実態が伴わない「名ばかり管理職」として扱っている従業員がいる場合には、役職の見直し、権限・責任の実質化、待遇の改善、あるいは管理監督者としての扱いをやめて通常の労働時間管理・残業代支給に切り替えるといった対応を検討することをお勧めします。

05よくある質問(FAQ)

Q. 「店長」という肩書きを付ければ、残業代を支払わなくてよいですか。

よくありません。管理監督者にあたるか否かは、資格及び職位の名称にとらわれず、実態に即して判断されます。肩書きだけで残業代の支払義務がなくなるわけではありません。

Q. 管理監督者かどうかは、何を基準に判断されますか。

重要な職務内容・責任権限を有しているか、勤務態様が労働時間規制になじまないか、地位にふさわしい待遇がなされているかという4つの要素から、実態に即して総合的に判断されます。

Q. 「名ばかり管理職」として扱っていた場合、どのようなリスクがありますか。

実態が伴わないまま管理監督者として扱い残業代を支払っていなかった場合、後の労働審判・訴訟で多額の未払残業代を請求されるリスクがあります。

経営上のポイント 通達上、管理監督者にあたるか否かは、資格及び職位の名称にとらわれず、実態に即して判断すべきとされています(昭和63年3月14日基発第150号)。判断要素は、①労働時間等規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容、②同様の重要な責任と権限、③現実の勤務態様が労働時間等の規制になじまないか、④その地位にふさわしい賃金等の待遇の4つです。したがって、形式的に「課長」「店長」等の肩書きを付けても、それだけで管理監督者に該当するわけではありません。会社側としては、肩書きを付与している従業員について、これらの要素に照らした実態の点検を定期的に行い、名ばかり管理職の状態を放置しないことが重要です。管理監督者性の判断・見直しは、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。管理監督者性の判断でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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