労働問題1012 嘘を繰り返し、追及するとパワハラだと非難する社員の対処法
解説動画
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まず「嘘が仕事とどれだけ関係するか」で判断を分ける 職場は仕事をする場所。仕事に関連する嘘(進捗の虚偽報告、職場秩序を乱す言動等)には事実確認が必要であり上司・社長の義務。プライベートなことに関する嘘には深く立ち入らない |
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確認するのは「事実」。「嘘をついたかどうか」という評価は後でよい 「嘘をついたのか」という評価的な問いかけでなく、「いつ・どこで・何を言ったか・何をやったか」という具体的な事実の確認が中心。「嘘ついた」「ついていない」という評価のぶつけ合いをするとパワハラになることすらある |
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面談(会議室・Zoom)で事実確認する。メールだけでは不十分 立ち話や軽い声がけでは巧みにかわされてしまう。会議室に呼んで正面から面談することが有効。場所が離れている場合はZoomやTeamsでお互いの顔が見える状態で対話する。メールや文字情報だけに頼ると失敗する |
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仕事に関連した事実確認でパワハラになることはほぼない パワハラは客観的に決まるもの。仕事に関連する情報について、事実(5W1H)を確認していく対話でパワハラと評価されることはほぼない。「パワハラと言われるから怖い」という心配は不要 |
目次
01まず「嘘が仕事とどれだけ関係するか」で判断を分ける
嘘を繰り返し、事実確認しようとするとパワハラだと威嚇してくる社員への対処法を考えるとき、最初に判断すべきことがあります。それは「その嘘が仕事とどれだけ関係するか」という問いです。
職場というのは仕事をする場所です。雇用契約に基づいて働いてもらっているわけですから、社長が社員に言えることは、大きく言えば「給料をしっかり払うからしっかり仕事してほしい」ということです。逆に言えば、仕事と関係のないことでいくら嘘をついたとしても、仕事をやる上で何の支障もなければ、深く突っ込むべき問題ではないということです。プライベートな話ですから。
仕事に関連するかどうかで対応が変わります。まずこの判断をしっかり行ってください。
02仕事に関連する嘘への対応。事実確認は上司・社長の仕事
仕事に関連する嘘というのは、例えば次のようなものです。仕事の進捗に関する虚偽の報告、お客様との対応についての事実と異なる説明、職場の秩序を乱すような言動をしておきながらやっていないと言い張ること。こういったものについては、事実確認を行うことが上司の仕事であり、社長の仕事です。
なぜこれが重要かというと、嘘の情報に基づいて行動すると、本人だけでなく周りも巻き込んで失敗するからです。「あの人の言うことは信用できない」という評判が広まれば、組織の連携が崩れ、チームとしてのパワーが発揮できなくなります。職場秩序が乱れれば、真面目に働いている社員・パートアルバイトの方々が「こんな会社はやってられない」と感じてしまいます。
逃げずに事実確認をすること。それが上司・社長の責任です。「パワハラだと言われるから怖い」という理由で事実確認を避け続けると、問題はどんどん大きくなります。
03プライベートな嘘には深く立ち入らない
一方で、仕事と全く関係のないプライベートな嘘については、深く立ち入ることをお勧めしません。
その方が信用できる人間かどうかという人間関係の問題は、職場においても大事なことではあります。しかし職場というのは仕事をする場所であり、プライベートな話にまで立ち入っていくことは、上司・社長の役割の範囲を超えてしまうことがあります。
しかも仕事と関係のないことについて「嘘をついたのか、ついていないのか」という確認をしようとすると、相手は「なぜそんなことまで聞かれなければならないのか」と反発しやすくなります。その反発を「パワハラだ」と言い返してくる材料に使われやすくなります。
仕事に関連する事実確認に絞ることが、対応の焦点を明確にするためにも、パワハラという誤解を防ぐためにも重要です。
04面談(会議室・Zoom)で正面から話す
簡単に問いかけてもまともに答えてくれない、巧みにかわしてくるという場合は、しっかり時間を取って面談を行ってください。
立ち話のような形で軽く済ませようとしても、こういった相手はうまくかわしてきます。会議室にその方を呼んで、正面から向き合って話を聞く。この形を取るだけで、状況は大きく変わることがあります。
面談の時間は15分程度でも十分なことがあります。しっかり場を設けて事実確認をしていく、その姿勢を見せることが重要です。
場所が離れている場合はZoomやTeamsを使う
拠点が別だったり、テレワーク中だったりして対面が難しい場合は、ZoomやTeamsなどのオンライン会議を使ってください。テキストでやり取りするのではなく、お互いの顔が見える状態で対話することが大事です。
メールや文字情報だけに頼らない
「記録に残るから」という理由でメールやSlackだけでやり取りしようとする方がいますが、それだけでは失敗することが多いです。文字情報だけのやり取りは、巧みにかわされやすく、微妙なニュアンスが伝わりません。
メールや文字情報は面談と組み合わせて使うことで効果が出ます。面談で話した内容を後から書面で確認する、という使い方が有効です。メールだけで完結させようとしないでください。
05確認するのは「事実」。評価的なぶつけ合いを避ける
面談で事実確認をする際に、最も重要なことがあります。「嘘をついたのか、ついていないのか」という評価をぶつけ合う議論にしないことです。
「嘘をついたでしょう」「ついていません」というやり取りをいくら繰り返しても、一体何があったのかが明確になりません。お互いが評価的な言葉を投げ合うだけで、議論は全く進みません。それどころか、評価的な言葉のぶつけ合いがヒートアップして、実際にパワハラと評価されるような言い方が出てしまうことすらあります。
確認すべきことは事実です。「いつ・どこで・何を言ったか・何をやったか」という具体的な事実の確認に集中してください。
事実が特定されれば、嘘なのかどうか、問題があるのかどうかという評価はその後から行えます。評価はゴールです。そのゴールに到達するための前段として、事実を確定させることにエネルギーを注いでください。
06仕事に関連した事実確認でパワハラになることはほぼない
「追及したらパワハラだと言われる。パワハラになってしまうのではないか」という不安を持つ方が非常に多くいます。この点についてはっきりお伝えします。
パワハラかどうかは客観的に決まります。「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」という話が世間に広まっていますが、これは誤りです。平均的な労働者が客観的にどう受け止めるかで決まるものです。
仕事に関連する情報について、事実(5W1H)を確認していく対話でパワハラと評価されることは、ほぼありません。「ほぼ見たことがない」と言ってもいいくらいです。
仕事を進めるために必要で、職場の秩序を守るために必要な事実確認をしていくことは、客観的に業務上必要な対応です。よっぽど無駄に大声で怒鳴ったり、誰が聞いてもひどいと感じるような言い方をしない限り、パワハラと評価されることはありません。
「パワハラと言われるから怖い」という心配を理由に事実確認を避けることは、かえって問題を大きくするだけです。仕事に関連する事実確認は、自信を持って行ってください。
07うまくいかない場合は弁護士に日本語指導を求める
面談をやってみたけれどうまくいかなかった、どう言えばよいか分からない、という場合は弁護士に相談してください。
弁護士への相談というと、法律や判例の解説を求めるものというイメージがあるかもしれません。しかしこういった問題では、日本語の使い方の指導も弁護士に求めることができます。「相手にこう言われたとき、どう返せばよいか」「何をどの順番でどう聞けばよいか」という具体的な対話の設計について、アドバイスを受けることができます。
ZoomやTeamsでの短時間のオンライン相談を活用すれば、面談が終わるたびに「こう言ったらこう返ってきた。次どうすればよいか」という都度の相談ができます。1〜2時間のまとまった打ち合わせよりも、30分程度の相談を繰り返す方が実践的です。このサイクルを重ねることで、対応力が着実に上がっていきます。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。パワハラ・ハラスメント対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 仕事の進捗について嘘の報告をする社員がいます。事実確認をするとパワハラだと言ってきます。どうすればよいですか。
A. 仕事に関連する事実確認は上司・社長の正当な仕事です。パワハラになることをおそれて事実確認を避けると、問題は大きくなります。「パワハラだ」と言われても、「いつ・どこで・何を報告したか」という事実ベースの確認を続けてください。仕事に関連した事実確認でパワハラになることはほぼありません。「パワハラだ」という評価のぶつけ合いに引き込まれないことが大事です。
Q2. メールで確認を取ろうとしてもはぐらかされます。どうすればよいですか。
A. メールや文字情報だけに頼ると失敗することが多いです。会議室に呼んで面と向かって話す、または場所が離れている場合はZoomやTeamsを使ってお互いの顔が見える状態で対話することが有効です。メールは面談の後に内容を確認する形で補助的に使うのが効果的です。
Q3. 仕事とは関係なく、プライベートなことで嘘をついています。職場でも気になります。
A. 仕事と関係のないプライベートな嘘については、深く立ち入らないことをお勧めします。その方が信頼できる人かどうかという人間関係の問題はあるかもしれませんが、仕事上の影響がない範囲にとどまるなら、上司・社長が踏み込む範囲ではありません。むしろ仕事と関係のないことまで追及しようとすると、相手に「パワハラだ」と言う口実を与えやすくなります。
Q4. 面談をしてみましたが、うまく事実確認できませんでした。次のステップは何ですか。
A. まず面談に踏み切ったこと自体は正しいステップです。うまくいかなかった場合は、どう言われてどう返したかを弁護士に伝えてください。次の面談でどんな日本語を使えばよいか、相手からこう言い返された場合どう対応するかについて、具体的なアドバイスを受けることができます。ZoomやTeamsで都度の短時間相談を繰り返すことで、対応力が上がっていきます。
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最終更新日:2026年5月10日