労働問題1040 横領・不正受給が発覚した場合の初動
解説動画
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気づいたら早く動く——「泳がせる」は追加被害を招くだけ 不正行為をやっている社員は、バレたと分かった時点でほぼストップする。早く動くことが追加の不正防止に最も効果的 |
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まず「事実確認」——特に金額(いつ・いくら・どんな方法で)の特定が重要 返還請求も懲戒処分も刑事告訴も、「何が起きたのか」が確定していなければ動けない |
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顛末書より事情聴取書——弁護士が質問・書面化・署名を取る 顛末書は肝心の事実が書かれないことが多い。弁護士が質問しながら書面にまとめ署名させる事情聴取書の方が話のすり替えを防げる |
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不正しにくい職場を作る——信頼と丸投げは別物 見られていないと思うとついやってしまう人が一定数いる。不正できない環境を作ることが経営者としての配慮 |
目次
01発覚したらまず早く動く——「泳がせる」という発想が危険な理由
横領や手当の不正受給が発覚した際に最初に大事なのは、早く動くことです。なぜかというと、不正行為をやっている社員は「バレた」と分かった時点でほぼストップするからです。
不正行為をやってしまう人は、少なくとも今現在は見られていない・気づかれていないと思ってやっています。会社が気づいていることが伝わった段階で、不正はほぼ止まります。早く動くことが追加の被害を防ぐ最も確実な手段です。
「泳がせておけば仲間も捕まえられる」という発想は危険です。そんなに大規模な不正が社内に蔓延している状況になっている時点で、会社の管理体制として相当まずいことになっています。また泳がせている間にも被害は積み重なります。気づいたら早めに手を打つことが原則です。
02最初にすべきことは「事実確認」——金額の特定が特に重要
横領・不正受給が発覚した際に最初にすべきことは事実確認です。何が起きたのかを確定することが、その後のすべての対応の土台になります。
事実がはっきりしなければ何もできません。返還請求をするにも金額が分からなければ請求できません。懲戒処分も事実に基づいてやるものですから、事実がはっきりしなければ処分の根拠がありません。解雇も刑事告訴も同様です。
事実確認で確認すべき中心は、いつ・どこで・誰が・どのような方法で・何をやったのかです。横領・不正受給では、特に「いつの時点でいくらを不正に取得したのか」という金額と時期の特定が重要です。金額が特定できなければ返還を求める金額が分かりませんし、懲戒処分通知書にも事実として記載できません。事実確認の段階から金額・時期・方法の一覧表を作っていくことが、後の対応を格段にやりやすくします。
03客観的な資料による事実確定
事実を確認する方法として最も信用性が高いのは、客観的な資料です。本人の口から出た言葉は後から否定されることがありますが、客観的な資料はそれが難しくなります。
客観的な資料は材料のようなものです。それだけでは意味が分かりにくいこともありますが、本人からの聞き取りと照らし合わせることで、何が起きたのかを立体的に確定できます。
04顛末書の限界——出てきたものは突き返さない
多くの会社では、本人に顛末書や事情説明書を書かせて提出させることをやっています。これ自体には意味がありますが、悪いことをしたのは自分ですから正直に詳しく書きたくないという心理が働きます。その結果、「肝心な事実が書かれていないもの」「言い訳ばかりのもの」が提出されることが非常に多いです。
出てきた書面が不十分だからといって突き返して書き直させることはやめてください。出てきたもの自体が証拠になります。不十分な内容でも後の事実認定に役立つことがありますし、言い訳ばかりであることを示す証拠として使えることもあります。追加の説明が必要な場合は、元の書面はそのまま持っておいた上で、別途追加の説明を求めてください。
なお「始末書」という名称を使うことには注意が必要です。就業規則の懲戒処分の定めに「始末書の提出(けん責)」という処分が規定されている会社では、始末書を提出させた後にさらに重い懲戒処分を行うと「二重処罰だ」という反論を受けることがあります。「顛末書」「事情説明書」などの名称を使う方が無難です。
05事情聴取書の作成——弁護士が行う聞き取りの手法
顛末書の限界を補う、より効果的な方法が事情聴取書の作成です。弁護士が質問を行いながら回答を書面にまとめ、内容を確認の上で署名させるという手法です。警察が取り調べで行う手法と同様のアプローチです。
この方法の最大のメリットは、聞きたいことを聞けることです。本人が回答をはぐらかそうとしても、質問自体は聞きたい内容で行えます。慣れた弁護士であれば、はぐらかしがあってもすぐ分かりますから、「そういうことではなくてこれはどうですか」とすぐに追い直すことができます。
いろんな角度から逃げられないように質問していくと、言っていることの矛盾がはっきりしてきます。矛盾が積み重なると相手は苦しくなり、最終的には本当のことを言わざるを得なくなることが多いです。
事情聴取書の作成は、会社の方が不慣れでやりにくい場合は弁護士が行うことができます。事務所会議室への来訪・会社への出向・ZoomやTeamsを使ったオンラインでの実施など、状況に応じた方法で対応できます。
06事実確定後の対応——返還・処分・刑事告訴
事実がある程度確定した後は、損害回収・懲戒処分・刑事告訴という3つの対応を進めていきます。いずれも事実確定が土台になります。
07不正しにくい職場を作る——経営者の配慮として
目の前の問題への対応と並行して、経営者として考えていただきたいことがあります。仕事を信頼して任せることと、見ていないこと(丸投げ)は別物です。
同じ人でも、しっかり管理されていて不正をやろうと思ってもできない環境ならやりません。しかし簡単に不正できそうな環境があれば、後でバレるかもしれないと思っていてもついやってしまう人が一定数います。
不正ができない環境を作ること——これは、不正をやってしまいそうな人からその人自身を守ることでもあります。見られていると分かる環境の中では不正に手を染めずに済んだ人が、丸投げにしてしまった結果不正をやってしまうケースは実際にあります。細かいことをうるさく言い過ぎる必要はありませんが、見られていると分かる環境を作ることが、経営者の大切な役割の一つです。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。横領・不正受給問題でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 横領が発覚しましたが、まだ証拠が十分ではありません。今すぐ動いて大丈夫ですか。
A. 証拠が十分でなくても、できる限り早く動いてください。証拠収集・情報整理を並行して行いながら、弁護士に相談して事情聴取書の作成方針を決めることをお勧めします。証拠が不十分な状態でも弁護士が質問を組み立てて聞き取りを行うことで事実が明らかになっていくことが多いです。動けないでいる時間が長くなるほど追加の被害リスクが高まります。
Q2. 顛末書を出させましたが、肝心のことが書かれていませんでした。どうすればよいですか。
A. 出てきた書面は突き返さずにそのまま持っておいた上で、別途追加の説明を求めてください。不十分な内容の顛末書でも証拠になります。今後は顛末書ではなく事情聴取書(弁護士が質問・書面化・署名)の形で聞き取りを行うことを検討してください。肝心なことを書かれない問題が起きにくくなります。
Q3. 「始末書」という名称で書面を出させました。その後に懲戒処分することはできますか。
A. 注意が必要です。就業規則の懲戒処分の定めに「始末書の提出(けん責処分)」という規定がある場合、始末書を提出させた行為が既にけん責処分を行ったと評価される可能性があります。その上でさらに重い処分を行うと「二重処罰」という反論が出ることがあります。今後は「顛末書」「事情説明書」などの名称を使い、懲戒処分とは切り離す形にしておくことをお勧めします。詳細は弁護士にご相談ください。
Q4. 本人に事情を聞いたところ「自分からやめます」と言い出しました。このまま退職させてよいですか。
A. 気を緩めてはいけません。口頭の申し出だけでは不十分で、退職届を確実に取得した上で、会社が承諾した旨を書面またはメールで速やかに伝えることが必要です。また懲戒解雇が必要な事案かどうかの判断は、退職日を基点として2週間以内に行わなければなりません。自主退職の申し出が来た段階で早急に弁護士にご相談ください。
最終更新日:2026年5月10日