労働問題165 安全配慮義務違反の損害賠償に社員の弁護士費用まで含まれるか【会社側弁護士が解説】

 安全配慮義務違反や使用者責任による損害賠償請求を受けた場合、会社は社員の弁護士費用まで賠償する必要があるのでしょうか。この点は、実際の賠償額の計算において重要な問題です。

 結論として、不法行為・安全配慮義務違反(債務不履行)のいずれの構成においても、相当額の弁護士費用が損害賠償の対象となることが最高裁判例により確立されています。本ページでは、弁護士費用の賠償に関する判例とその実務上の含意について、会社側・使用者側専門の弁護士が解説します。

01不法行為の場合の弁護士費用の取扱い

 不法行為(民法709条・715条)に基づく損害賠償請求においては、最高裁昭和44年2月27日第一小法廷判決により、「不法行為の被害者が損害賠償を請求するために訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである」と判示されています。

 この判決により、不法行為の場合に相当額の弁護士費用が損害賠償の対象となることは確立した最高裁判例となっています。

02安全配慮義務違反(債務不履行)の場合の弁護士費用

 安全配慮義務違反(債務不履行)の場合については、最高裁平成24年2月24日第二小法廷判決が重要です。この判決は、「使用者の安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求するため訴えを提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、上記安全配慮義務違反と相当因果関係に立つ損害というべきである」と判示しました。

 この判決により、安全配慮義務違反の債務不履行に基づく請求においても、相当額の弁護士費用が損害賠償の対象となることが最高裁により明確にされました。

03実務上の含意と総賠償額の計算

 弁護士費用が損害に含まれることは、実際の賠償額の計算において重要な意味を持ちます。例えば、認容された損害額が1,000万円の場合、弁護士費用は認容額の約10%程度(100万円)が損害として認容されることが多く、合計1,100万円程度の賠償命令が出ることになります。

 これは会社側にとって無視できない金額です。安全配慮義務違反による損害賠償請求を受けた場合は、弁護士費用まで含めた総賠償額のリスクを適切に評価した上で、和解交渉・訴訟対応の方針を検討することが重要です。

04弁護士費用賠償リスクを予防するために

 弁護士費用まで含めた賠償リスクを念頭に置くと、安全配慮義務の履行が不十分な状態での問題放置は非常に高いコストを伴うことが分かります。長時間労働の管理・ハラスメント防止・精神疾患サインへの早期対応など、予防的な安全配慮義務の履行に取り組むことが、結果として会社にとっての最善のリスク管理策です。

 安全配慮義務違反の損害賠償リスク・和解交渉戦略・弁護士費用を含む総賠償額の見積りについては、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。使用者側専門の弁護士として、会社側の立場から実務的なアドバイスを提供しています。

SUPERVISOR
弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。安全配慮義務違反の損害賠償リスクでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 弁護士費用はどのくらいの金額が損害として認容されますか。

A. 弁護士費用として損害に算入される金額は、「事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額」とされています。実務上は、認容された損害額の概ね10%程度が相当額として認められることが多いです。ただし、個別の事案によって異なりますので、具体的な金額は弁護士に相談することをお勧めします。

Q2. 損害賠償請求を受けた場合、早期に和解することは得策ですか。

A. 一般的に、訴訟に発展する前の段階で和解することは、弁護士費用の節約・時間的コストの軽減・和解金の減額交渉などの観点から得策なことが多いです。ただし、個別の事案の内容・証拠の強弱・相手方の請求額などによって異なりますので、和解交渉の方針については弁護士に相談の上で決定することをお勧めします。

Q3. 安全配慮義務違反の損害賠償請求を受けた場合、会社側はどのような主張ができますか。

A. 会社側の主張としては、安全配慮義務違反の事実の否定・因果関係の否定・素因減額(本人の脆弱性への寄与)・過失相殺(本人の過失への寄与)・損害額の争いなどが考えられます。どのような主張が有効かは個別の事案によって異なりますので、損害賠償請求を受けた場合は速やかに弁護士に相談することをお勧めします。

最終更新日:2026年5月10日

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