労働問題168 過失相殺・素因(寄与度)減額と損益相殺はどちらが先に行われますか?

この記事の要点

過失相殺・素因(寄与度)減額と損益相殺の計算順序は、まず過失相殺・素因減額を先に行い、その後に損益相殺(労災保険給付等の控除)を行います(鹿島建設・大石塗装事件最高裁昭和55年12月18日第一小法廷判決)。

1. 計算順序——過失相殺・素因減額が先

 過失相殺・素因(寄与度)減額と損益相殺(労災保険給付等の控除)が競合する場合の計算順序は、過失相殺・素因減額は損益相殺に先立って行われます(鹿島建設・大石塗装事件最高裁昭和55年12月18日第一小法廷判決参照)。

2. 計算順序が重要な理由——具体例で解説

 計算順序によって最終的な使用者の賠償額が異なります。具体的な数値例で確認します。

 【前提】全損害額1,000万円、過失相殺30%(労働者の過失)、労災保険給付200万円の場合:

 【正しい順序:過失相殺→損益相殺】
①過失相殺後の損害額:1,000万円×(1-30%)=700万円
②損益相殺(労災給付控除):700万円-200万円=500万円(使用者の最終賠償額)

 【逆の順序:損益相殺→過失相殺(誤り)】
①損益相殺後の損害額:1,000万円-200万円=800万円
②過失相殺:800万円×(1-30%)=560万円(使用者の最終賠償額)

 正しい計算順序(過失相殺→損益相殺)の方が使用者の賠償額は500万円となり、逆の順序より60万円少なくなります。この差は損害額や給付額が大きくなるほど拡大します。

3. 実務上の意義

 安全配慮義務違反・不法行為に基づく損害賠償請求を受けた場合、①被災者の過失相殺・素因減額が認められるか、②労災保険給付の受給額はいくらか、③両者の計算順序を正確に把握した上で、総賠償額の見積りと和解交渉戦略を立てることが重要です。

損害賠償額の計算・過失相殺・素因減額・損益相殺を含む賠償総額の把握と和解交渉戦略について、弁護士へのご相談をお勧めします。→ 経営労働相談はこちら

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弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

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最終更新日 2026/04/10

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