労働問題1034 体調不良を理由に遅刻を繰り返す社員

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この記事の要点

「体調不良なのでしょうがない」と放置してはいけない

遅刻が多い社員を放置すると、周囲の社員の負担が重くなる。また体調不良のまま働かせ続けて悪化した場合、会社の安全配慮義務違反を問われることがある

まず確認すべきは「出社してきた後の仕事の状況」

出社後に仕事が問題なくできているか、それとも出社してもまともに働けていないか——この1点が対応の方向性を大きく左右する。体調不良の重さと実態が、ここで分かる

「やる気がない」の問題ではなく「労務提供ができているか」の問題

病気のせいで働けなくなっている人に道義的な批判をしてもしょうがない。客観的に「労働契約で予定されている仕事ができているか」を事実として確認することが大事

休ませる場合の給与の扱いは「労務提供できているか」で決まる

クオリティが低いなりにできていた社員を休ませると、満額給与を支払う義務が生じることがある。「できていない」と立証できている状態であれば欠勤扱いで給与を支払わなくて済む

01「体調不良なのでしょうがない」と放置してはいけない理由

 体調不良を理由に遅刻が多い社員がいる場合、「本人が頑張ろうと思っても頑張れないのだからしょうがない」と感じて、とりあえず放置してしまっている経営者は少なくありません。しかし、この「とりあえず放置」には2つの深刻な問題があります。

 第一に、周囲の社員への影響です。体調不良による遅刻が多い社員がいると、特に午前中、就業時刻からしばらくの間の戦力として計算できない社員がいることになります。その分、一緒に働いている周囲の社員たちの負担が重くなります。周りからすれば、当てにできない同僚がいることで、自分たちが割を食っている状態が続くわけです。

 第二に、安全配慮義務の問題です。体調不良の社員をそのまま働かせ続けて体調がどんどん悪化した場合、「会社のせいで体調が悪化した」「体調が悪いと分かっていたのに働かせ続けた」という責任を問われることがあります。会社には社員の安全と健康に配慮する義務(安全配慮義務)があり、体調が悪いと分かっていながら何もしないことは、その義務を果たしていないことになりかねません。

 遅刻レベルの話とはいえ、「このままこの方を対応せずに、遅刻しながら働かせていていいのか」という問いを、経営者として自分に向けていただく必要があります。

02まず状況把握——面談・産業医・主治医への照会

 体調不良による遅刻問題に対応するには、まず状況把握と事実の蓄積が大事です。客観的にどんな状況にあるのかを正確に把握しないと、その後の対応方法も決まってきません。

本人との面談——情報収集の第一歩

 最初にやるべき最も簡易な方法は、本人としっかり面談をして現状を確認することです。「今月もう6日も遅刻してきているよ。体調が悪いって聞いているけど、どういった体調の悪さなのか、どういった病気なのか、診断書は出してもらえるか」といった話を、会議室に呼んで腰を据えてしてください。

 本人から情報収集することが目的ですから、詰め寄るのではなく、状況を確認するスタンスで臨んでください。そういった情報収集をやって、納得できるような状況であればある程度それで判断の材料が揃います。

産業医面談の活用

 もう少ししっかり踏み込んだ対応が必要なときは、産業医がいる会社であれば産業医面談をお願いして、産業医の意見を聞いた上で対応することが必要になります。「このような状況で、この病気でこのまま働かせ続けて大丈夫でしょうか」という意見を産業医から取ることで、会社として安全配慮義務を果たしながら判断できるようになります。

 産業医がいない中小企業の場合は、外部の産業保健総合支援センターへの相談を検討してください。

主治医への照会(本人の同意を得た上で)

 診断書が出てきても、「実際の働き方・職場での状況と、診断書の内容がどうも違うな」と疑問を感じることがあります。そういった場合は、本人の同意を得た上で主治医と連絡を取り、必要な質問を手紙あるいは面談などの形で収集する努力をしてみるとよいでしょう。

 努力した結果、断られたりうまくいかなかったりすることもありますが、それはしょうがないことです。本当に疑問があるような場合は、こういった対応も合わせてやってみてください。

03最初に確認すること——出社後の仕事の状況

 体調不良による遅刻という相談を受けたとき、私がまず確認するのは「遅刻はしているとして、出社してきた後の仕事の状況はどうですか」という点です。これが対応の方向性を大きく左右します。

出社後の状況 対応の方向性
出社後は問題なく仕事ができている 病気と遅刻の因果関係があるかを確認。因果関係があれば、ひとまず遅刻分の時間割り計算で給与を減額しながら働いてもらい続ける選択もある。因果関係がなければ仮病の疑いも視野に
出社してもまともに仕事ができない 体調が相当悪い可能性が高い。「やる気」の問題ではなく、客観的に「労働契約で予定された仕事ができているか」を事実として確認し、休ませる方向を検討する。産業医・弁護士と連携して進める

出社後に問題なく仕事ができている場合

 出社後の仕事には問題がないということになると、まず「その病気とされるものと遅刻との間に、本当に因果関係があるのか」というチェックをすることになります。

 因果関係があると確認できれば、「病気のせいでこうなっているのだから、ある程度しょうがない」という方向で考えます。遅刻してきても、出社後に契約で予定された程度の仕事は一応やったことになるなら、その分の時間割り計算で給料を減らせばよいぐらいの話として、そのまま働いてもらい続けるという選択肢があります。

 一方、病気と遅刻の因果関係がなさそうだと判断できる場合は、仮病のようなものかな、あるいは何か別な理由で遅刻しているのかな、ということもチェック項目の一つとして頭の中に浮かびます。決めつけるわけではありませんが、そういった可能性も視野に入れながら確認を続けていくことが大事です。

04出社後も仕事がまともにできない場合——最も難しいケース

 遅刻して出社した後も、仕事がまともにできないという方がいます。これは最も対応が難しいケースです。病気で遅刻を何回もするような方ですから、その病気の影響で仕事もなかなか大変だということは不思議ではありません。

「やる気」の問題ではなく「できているか」の問題

 もしその方が病気のせいでそうなっているとしたら、本人に道義的な意味で非難してもしょうがないのです。「やる気を出せ」と言っても、やる気が出せるぐらいなら最初からやっているわけです。少なくとも心の中でそう思うのは普通のことです。

 ですから、やる気の問題として捉えるのではなく、「客観的に、この方は労働契約・雇用契約で予定されている仕事ができる状況なのだろうか」という問いかけが大事になります。パフォーマンスが悪い場合については、この観点からしっかり確認する必要があります。

事実として記録する——評価ではなく具体的な出来事を

 上司が「働けていない」という評価的な結論を持つことも大事ですが、それだけでは不十分です。中心的なものとしては事実の確認と記録が必要です。

 「何月何日にこういう仕事をやらなければいけなかったのに、やれなかった」「やったけどこの程度の質だった」「こういうふうに指導したが、実際にはやろうとしたけどできなかった、あるいはそんなのできませんと断ってきた」——いつ、どこで、その方がどのように何をやったのかということを具体的に把握し、記録していくことが必要です。評価的な結論は最後に付け加える程度で十分です。

産業医に状況を報告して意見をもらう

 こういった普段の仕事の状況を産業医にしっかり報告した上で、「このような方を、この病気で働かせ続けて大丈夫でしょうか」という意見を求めてください。

 産業医が「働かせて大丈夫ですよ」という意見であれば、そのまま働いてもらい続ける選択になります。この場合は、体調悪化のリスクはそれほど高くないわけですから、主に「周りの社員の負担が偏ってしまうことをどうするか」という問題として対処することになります。非効率な状態は続くかもしれませんが、大きな紛争にはなりにくいケースです。

 一方、産業医が「このまま働かせたら体調が悪化します。とてもこの仕事ができる状態ではありません」という結論になった場合は、休ませるべきだということになります。

05休ませる判断と給与の扱い

 産業医意見などを踏まえて休ませる方向になった場合、まず軽く「休んだ方がいいのではないですか」と声をかけることから始めます。それで本人が納得して休んでくれれば、それで十分です。

 しかし、「休む・休まないは好きにしてください」という聞き方ではなく、「休んだ方がいいのでは」という程度の声のかけ方でも済まない場合は、「休みなさい」という命令的な言い方をしなければならなくなるかもしれません。この「休ませる命令」の言葉の使い方は、給与の問題にも直結しますので、その段階になったら弁護士に相談してください。

給与を払うかどうかは「労務提供ができているか」で決まる

 休ませる場合、給与を払うかどうかという問題が出てきます。これを決めるのは、「本人が労働契約で予定されている程度の労務提供ができているかどうか」によります。

 もし、クオリティは低いなりにも一応は契約で予定された程度の仕事はやったことになるのに休ませたという場合は、給与を満額払いなさい、少なくとも休業手当分は払いなさいという話になってしまいます。「会社都合で休ませた」と評価されるからです。

 ところが、「契約で予定されているような仕事がもうできていない」とはっきり立証できる状態になっていれば、話が変わります。休ませても欠勤と同じになりますから、給与を払わずに済むことになりますし、そもそも休ませるという判断自体が非常に正当なものだったと言えるようになります。

休ませる場合の給与の整理 「クオリティが低いなりにも一応できていた」のに休ませた場合 → 休業手当(平均賃金の60%以上)の支払い義務が生じる可能性がある
「できていない」と立証できている状態で休ませた場合 → 欠勤扱いで給与を支払わなくて済む(傷病欠勤として傷病給食の要件を満たせば給食命令も可能)

 だからこそ、日頃から「この方が仕事できていない」という事実を具体的に記録し積み重ねておくことが重要です。「なんとなく仕事できてない感じがする」ではなく、「何月何日に何の仕事をやれなかった」という事実の記録が、後の判断の根拠になります。

 病気が絡んでくる場合は、医師・産業医などのアドバイスも踏まえた対処が必要です。また、契約論的な法律的な対応については弁護士に相談して進めてください。言葉のやり取りのアドバイスも受けながら進めることが大事です。

06欠勤が続く場合——傷病給食命令のタイミング

 欠勤状態が続いた場合については、所定の日数を欠勤したら給食(傷病給食)を開始させるという会社も多いと思います。この制度をしっかり活用することが大事です。

 傷病給食命令を出す際は、弁護士に相談することを強くお勧めします。実際の相談を受けていると、ルール通りにしっかり給食命令を出せていないケースが案外多いです。給食期間も主治医の診断書に書いてある期間に合わせて書いてしまっていたり、そもそも命令書を正式に出していなかったりすることがあります。給食命令書は弁護士が一緒に作成することもできますので、ご相談ください。

07出社と欠勤を繰り返す場合——断続的な欠勤への対応

 一旦休ませたけれど、しばらくして「もういいでしょう」ということで戻ってきた。ところがまた休むことになってしまった——というケースがあります。このような断続的な欠勤への対応についても解説します。

通算する規定がある会社の場合

 一旦欠勤がストップしてもまた同じ病気や類似の病気での欠勤が開始したら、それは通算しますよというルールがある会社であれば、そのルールに従って対処してください。

通算規定がない会社の場合——包括条項の活用

 問題は通算に関する規定がない会社です。そういった場合、給食事由としてよくあるのが「全快に同程度の事由がある場合」などという包括条項です。連続欠勤ではなくても給食を開始させるための要件として、こういった規定が設けられている会社も結構あります。

 この場合、どれぐらい休めば連続欠勤ではなくても給食を開始できるのかを考えると、「連続欠勤だったら何日という要件と同程度の状況にある」という言える状態であることが一つの目安になります。最も指標となるのは欠勤の日数で、途中に中断があったとしてもそれなりの欠勤日数に達していれば、この要件を満たすと言われやすくなります。

 また実際に出てきたときの仕事の状況やその他の事情を踏まえて、「連続欠勤と同程度の支障が生じています」と言える状態になったら、包括条項を使って給食をスタートさせることも考えられます。ただし、このさじ加減は難しいことが多いので、弁護士に相談しながら進めるようにしてください。

遅刻しながら出勤しているケースは判断が特に難しい

 ずっと休んでいるというケースと違い、遅刻しながらも一応出勤しているという状況の場合、こういった給食命令などの判断は特に難しくなります。「でも手も足も出ない」かというと、そんなことはありません。

 契約で予定されている程度の労務提供ができていないという判断ができる状況になってくれれば——傷病のせいで契約で予定された労務提供ができていないという状況が立証できれば——医師・弁護士のアドバイスを踏まえた上で休ませることもできますし、要件を満たせば給食スタートということもできます。

 いずれにせよ遅刻しながらも出勤しているという前提があるケースは判断が複雑で、一人で判断しようとすると難しい局面が続きます。弁護士と並走しながら進めることをお勧めします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。欠勤・遅刻問題でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 体調不良で遅刻が多い社員に対して注意指導はできますか。

A. 体調不良があっても、遅刻が就業規則に違反することは変わりません。ただし、体調不良の状況を一切考慮しない一方的な追及はパワーハラスメントと評価されるリスクがあります。体調への配慮を示しながら、受診の勧奨・診断書の確認・面談による現状確認を行い、その上で必要に応じて書面で改善を求めるというアプローチが基本です。遅刻の程度や体調の状況によって対応が変わりますので、具体的な進め方は弁護士にご相談ください。

Q2. 体調不良の社員に診断書の提出を求めることはできますか。

A. 就業規則に診断書の提出に関する規定があれば、それに基づいて求めることができます。規定がない場合も、会社として適切な対応をとるために必要な情報として求めることは合理的な範囲内です。「今月これだけ遅刻が続いているし、体調不良とのことなので、どういった状況なのか診断書を出してもらえますか」という形で求めることは問題ありません。半年も週2日休み続けているような状況であれば、診断書の提出を求めることは十分正当です。

Q3. 「体調不良だから休ませる」と言ったのに、社員が「働ける」と言い張ります。どうすればよいですか。

A. 「働けます」という言葉だけでは対応を変える必要はありません。客観的にどれほど仕事ができていないかを具体的な事実で示すことが重要です。「先日こういう仕事を3時間かけても終わらなかった。通常は30分の仕事だ」という具体的な事実を示した上で、働けるという根拠を示すよう求めてください。それでも折り合いがつかない場合は、産業医や弁護士と連携して対応方針を決めることが必要です。

Q4. 体調不良の社員を強制的に休ませた場合、給与を払い続けなければなりませんか。

A. 「労働契約で予定された程度の労務提供ができているかどうか」によります。クオリティは低いなりにも一応できていた状態で休ませると、「会社都合で休ませた」として休業手当(平均賃金の60%以上)の支払いが必要になる可能性があります。一方、「契約で予定された仕事ができていない」と具体的な事実で立証できている状態であれば、欠勤扱いで給与を払わなくて済むことになります。この判断は弁護士に相談した上で行ってください。

Q5. 一旦休職させて戻ってきたのに、またすぐ休むようになりました。どう対処しますか。

A. 就業規則に「同一または類似の病気での欠勤は通算する」という規定があれば、それに従って再び傷病欠勤の日数を積算して給食命令を出すことができます。そういった規定がない場合は、包括条項(「全快と同程度の事由がある場合」など)を活用して給食をスタートさせることが考えられます。ただし、断続的な欠勤への対応はさじ加減が難しいですので、弁護士に相談しながら進めることをお勧めします。

最終更新日:2026年5月10日

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