労働問題116 退職勧奨の対象を「男性だけ」「女性だけ」にできる?会社経営者が知るべき男女差別禁止のルール

この記事の要点

退職勧奨の対象者を性別で区別することは男女雇用機会均等法6条4号で明確に禁止されています。「男性だけ」「女性だけ」を対象とする運用は違法であり、行政指導・損害賠償請求・企業名公表のリスクがあります。

表面上は職種・勤務形態による選定でも、実質的に特定の性別を狙い撃ちにする場合は間接差別のリスクがあります。対象者選定には業務能力・実績・組織適合性という客観的・合理的な基準が不可欠です。

均等法6条4号:退職勧奨における性別差別を明確に禁止

退職勧奨の場面も均等法の適用対象です。性別を理由とした対象者選定は明確な法律違反となります。


固定的役割意識に基づく選定も違法——「女性は補助的」等の考え方は禁止

性別に基づく固定観念からの選定はすべて不法行為(人格権侵害)として慰謝料請求の対象となります。


間接差別にも注意——結果として特定の性別に偏る選定も問題

形式上は中立な基準でも実質的に特定の性別を狙い撃ちにする間接差別のリスクがあります。

1. 退職勧奨の対象を性別で区別することはできるのか

 「退職勧奨の対象者を決める際に、性別を基準にすることはできるのか」という質問が実務上よく出ます。結論からいえば、退職勧奨の対象者を「男性であること」や「女性であること」といった性別を理由に決めることはできません。法律は、退職勧奨の場面においても性別による差別的取扱いを明確に禁止しています。

 退職勧奨は社員の同意による退職を前提とするものですが、その判断基準が性別である場合には問題が生じます。「男性社員だけを対象にする」「女性社員のみを対象とする」といった方針は、法的に許容されません。

2. 男女雇用機会均等法が禁止する性別差別

 男女雇用機会均等法6条4号は、事業主が「退職の勧奨」について労働者の性別を理由として差別的取扱いをすることを禁止しています。退職勧奨の対象者を決める際に、男性であることや女性であることを理由として扱いを変えることは、明確な法律違反となります。

 同法は、採用・配置・昇進・教育訓練・福利厚生・退職など、雇用に関するあらゆる場面において、労働者の性別を理由として差別的に取り扱うことを禁止しており、退職勧奨も例外ではありません。

✕ 絶対にしてはいけない考え方・発言

「男性は他社へ再就職しやすいから対象にしよう」→ 違法です。
性別に基づく固定観念による選定は均等法違反・不法行為です。

「女性は家計の補助的役割だから先に辞めてもらう」→ 違法です。
固定的役割分担意識に基づく差別として均等法違反となります。

「女性は将来育休などで不在になる可能性があるから対象にする」→ 違法です。
育休の可能性を理由とした選定は育介法・均等法の双方に違反する重大なリスクがあります。

3. 間接差別にも注意——形式上中立でも実質的差別となる場合

 表面上は「職種」や「勤務形態」による選定でも、実質的に特定の性別のみを狙い撃ちにする場合は間接差別を疑われるリスクがあります。例えば、事務職(実態として全員女性)を廃止して退職勧奨する場合、形式上は職務の廃止ですが、その職種に特定の性別しか就いていない場合、実質的な性別差別と評価されるリスクがあります。

 このような場合、配置転換の検討など性別を理由としない回避努力を尽くしたかが厳格に問われます。対象者選定が結果として特定の性別に偏っていないか、その理由を第三者に対して客観的に説明できる状態にしておくことが重要です。

4. 性別差別となった場合の法的・社会的リスク

 退職勧奨の対象者を性別で区別した場合、以下のような重大なリスクが生じます。

 ①行政機関による介入:都道府県労働局長による助言・指導・勧告の対象となります。勧告に従わない場合は企業名が公表されるリスクもあります。②損害賠償請求(不法行為):退職勧奨の経緯が差別的である場合、人格権を侵害したとして慰謝料請求を受ける可能性があります。③社会的信用の失墜:性別差別を行う企業としてのレッテルを貼られれば、採用力の低下・既存社員のモチベーション低下・顧客取引先からの信頼喪失につながります。

5. 会社経営者が退職勧奨を行う際の適法な選定基準

適法な選定基準の例

 ①業務能力・成果:客観的な人事評価結果に基づいているか。②勤務態度:勤怠状況や規律遵守状況に問題があるか。③組織との適合性:具体的な支障事例が記録されているか。④事業上の必要性:部門縮小や組織再編において当該職務が不要となったか(この際も特定の性別を狙い撃ちにしていないか慎重な検討が必要)。

 対象者の選定が結果として特定の性別に偏っていないか、その理由を第三者に対して客観的に説明できる状態にしておくことが、労働トラブルを防ぐ実務上の要諦です。

 退職勧奨の対象者選定の適法性・均等法違反リスクの確認・適法な選定基準の整理について、弁護士へのご相談をお勧めします。→ 経営労働相談はこちら

6. まとめ

 退職勧奨の対象者を「男性だけ」「女性だけ」とすることは、男女雇用機会均等法6条4号で明確に禁止されています。性別に基づく固定的役割分担意識(「女性は補助的」「男性は再就職しやすい」等)からの選定もすべて違法です。違反した場合、行政指導・企業名公表・損害賠償請求・社会的信用失墜のリスクがあります。表面上は中立な基準でも結果として特定の性別に偏る間接差別にも注意が必要です。適法な退職勧奨の対象者選定には、業務能力・勤務態度・組織適合性・事業上の必要性という客観的・合理的な基準が不可欠です。対象者選定の段階から弁護士に相談することをお勧めします。

さらに詳しく知りたい方はこちら

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弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

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最終更新日 2026/04/10

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