欠勤・遅刻を繰り返す問題社員への対応 総合解説

 

欠勤・遅刻を繰り返す問題社員への対応。
原因の見極めから注意指導・懲戒処分まで
会社側専門弁護士が実務を解説します。

 欠勤・遅刻問題への対応で、経営者が陥りやすい失敗があります。一定の時点で「もう見切りをつけた、辞めてもらうしかない」と決め、その後の注意指導や懲戒処分をやめてもらうための「アリバイ作り」として行い始めるというパターンです。これでは教育効果が低く、外から見ても本気で直す気がなかったと疑われ、解雇の有効性も危うくなります。注意指導・懲戒処分は、辞めてもらうための準備としてではなく、正当な理由のない欠勤・遅刻を本気でなくすために行うものです。その積み重ねの先に、改善か、退職勧奨・解雇かという次の選択肢が開けてきます。本ページでは、欠勤・遅刻問題への対応を実務に直結した形で体系的に解説いたします。

本記事の要点

 注意指導・懲戒処分は、辞めさせるためのアリバイ作りのためにやるのではなく、正当な理由のない欠勤・遅刻を本気でなくすためにやるものです。この目的が揺らいだとたん、教育効果は下がり、相手にも見透かされ、いざ解雇したときの有効性も弱くなります。欠勤・遅刻問題への対応は、まず原因を見極め(体調不良か規律の問題か)、それに応じた適切な対応を着実に積み重ねることが、最終的に会社を守ることにつながります。

個別テーマの解説ページ

 

CHAPTER 01

勤怠管理——対応の前提となる記録をとる

 

 欠勤・遅刻問題に対応しようとしているのであれば、まず実際に欠勤や遅刻があったという事実をしっかり説明できなければなりません。その前提として、タイムカードや日報などを用いて、何月何日に何時から何時まで遅刻したのか、この日は欠勤だったのかという記録を確実に取っておく必要があります。

 遅刻時間の管理はタイムカードや日報などを用いた通常の労働時間管理で行います。欠勤日数の管理は、タイムカードの打刻や日報の提出がないことを確認しつつ、欠勤届を提出させることで行います。これは通常の労働時間管理をしていれば十分対応できることです。

 記録がなければ、後になって「そんなに休んでいない」「遅刻した回数はそれほどではない」という争いになることがあります。注意指導の書面にも、懲戒処分通知書にも、解雇の有効性を主張する場面においても、この記録がすべての土台になります。欠勤・遅刻問題への対応で「まず最初にやること」は、この勤怠記録の確実な管理です。

CHAPTER 02

原因を調査する——体調不良か規律の問題か

 

 遅刻・欠勤を繰り返す社員が出てきたとき、原因は大きく2つに分けられます。単にルールを守る意識が低くてやっているのか、それとも守りたくても体調が悪くて守れないのか——この見極めが、対応方法を決める上で最初に行うべきことです。原因によって対応方法が全く違ってくるからです。

原因 対応の方向性
体調不良・疾病 医師への受診を促す、残業を禁止する、産業医面談を活用する、休職命令を検討する、傷病手当金の申請を促すなど。安全配慮義務の観点から、体調が悪い人を無理に働かせて悪化させてはならない
規律意識の問題(だらしない) 書面による注意指導・懲戒処分を段階的に実施する。正当な理由のない欠勤・遅刻をなくすことを目的として、本気で直させるための注意指導を積み重ねる

 原因が判然としない場合は、まず本人と面談をして状況を確認することが出発点です。「今月これだけ休んでいるが、体調の問題なのか、それとも別の事情があるのか」を率直に聞いてください。会議室に呼んで、腰を据えて話すことが大事です。立ち話レベルの確認では実態が見えてこないことが多く、面談の場での確認が本人から正直な情報を引き出しやすくなります。

 面談の内容は必ず記録に残しておいてください。何月何日に誰が誰に何を聞き、どういう回答があったかを記録します。後に「そんな話はしていない」という争いになったときの証拠にもなります。

CHAPTER 03

体調不良が原因の場合の対応

 

 体調不良が欠勤・遅刻の原因として疑われる場合、まず確認しなければならないのは「出勤してきたときにまともに働けているのかどうか」という点です。この1点が、その後の対応の方向性を大きく左右します。

出勤時にまともに働けていない場合

 体調が悪い方の中には、出社してきてもまともに仕事らしきことができていないという人がいます。この場合、体調が相当悪い可能性が高いです。そのまま働かせていたら体調をどんどん悪化させることになりかねません。

 会社には安全配慮義務があります。体調の悪い社員を無理に働かせて体調が悪化した場合、会社の責任を問われることがあります。ですからまず、本人に医師への受診を勧め、本人の納得を得た上でお医者さんに見てもらうなり休んでもらうなりの努力をすることが先決です。

 中には「自分は大丈夫、働ける」と言い張る方もいます。そういった場合は、「働けていませんよね」と評価的に言うだけでは納得してもらえません。具体的な事実を踏まえた説得が必要です。「先日、誰々さんからこういう仕事をやってと言われ、3時間経っても終わっていませんでしたよね。この仕事は通常30分あれば終わる仕事です。こういった状況を見ると体調が悪いのではないかと心配しています」というように、具体的な事実を示しながら話してください。それでも本人が「働ける」と言い張り続けるようであれば、働けるという根拠を示すよう求めることも考えられます。

 それでもなお出社し続けようとする方については、強制的に休ませる——つまり会社の中に入れないぐらいのことをする必要が生じることもあります。その場合の賃金の扱いは、本人の体調不良が原因で労務提供ができない状態になっているのであれば、給料を払わなくてよいということになりますが、この判断は慎重に行う必要がありますので弁護士に相談してください。

出勤時は問題なく働けている場合——「仮病」の疑いへの対応

 出勤した日はそれなりに問題なく働けているが、週に複数回の欠勤が継続的に続いているというケースでは、本当に体調が悪くて休んでいるのかというチェックをしていく必要があります。

 「どう見ても仮病だ」と感じても、根拠なく仮病と決めつけることは避けてください。仮病と評価できる根拠が本当にあるのかどうかを確認しなければなりません。まず事実関係をリストアップしてみましょう。仕事がしっかりできているかどうか、欠勤の頻度やパターン(特定の曜日だけ休むなど)、本人の説明内容の一貫性——こうした事実を整理してから判断することが大事です。

 会議室に呼んで面談を行い、どういった体調の問題があるのかを具体的に確認してください。「今月すでに7日間も休んでいます。遅刻も3回あります。どれくらいの重さの体調不良なのか、お医者さんには診てもらっているか、診断書は出してもらえますか」という形で、具体的な事実を示しながら確認します。

 診断書なしに体調不良を理由とした欠勤が長期間続いているのであれば、診断書の提出を求めることも正当です。「もう半年も週2日休み続けているのだから、いくらなんでも診断書を出してください」と言っても、これは全くおかしなことではありません。定期的な面談を繰り返すことも有効です。しっかり事実確認をされると嘘をつき続けることは辛いですから、やがて休まなくなるか、実態を打ち明けるかというケースが多くなります。

 また、実際にはサボりかと思っていたら本当に体調が悪かったということもあります。決めつけず、丁寧に確認を続けることが重要です。

産業医面談・主治医への照会の活用

 産業医がいる会社では、産業医面談を積極的に活用してください。仕事内容も把握している産業医に「このような状況ですが、このまま働かせても大丈夫でしょうか」という意見を求めることで、主治医の診断書だけでは分からない職場の実態を踏まえた判断が可能になります。

 診断書が出てきても、主治医は本人の申告をもとに書いていますから、職場での実際の状況とかけ離れていることがあります。診断書の内容に疑問を感じる場合は、産業医面談を通じて別の視点から意見を収集することが有効です。産業医がいない中小企業の場合は、外部の産業保健総合支援センターへの相談も選択肢の一つです。

 そういったことを踏まえた上で、体調不良を前提とした対応(受診勧奨・休職命令)に進むのか、あるいは規律の問題として注意指導に進むのかを判断していきます。判断が難しい場合は弁護士に相談してください。

CHAPTER 04

規律の問題の場合——懲戒処分から逃げてはいけない

 

 体調に問題はないのに単にルール意識が低くて欠勤や遅刻を繰り返している場合、注意指導・懲戒処分が基本的な対応になります。しかし多くの経営者が、ここで重大な誤りを犯しています。

「見切りをつけてからの懲戒処分」は逆効果

 問題社員への対応でよく見られるパターンがあります。しばらく我慢を重ね、「もうこの人はダメだ、辞めてもらうしかない」と見切りをつけてから、やめてもらうための証拠を積み重ねるために注意指導や懲戒処分をやり始めるというものです。

 しかしこれは本末転倒です。辞めさせるためのアリバイ作りとして懲戒処分をやっているということは、外から見ると透けて見えてしまいます。本当に直す気があったのかと疑われると、教育効果も低く、解雇の有効性も危うくなってきます。

 注意指導・懲戒処分は、やめさせるための準備としてではなく、正当な理由のない欠勤・遅刻を直すためにやるものです。まだ治るかもしれない——そういった未定の状態のまま、本気で直させるために実施してください。その積み重ねの先に、改善が見られれば勤務継続、改善しなければ退職勧奨・解雇という流れが自然に開けてきます。

懲戒処分をしない理由の問題点

 懲戒処分をしない理由として経営者から多く聞くのは、「気まずいから」「小さい会社でやったら人間関係が大変になる」「やり方が分からない」というものです。しかし、懲戒処分をせずにいきなり「辞めてほしい」と言う方が、よっぽど気まずいのではないでしょうか。

 退職勧奨に失敗したときのリスクは懲戒処分をしたときの気まずさより遥かに大きく、断られた場合は相当気まずい雰囲気が会社内に蔓延することになります。懲戒処分をしたから気まずくなるというより、いきなり退職勧奨をやってうまくいかなかった場合の気まずさの方がはるかに深刻です。

 やり方が分からないという場合は、弁護士に相談しながらやればいいのです。懲戒処分通知書は弁護士が作成することもできます。自動車の教習で、自信がなくても指導員が隣にいれば路上に出られるのと同じで、弁護士を隣に置いてオンラインで並走しながら進めれば怖いことはありません。

懲戒処分なしにいきなり解雇しようとすることのリスク

 懲戒処分歴のない社員を欠勤・遅刻を理由として有効に解雇することは、その程度がよほど甚だしい場合でない限り困難です。退職勧奨に応じてくれればよいですが、断られた場合は打つ手がなくなります。相手は「解雇しても無効になる」と知っていますから、解決金の相場も高くなります。勢いで強引な退職勧奨を行えば不法行為となるリスクも生じます。

 他方、懲戒処分を繰り返したにもかかわらず改善しなかったという事実が積み重なった場合、相手も「解雇が有効になりうる」と判断して、適正な解決金での合意退職に応じることが合理的な選択になります。懲戒処分の積み重ねは、将来の交渉を有利にするためにも不可欠です。

CHAPTER 05

注意指導で最も大切なこと——事実の記録と5W1H

 

 注意指導において最も大事なのは、5W1Hを意識した「事実」の記録と伝達です。「遅刻が多い」「反省の色が見られない」といった評価的な表現ではなく、「何月何日の何時頃、誰が何をしたのか」という具体的な事実を記録・伝達することが核心です。

なぜ「事実」が大事なのか

 注意指導の際、「最近遅刻が多いね。気をつけてほしい」という話し方をしている会社が多いです。しかしこれでは問題が改善しにくく、後になって「そんなに厳しく言われたことはない」と言われても反論しにくくなります。

 事実に基づいた注意指導であれば、「今月の遅刻回数は〇回、合計〇時間になっています。特に〇月〇日は〇分の遅刻で、午前中の業務に支障が出ました」という形で具体的に示せます。本人も「事実が違う」と言いにくくなりますし、後の労働審判や訴訟においても証拠として機能します。

 裁判においても、主な心理の対象は「何があったか」という事実です。事実が確定してしまえば、それをどう評価するかは大体判断できます。逆に言えば、事実の記録と立証が弱いと、どんなに問題な社員であっても解雇が無効とされることがあります。

 注意指導の目的は2つです。第一に正当な理由のない欠勤・遅刻をなくすこと、第二に証拠の確保。この順番が大事です。証拠の確保を一番の目的にしてはいけません。本気で直させるための注意指導でなければ教育効果が低く、相手にも「証拠作りをしているだけだ」と見透かされます。そしてそれが裁判所にも伝わってしまいます。

口頭での注意指導と書面での注意指導を組み合わせる

 注意指導は口頭だけでは証拠として残りにくいです。口頭で十分に注意指導し、改善が見られない場合は「注意書」「厳重注意書」等の書面を交付して注意指導しましょう。書面には5W1Hを意識した具体的事実を記載してください。

 ただし、書面だけの注意指導は「単に証拠作りをしているだけ」に見えてしまうことがあります。メールでの注意指導も、必ず口頭での注意指導とセットで行ってください。遅刻や欠勤が多い問題社員が「口頭ではなくメールだけで注意するように」と要求してくることがありますが、口頭での注意指導を怠ってはいけません。口頭でのコミュニケーションは、書面やメールとは教育効果が全く異なります。電話でも構いませんので、必ず話すことも並行して行ってください。

 注意した後の記録は、上司への報告書やメールの形でも構いません。何月何日に誰が誰に何を言い、どういった反応があったかを記録してください。

懲戒処分の段階的な実施と就業規則上の根拠

 口頭で注意指導しても改善が見られない場合は、けん責(始末書の提出)から始め、それでも改善しなければ減給、出勤停止と段階的に重い処分へと進みます。いきなり重い処分に踏み切ることは処分の相当性が争われる原因になりますので、段階を踏むことが重要です。

 欠勤・遅刻への標準的な懲戒処分の目安として、正当な理由なく10日以内の間勤務を欠いた場合は減給または戒告、11日以上20日以内は停職または減給、21日以上は免職または停職が参考になります(人事院「懲戒処分の指針について」)。遅刻・早退については繰り返した場合に戒告が目安とされています。これは民間企業での参考にとどまりますが、処分の重さを考える上での一つの指針になります。

 懲戒処分を行うには就業規則上の根拠が必要です。懲戒の種類と懲戒事由が就業規則に定められており、社員が見ようと思えば見られる状態にしておくことが前提として必要です。就業規則が周知されていないだけで懲戒処分が無効とされることもありますので、この点は事前に確認しておいてください。中小企業では特に、就業規則を作ってはあるが棚に入れっぱなしで周知されていないというケースが多く見られます。メールや文書で「就業規則はどこそこに置いてあります」と周知しておくだけでも大きく違います。

 また、懲戒処分通知書を作成する際は、「勤務態度が悪い」「常日頃から問題がある」といった評価的な表現を並べることなく、「何月何日の何時頃、どこで、あなたは誰に対してどのようにこんなことをした」という事実を中心に記載することが最も重要です。このオリジナルの事実の記載が最も難しく、最も大事なところです。書式を引っ張ってきても当社で今起きていることは書けません。弁護士と一緒に作成することをお勧めします。

CHAPTER 06

逆ギレする社員への対応——既得権化のパターン

 

 遅刻を注意すると逆ギレして反省しないというケースでは、まず原因を突き止めることが大事です。原因が分からないと的外れな対応になります。よくあるパターンは2つあります。

パターン①:前の上司が甘くて遅刻が「既得権」化している

 よくあるパターンとして、前の上司が甘くて遅刻しても何も注意しなかった、あるいは見て見ぬふりをしていたために、「うちの会社は多少遅刻しても問題ない」という認識が定着してしまっているケースがあります。「理解のある上司だ」として割と評判が良かったりするわけですが、その上司が変わったり、方針が変わったりしたとたん、「今まで何も言われなかったのに急に注意されてもおかしい」という反発が生まれます。こういった場合の逆ギレは、いわば既得権を侵害される形になりますので、反発は強くなりがちです。

 この場合の対応として、まず「これからはこういうわけにはいかない」ということを書面でしっかり説明することが最初のステップです。「前の上司はそうだったかもしれないけれど、これからは就業時刻までに仕事を開始することを求めます。今後遅刻した場合は注意指導・懲戒処分を行います。また遅刻した時間分の給与を控除していなかった場合は、今後は控除します」と、新しいルールを明確に告知してください。告知した上で、その後少しずつ重い対応にしていくことが適切です。いきなり重い処分に踏み切ることは失敗しやすいので、段階を踏んでください。

パターン②:社長自身が種を蒔いている

 もう一つのパターンとして、社長自らが「うちは成果さえ出してくれれば時間はこだわらなくていいよ」という方針を発信していたために、遅刻が黙認されてきた状態になっているケースがあります。この場合、遅刻を注意しても「社長がそう言っていたではないか」と反発されます。

 こういったケースでは、やって欲しいことをはっきり伝え直すことが先決です。本当は就業時刻に出てきて欲しいのであれば、「時間を気にしなくていい」などという発言をしてはいけません。やって欲しいことを素直に伝えれば、こういった行き違いも生じにくくなります。

 採用に苦労しているからといって、ルール違反を暗黙のうちに認めることはお勧めしません。ルール違反を容認すると、真面目に働いている他の社員がばかばかしくなってやめてしまうことがあります。人材確保で勝つためには、ルールはきちんと守った上で、給与水準や職場環境など別の魅力を提示することが正解です。

従来ルーズだった職場での注意指導の進め方

 従来ルーズな勤怠管理をしていた職場では、今後は遅刻や欠勤を許さない旨を明確に告知した上で、粘り強く注意指導し、それでも改善しないときに懲戒処分などを行うことをお勧めします。いきなり懲戒処分に踏み切ることは、「パワハラだ」と言われるリスクや処分の相当性を争われるリスクがありますので、まず新しいルールを周知・告知することが先です。

 また、遅刻した時間分の給与を控除できているかどうかも確認してください。ノーワーク・ノーペイの原則(働いていない時間分の給与は支払わなくてよい)は労働法の基本です。遅刻しているのに満額給与が支払われているとすれば、まずそこを是正することが先決になる場合もあります。

CHAPTER 07

年休を使い切り欠勤する社員への対応

 

 毎年年休を使い切って欠勤するという社員について、まず会社として理解しておいていただきたいことがあります。年次有給休暇を取得することは労働者の権利であり、使い切ることも権利の行使です。年休を使い切ること自体を処分の理由にすることはできません。

「年休を使い切らないようにしてほしい」は言ってはいけない

 「年休をある程度取っておいたらどうか」「計画的に使ってほしい」と思う気持ちは分かります。しかし、上の立場の人間がこういった発言をすることは、権利の行使を妨げる方向の発言になりかねません。特に社長自身がこういった発言をした場合、問題になりやすいです。

 前もって行動を縛るように「年休を残しておけ」と言うのではなく、事後的に「あなたは年休使い切り後にこれだけ欠勤がありましたよ」と人事評価に反映することは問題ありません。事後的な評価への反映と、事前の権利行使への干渉はまったく別物です。ここをきちんと区別してください。

年休使い切り後の欠勤に焦点を当てる

 処分を検討できるのは、年休を使い切った後の欠勤についてです。そしてその欠勤がサボりによるものか、体調不良(傷病欠勤)によるものかで対応が大きく変わります。

 サボりによる欠勤であれば、欠勤日数・会社の業務に与えた悪影響・本人の立場の重さなどを考慮した上で注意指導・懲戒処分を行うことができます。ただし1日や2日の欠勤であれば、注意指導や軽い懲戒処分にとどまることが多いです。部長など立場・責任の重い方が大事な仕事をほったらかしにして休んだような場合は、より重い処分が検討できます。ひどい場合は退職勧奨や解雇を検討することにもなります。

 体調不良(傷病欠勤)の場合は、傷病給食制度がある会社はその制度に基づいて対応します。傷病給食制度がない会社では、体調不良で出勤できないことをルール違反として懲戒処分の対象にすることはなかなかしにくいです。ノーワーク・ノーペイで給与を支払わない、あるいは人事評価で考慮するといった対応が現実的になります。

 いずれにせよ「年休の使い切り方が悪い」という方向ではなく、「年休使い切り後の欠勤の内容・程度」に焦点を当てた対応をしてください。

CHAPTER 08

突然出社しなくなり連絡が取れない場合の初動

 

 社員が突然出社しなくなり連絡が取れないという事案は、欠勤問題の中でも対応の難易度が特に高いケースです。連絡が取れる場合は本人の意向を確認しながら対応できますが、連絡が取れない場合は本人の意向が分からない中での判断を迫られます。

当日から、毎日、複数の手段で連絡を試みる

 まず何よりも大事なのは、当たり前のことを当たり前にやることです——連絡を取る努力を継続的に行うことです。これが後の対応のすべての土台になります。

 出社すべき社員が出社しない場合、就業時刻になったらできるだけ早い段階で連絡を試みてください。就業が例えば9時の会社であれば、10時ごろまでには電話の1本は入れるべきです。電話・メール・LINE・メッセンジャーなど、普段会社で行っている連絡手段を使って問い合わせをしてください。

 一度連絡を試みて繋がらなかったからといって放置してはいけません。翌日も欠勤が続けば翌日も連絡する。可能であれば1日に複数回試みることをお勧めします。この対応を毎日継続してください。「連絡するのは管理職の仕事だ」と任せっぱなしにすると、管理職もだんだん嫌になってサボり始めることがあります。連絡を取っているかどうか、社長が毎日確認するようにしてください。

 この当たり前の積み重ねが、後の法的な紛争においても「会社として誠実に対応した」という事実として機能します。当たり前のことをしっかりやっているということの価値は本当に高いのです。

数日経っても連絡が取れない場合——自宅訪問・身元保証人への連絡

 何日も連絡の努力を続けても全く応答がない場合は、自宅を訪問することを検討してください。最近の状況からすると、精神的に落ち込んでいる(うつ状態・適応障害など)ケースで連絡がうまく取れないことが多いですが、何かの事件に巻き込まれている可能性も否定できません。特に長年勤めている正社員であれば、自宅に行って様子を確認するぐらいのことはやるべきです。

 自宅への距離が遠い、会社規模的に自宅訪問が難しいという場合は、身元保証人や家族への連絡を検討してください。「最近出社してこないし連絡も取れなくて心配しています」というスタンスで連絡を取ると、協力的な対応をしてもらえることが多いです。ご両親などに連絡すれば、本人に「きちんと会社と連絡を取るように」と促してもらえることもあります。

長期間連絡が取れない場合——就業規則への当然退職事由の規定

 連絡の努力を続けても長期間応答がない場合、労働契約の終了について検討しなければなりません。一方的に退職扱いにすることは避けてください。後から「解雇された」「退職したつもりはない」と主張されるリスクがあります。

 実務的に有効な方法の一つは、就業規則に当然退職事由として「社員が会社と音信不通または行方不明となり、欠勤が1か月(休日を含む)以上に及んだ時は退職とする」という規定を設けておき、周知させておくことです。こういった規定があれば、通知しなくても自動的に退職の効果が生じます。5日や10日ではさすがに短すぎますが、1か月程度の期間を取ることで合理性が認められる可能性が高くなります。

 このような規定がない会社では、解雇の手続きを取ることになりますが、連絡が取れない相手への解雇通知は到達の証明という難しい問題があります。普通郵便が郵便受けに入れば到達とは言えますが、本人が行方不明で住んでいる形跡もない場合は、郵便受けに入れただけでは解雇通知が届いたとは言いにくいです。この問題の対処については弁護士に相談しながら進めてください。

CHAPTER 09

弁護士との並走——ZoomやTeamsでの短時間相談

 

 欠勤・遅刻問題の対応は、個別の事案に応じた判断の連続です。書籍に書いてある一般論では対処しきれないことが多く、「今この会社で起きていることに応じたアドバイス」が必要です。弁護士に相談するというのは、法律や判例を教えてもらうためだけではありません。今まさにこの事案にぴったり合った対応を一緒に考えてもらうことが弁護士への相談の本質です。

 以前は弁護士に相談するためには事務所まで出向かなければならず、片道30分・打ち合わせ1時間・帰り30分と、時間的な負担が大きかったです。しかし今はZoomやTeamsを使ったオンラインの打ち合わせが当たり前になりました。移動時間がない分、1回1回の打ち合わせが短くてよく、タイムリーな相談が可能になりました。

 例えば「さっきこういう風に注意したら、こう言い返されてしまった。次はどう言えばよいか」という相談を、10分や15分の短い打ち合わせで行うことができます。懲戒処分通知書を画面共有しながら一緒に作成することもできます。その都度の状況に合わせたアドバイスをもらいながら進めることで、自力でやろうとするよりも格段に失敗のリスクが減ります。

 弁護士というのは自動車教習の指導員と同じようなものです。自信がなくても、指導員が隣にいれば路上に出て運転できます。社長は本業に集中していただきながら、問題社員への対応というアウェーな場面は弁護士と一緒に進める——そういった役割分担が、最も効果的な問題解決の方法だと考えています。

Q & A

よくあるご質問

 

Q.「事前に連絡さえすれば休んでよい」と思っている社員にどう対応すればよいですか。

A. 有給休暇の範囲内であれば取得は権利ですが、有給を使い切った後の欠勤や正当な理由のない遅刻は、事前連絡の有無にかかわらず労働契約違反です。「連絡さえすれば休める権利がある」というものではないということを、書面で明確に伝えることが必要です。この認識を放置すると職場に定着してしまい、後の注意指導が効きにくくなります。

Q.何回注意指導・懲戒処分をすれば解雇できますか。

A. 回数で機械的に決まるものではありません。欠勤・遅刻の程度・頻度・会社の業務への影響・注意指導の内容・本人の改善状況など、様々な事情を総合的に判断します。また「懲戒処分を何回やれば解雇できる」という発想自体が本末転倒です。注意指導・懲戒処分は本気で直させるために行うものであり、その積み重ねの先に解雇の可能性が生まれます。解雇を検討する段階になったら必ず弁護士に相談してください。

Q.体調不良で遅刻・欠勤が多い社員に注意指導はできますか。

A. 体調不良があっても、遅刻・欠勤が就業規則に違反することは変わりません。体調への配慮を示した上で改善を求める書面による注意指導を行うことは可能です。ただし、体調不良の状況を一切考慮しない一方的な追及はパワーハラスメントと評価されるリスクがあります。受診の勧奨・診断書の確認も行いながら、体調への配慮と職場規律の維持を両立させる姿勢で進めてください。

Q.年休を使い切って欠勤する社員に「年休を残しておくように」と言えますか。

A. 言ってはいけません。年休を使い切ること自体は権利の行使であり、上の立場の人間がやめるよう求めることは年休取得妨害と受け取られかねません。こういった発言は会社のイメージを悪くするだけです。代わりに、年休使い切り後の欠勤の問題に焦点を当て、その部分について注意指導や人事評価への反映を検討してください。

Q.突然出社しなくなった社員をそのまま退職扱いにしてよいですか。

A. 一方的に退職扱いにすることは避けてください。後から「解雇された」「退職したつもりはない」と主張され、解雇無効の問題に発展することがあります。就業規則に一定期間の音信不通を当然退職事由として定めておくことが有効ですが、そういった規定がない場合は法的手続きが必要になることがあります。連絡の努力を記録に残しながら継続した上で、具体的な対応方針は弁護士に相談してください。

Q.注意しても逆ギレされてしまい、自力ではどうにもなりません。どうすればよいですか。

A. 一旦舐められてしまうと対応の難易度は上がります。自力でその秩序を回復するのが困難な場合は、弁護士に相談しながら進めることをお勧めします。相手の言動への対応方針を弁護士と一緒に準備した上で臨むことで、秩序を回復できるケースは多くあります。ZoomやTeamsでのオンライン打ち合わせを活用しながら進めていきましょう。

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SUPERVISOR弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。欠勤・遅刻問題でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 
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最終更新日 2026/05/10