労働問題114 会社経営者は退職勧奨のために社員を呼び出せるのか?違法にならないための実務ポイント

 

本記事の結論

● 退職勧奨のために社員を呼び出すこと自体は、原則として業務命令の範囲内であり、直ちに違法ではありません。

● ただし、長時間の拘束、多数回にわたる面談、威圧的な言動は「退職強要」となり、不法行為責任を問われます。

● 社員が明確に拒絶の意思を示した場合、それ以上の執拗な勧奨は控えるべきであり、他の法的手段(配置転換等)を検討する必要があります。

● 退職勧奨は「自由意思による合意」が不可欠です。即断を迫らず、検討時間を与えることがトラブル防止の要諦です。

1. 問題の所在:経営者が直面する「呼び出し」の是非

 会社経営者からよく寄せられる質問の一つに、「退職勧奨を行うために社員を呼び出すことはできるのか」というものがあります。問題社員への対応や組織再編の場面では、社員に退職を検討してもらうための話し合いが必要になることも少なくありません。

 結論からいえば、退職勧奨のために社員を呼び出すこと自体は、直ちに違法となるものではありません。退職に関する問題は雇用関係の一部であり、企業運営にも関係する事項であるため、一定の範囲では業務命令として面談を求めることができると考えられています。

 もっとも、退職勧奨はあくまで社員の自由意思による退職を前提とするものです。そのため、呼び出し方や面談の進め方によっては、退職を強要する行為と評価され、違法と判断される可能性もあります。会社経営者としては、退職勧奨の基本的な考え方と実務上の注意点を理解しておくことが重要です。

2. 退職勧奨とは何か

 退職勧奨とは、会社が社員に対して退職を提案し、社員の自由な意思によって退職するかどうかを判断してもらうための話し合いのことをいいます。会社が一方的に雇用契約を終了させる解雇とは異なり、社員の同意を前提とする点に特徴があります。

 解雇の場合には、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが必要とされます。これを満たさない解雇は無効とされる可能性があります。そのため、実務では解雇ではなく、まず退職勧奨によって合意による退職を模索することが行われることがあります。

 ただし、退職勧奨であっても、社員の自由意思が侵害されるような方法で行われれば違法と評価される可能性があります。形式上は退職勧奨であっても、実質的には退職を強制していると判断されることがあるためです。

3. 退職勧奨のために社員を呼び出すことはできるのか

 退職の問題は雇用関係に関する事項であり、企業の人事管理とも密接に関係しています。そのため、会社が社員に対して退職について話し合うための面談を求めること自体は、業務に関連する行為として評価されることが一般的です。

 このような理由から、退職勧奨のために社員を呼び出して面談を行うことは、一定の範囲では業務命令として認められると考えられています。会社が社員に対して「退職について話をするために面談を行いたい」と求めること自体が、直ちに違法となるわけではありません。

 もっとも、ここで重要なのは、退職勧奨はあくまで話し合いであるという点です。会社が退職を望んでいたとしても、最終的に退職するかどうかを決めるのは社員本人です。会社経営者としては、退職勧奨を行う際にも、社員の意思決定を尊重する姿勢が求められます。

4. 呼び出し方によっては違法と評価される可能性

 退職勧奨のための呼び出しが問題となるのは、その方法や態様が行き過ぎている場合です。社員がすでに退職勧奨を拒否しているにもかかわらず、何度も面談に呼び出して退職を求め続けるような場合には、退職を事実上強制していると評価される可能性があります。

 また、面談の時間が長時間に及び、繰り返し退職を迫るような対応も問題となることがあります。会社と社員の間には立場の差があるため、会社側の発言は社員にとって大きな心理的圧力となり得るからです。特に威圧的な言動や、退職しなければ不利益が生じるかのような発言があった場合には、違法な退職強要と判断されるリスクが高くなります。

 このような事情があるため、退職勧奨の場面では、単に呼び出しが可能かどうかだけでなく、その進め方が適切であるかどうかが重要な問題となります。

5. 社員が退職勧奨を拒否した場合の対応

 退職勧奨は社員の自由意思を前提とする制度であるため、社員が退職を拒否することは当然に認められています。会社としては、社員が退職を拒否している場合には、その意思を前提に今後の対応を検討する必要があります。

 社員が明確に退職を拒否しているにもかかわらず、何度も呼び出して退職を求め続けるような対応は、違法と評価される可能性が高くなります。そのため、退職勧奨が難しいと判断される場合には、業務指導や配置転換など、別の方法による対応を検討することも必要になります。

6. 退職勧奨を行う際に会社経営者が注意すべき点

 退職勧奨を適切に進めるためには、まず会社として退職勧奨を行う理由を整理しておくことが重要です。業務能力の問題や勤務態度、組織との適合性など、企業運営上の理由を明確にしておくことで、社員に対する説明も行いやすくなります。

【実務上の留意点】

  • 強制しない:面談はあくまで話し合いの場であり、退職を強制する場ではありません。
  • 傾聴の姿勢:会社の考えを説明するとともに、社員の意見も聞く姿勢が重要です。
  • 即断を避ける:その場で退職届の提出を求めるような対応は避けるべきです。
  • 検討時間:社員が冷静に検討できる時間(数日から1週間程度)を与えることが重要です。

 社員が冷静に検討できる時間を与えることが、自由意思による判断を確保するうえでも重要になります。

7. まとめ

 退職勧奨のために社員を呼び出すこと自体は、雇用関係に関する事項として一定の範囲では認められると考えられています。しかし、退職勧奨はあくまで社員の自由意思による退職を前提とするものであり、その方法が行き過ぎれば違法と評価される可能性があります。

 会社経営者としては、退職勧奨の呼び出しが可能であるという点だけに着目するのではなく、面談の回数や時間、発言内容などが社員に過度な圧力となっていないかを常に意識することが重要です。社員の意思を尊重しながら慎重に進めることが、労働トラブルを防ぐうえでも大切になります。

弁護士 藤田 進太郎
監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

退職勧奨の呼び出しに関するよくある質問

Q1. 社員が面談の呼び出しを拒否した場合、無理に連れてきてもよいでしょうか?

A. 退職勧奨の面談に応じる義務については、業務命令として一定の範囲で認められますが、物理的に強制したり、執拗に命令を繰り返すことはパワハラや退職強要とみなされるリスクがあります。拒否された場合は、書面での提案に切り替える等の慎重な対応が必要です。

Q2. 一度の面談時間はどのくらいまでなら許容されますか?

A. 一般的には30分から1時間程度が適当です。数時間に及ぶ軟禁状態のような面談は、自由意思を侵害するものとして違法とされる可能性が極めて高くなります。

Q3. 「辞めないなら解雇だ」と言って退職届を書かせるのは問題ですか?

A. 極めて危険です。客観的な解雇事由がないにもかかわらず、解雇を盾に退職を迫る行為は、強迫による意思表示の取消しや、違法な退職強要として損害賠償請求の対象となります。

 

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最終更新日:2026/3/9

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