労働問題1037 毎年年休を使い切り欠勤する社員

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この記事の要点

年休を使い切ること自体は権利——処分の理由にはできない

年次有給休暇の取得は法律上保障された権利。使い切ること自体を処分の理由にすることはできない。「使い切らないようにしてほしい」という発言も、権利の行使を妨げる方向の発言になるためやめるべき

焦点を当てるべきは「年休使い切り後の欠勤」

処分を検討できるのは年休を使い切った後の欠勤について。欠勤がサボりによるものか傷病によるものかで対応が大きく変わる

サボりによる欠勤には処分が可能——ただし程度に応じた重さで

処分の重さは欠勤日数・業務への悪影響・本人の立場・責任の重さによって変わる。1〜2日では注意や軽い懲戒処分が多い。部長など責任の重い方が大事な仕事をほったらかして休んだ場合は重い処分が検討できる

傷病による欠勤には懲戒処分はできないのが原則

出勤したくても体調が悪くて出勤できない状態の社員を「ルール違反だ」と責めることはしにくい。ノーワーク・ノーペイや人事評価での対処が現実的。傷病給食制度の有無によって対応が変わる

01まず理解すべきこと——年休を使い切るのは権利

 毎年年休を使い切って欠勤するという社員への対応を考える前に、まず理解していただきたいことがあります。年次有給休暇を取得することは法律上保障された労働者の権利です。そして使い切ることも権利の行使です。

 こんなに毎年毎年欠勤を繰り返しているのだから、使い切るのはどうなのか——そう思われる経営者の方の気持ちは分からないではありません。「休まなければいけなくなった時のために年休をある程度取っておいてほしい」という思いはよく分かります。しかし、年休取得自体が権利である以上、使い切るのだって年休を使うということと変わりません。ですから、年休を使い切ること自体を処分の理由にすることは明らかにできません。

 処分を考えるのであれば、年休を使い切った後の欠勤の部分について検討していかなければなりません。これが出発点です。

02「年休を使い切らないようにしてほしい」は言ってはいけない

 「年休をある程度計画的に取って、いざというときのために残しておいたらどうか」——こう言いたくなる気持ちはよく分かります。しかし、上の立場の人間がこういった発言をすることは、権利の行使を妨げる方向の発言になります。会社のイメージを良くない方向に持っていってしまいます。

 特に社長自身がこういった発言をすることは問題です。上司や先輩がそういった話をする場合も、「会社からの圧力で年休を取るなと言っているかのように受け止められかねない」という問題があります。「別に年休取得するなとは言っていない」と前置きしたところで、取らない方向に押していくような発言であることには変わりありません。

 前もって行動を縛るような発言——「年休を残しておけ」「使い切らないようにしてほしい」——はやめてください。

言ってよいこと・言ってはいけないことの整理 ✗ やめるべき発言:「年休を使い切らないようにしてほしい」「計画的に取ってほしい」「いざというときのために残しておいてほしい」
○ 問題ない対応:事後的に「あなたは今年、年休使い切り後にこれだけ欠勤がありました。人事評価の結果はこうなります」と説明すること

 前もって行動を縛ることと、事後的に評価に反映することはまったく別物です。年休の使い方には口を出さず、あくまで欠勤の部分について事後的に評価に反映するという姿勢が重要です。

03焦点は「年休使い切り後の欠勤」——サボりか傷病かで対応が変わる

 処分を検討できるのは、年休を使い切った後の欠勤についてです。そしてその欠勤がどういった性質のものかによって、対応が大きく変わります。

欠勤の種類 基本的な対応
サボりによる欠勤 注意指導・懲戒処分の対象になる。処分の重さは欠勤日数・業務への悪影響・本人の立場・責任の重さによって決まる
傷病による欠勤 懲戒処分はしないのが原則。ノーワーク・ノーペイで給与を支払わない、あるいは人事評価で考慮する対応が現実的。傷病給食制度の有無で対応が変わる

 「年休使い切った後も欠勤が続いているのに問題ないのか」とお感じの経営者は多いと思います。確かに欠勤は多いのですが、その欠勤が体調不良で出勤したくてもできないのか、それともサボっているのかによって、会社としてできる対応は大きく変わります。ここが非常に大事な分かれ目です。

04サボりによる欠勤への対応——処分の重さの考え方

 仕事をサボって欠勤している場合は、注意指導・懲戒処分の対象になります。ただし処分の程度は事案によって異なり、その程度の悪さに応じた処分内容になります。

処分の重さを決める主な要素

 処分の重さを考える上で最も大きいのは欠勤日数です。1日や2日のサボりであれば、注意指導や軽い懲戒処分にとどまることが多いです。処分まではしないという会社も多いのではないでしょうか。やったとしても軽い懲戒処分——たとえば始末書の提出(けん責)程度になることが多いかもしれません。

 特に平社員やパート・アルバイトの方であれば、軽めの対応になることが多いです。

 重い処分が検討できるのは、立場・責任の重い方——部長などの管理職——が大事な仕事をほったらかしにしてサボったような場合です。やっぱりそういった立場・責任の重い方については、1日サボっただけでも業務に与えるマイナスの程度が重いわけです。一方で、代わりの効くような簡単な仕事しかやっていない方であれば、1日サボったとしても会社の受けるダメージは大きくないですから、注意や軽い懲戒処分にとどまるケースが多くなります。

処分の重さを整理すると

状況 処分の目安
平社員・パート等で1〜2日のサボり 口頭または書面での注意。けん責(始末書)程度。処分自体しない会社も。ノーワーク・ノーペイで給与を差し引く、人事評価に反映するといった対応も有効
責任の重い立場(部長等)が大事な仕事をほったらかして欠勤 業務への悪影響が大きいため、より重い処分が検討できる。減給・出勤停止も視野に入れて個別に判断する
ひどい場合(長期・繰り返し等) 退職勧奨・解雇を検討することにもなる。注意指導・懲戒処分の積み重ねが解雇の有効性の根拠になる

 いずれの場合も、ノーワーク・ノーペイ(働いていない時間分の給与は払わない)の原則は適用されます。サボって欠勤した日の給与は支払わなくて済みます。また事後的に人事評価で考慮することも適正な対応です。個別のさじ加減が分かりにくい場合は弁護士にご相談ください。

05傷病による欠勤への対応——傷病給食制度がある場合

 体調不良で欠勤している——つまり出勤したくても出勤できないという場合は、懲戒処分はしないのが原則です。出勤したくてもできない方を「ルール違反だ」と責めることはいかがなものかという評価になります。

 傷病給食制度がある会社から解説します。

傷病給食制度とは

 傷病給食制度というのは、例えば「1か月連続して欠勤すると給食(傷病給食)自由に該当する」という制度です。会社によって給食に入るまでの欠勤期間は異なります。規模の大きくない会社では1か月程度で給食に入るケースが多く、大きな会社になればなるほど給食期間を長く設けているのが一般的です。

傷病給食制度がある場合の欠勤の扱い

 傷病給食制度がある場合、傷病による欠勤はある意味権利なのです。「この段階まで休んでいいですよ、それが済んでも治らなかったら給食に該当するかもしれませんよ」という制度設計になっているわけですから、体調不良で何日か休んでも、それ自体は問題があるわけではありません。

 ですから、傷病給食制度がある会社において傷病による欠勤については、他に懲戒自由に該当する事情がない限り、懲戒処分はできません。また原則として解雇もできません。どちらかというとノーワーク・ノーペイで給与は支払わない(あるいは傷病手当金を活用する)、人事評価で考慮するという形で対処することになります。

 もちろんずっと休んでいられるわけではありません。一定日数欠勤したところで給食がスタートし、給食期間中に治らなければ給食期間満了で退職、という流れになります。ノーワーク・ノーペイを取っている会社においては本人の収入も減ってしまいますから、傷病手当金の申請などを検討することになります。

06傷病による欠勤への対応——傷病給食制度がない場合

 傷病給食制度は設けなければならない義務があるわけではありませんので、ない会社も多いです。傷病給食制度がない場合の傷病欠勤への対応を解説します。

懲戒処分はしないのが原則

 傷病給食制度がない場合でも、体調不良で出勤できないという状況では、出勤したくてもできないわけです。それを持ってルール違反だと非難するのはいかがなものかという評価になります。したがって他に懲戒事由に該当する事情がない限り、懲戒処分はしないのが原則です。

 ノーワーク・ノーペイで給料を払わないことで対処する、あるいは人事評価で欠勤が多いことを評価の事情に加えることは問題ありません。ただし「懲戒処分」という形では対処しにくいということになります。

欠勤日数があまりにも多い場合——普通解雇の検討

 働くべき所定労働日に働けないわけですから、欠勤日数があまりにも多い場合、ずっと欠勤が続いているような場合は、普通解雇の事由に該当することになります。ただしこの場合の普通解雇についても、どの程度の欠勤日数であれば解雇できるかは、他の社員との公平な取り扱いを考慮しながら決めていく必要があります。

 通常、これぐらい欠勤が続いても解雇していないとか、あるいはこれぐらいで解雇したとかというのは会社によって随分違います。他の社員との公平な取り扱いなどを考慮しながら、どこで解雇するかを判断していくべきです。判断に迷う場合は弁護士にご相談ください。

状況 傷病給食あり 傷病給食なし
懲戒処分 できない(原則) できない(原則)
給与の扱い ノーワーク・ノーペイで支払わない。傷病手当金の活用を検討 ノーワーク・ノーペイで支払わない。傷病手当金の活用を検討
人事評価 欠勤の多さを評価の事情に加えることは可能 欠勤の多さを評価の事情に加えることは可能
欠勤が長期化した場合 所定日数の欠勤で給食スタート。給食期間満了で退職扱い 欠勤日数が多い場合、普通解雇の事由に該当しうる。他の社員との公平な取り扱いを考慮して判断

07まとめ——年休はぐっとこらえ、欠勤にフォーカスする

 毎年年休を使い切って欠勤を繰り返している社員への対応をまとめると、次のようになります。

 年休はぐっとこらえて気持ちよく取らせてあげることが、会社のイメージを良くするいい職場にする方法です。年休の取り方にあれこれ言いたくなる気持ちは分かります。しかしそこはぐっとこらえて、欠勤の部分にフォーカスしてどれほど問題なのかを考えていくことをお勧めします。

 そして欠勤がサボりなのか傷病なのかというのが非常に大事な分かれ目になります。サボりであれば、欠勤日数や業務への悪影響の程度なども考慮して懲戒処分ができる可能性があります。傷病(体調不良)で出勤できないということになると、どちらかというと懲戒処分の話ではなく、給食期間満了退職か普通解雇か、あるいはノーワーク・ノーペイや人事評価での対処が現実的な対応になります。

 個別の判断で難しいことがある場合は弁護士にご相談ください。継続的なコンサルティングを受けながら対応していけば、会社のためになるような判断ができると思います。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。欠勤・遅刻問題でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 年休を毎年使い切る社員に対して「年休を残しておくように」と伝えることはできますか。

A. やめてください。年次有給休暇の取得は法律上保障された権利であり、使い切ること自体も権利の行使です。上の立場の人間が「残しておくように」「計画的に使ってほしい」と言うことは、権利の行使を妨げる方向の発言になります。特に社長からの発言は問題になりやすいです。事後的に人事評価に反映することは問題ありませんが、前もって行動を縛ることはやめてください。

Q2. 年休使い切り後の欠勤に対して、ノーワーク・ノーペイで給与を払わないことはできますか。

A. できます。ノーワーク・ノーペイは労働法の基本原則です。サボりによる欠勤であっても傷病による欠勤であっても、働いていない日の給与は支払わなくてよいのが原則です。ただし傷病欠勤については傷病手当金の対象になる場合がありますので、活用を検討してください。

Q3. 体調不良だと言っているのにサボっているのかもしれません。どう確認すればよいですか。

A. まず本人との面談を行い、どういった体調の問題があるのかを具体的に確認してください。「どんな病気なのか、医師には診てもらっているか、診断書は出してもらえるか」を聞いていきます。継続的に欠勤が続いているのであれば診断書の提出を求めることも正当です。また、出勤した日の仕事ぶりも確認のポイントになります(出勤時は問題なく働けているのか)。決めつけずに丁寧に確認していくことが大事です。

Q4. 傷病給食制度がない会社で、傷病欠勤が長期化した場合に解雇することはできますか。

A. 働くべき日に働けない状態が長期化すれば、普通解雇の事由に該当しうる状況にはなります。ただし解雇の判断は、欠勤がどの程度続いているか、他の社員との公平な取り扱いはどうか、などの事情を考慮して判断する必要があります。「これぐらいの欠勤なら解雇できる」という一律の基準はなく、個別の状況によって判断が変わります。解雇を検討する段階になったら必ず弁護士にご相談ください。

最終更新日:2026年5月10日

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