労働問題114 退職勧奨のための呼び出しと面談の実務ポイント — 適法に進めるための4か条


この記事の要点

退職勧奨のために社員を呼び出すこと自体は業務命令の範囲内として原則認められる

退職に関する問題は雇用関係の一部であり、一定の範囲では業務命令として面談を求めることができると考えられています

長時間拘束・多数回の面談・威圧的言動は退職強要(不法行為)となり、会社側に致命的なリスクが生じる

慰謝料請求・退職無効・バックペイというリスクが生じます。呼び出し方や面談の進め方が重要です

社員が明確に拒否した場合は執拗な継続を避け、業務指導・配置転換・懲戒処分・解雇の検討を行う

退職勧奨が難しいと判断される場合には、別の方法による対応を検討することが必要です

面談では「強制しない・即断を迫らない・検討時間を与える・記録を残す」の4点が実務上の鉄則

事前に使用者側弁護士・会社側弁護士に面談の進め方・発言内容・記録方法を確認することが最善策です

01退職勧奨のための呼び出しは業務命令の範囲内か

 会社経営者からよく寄せられる質問の一つに、「退職勧奨を行うために社員を呼び出すことはできるのか」というものがあります。結論からいえば、退職勧奨のために社員を呼び出すこと自体は、直ちに違法となるものではありません。退職に関する問題は雇用関係の一部であり、企業運営にも関係する事項であるため、一定の範囲では業務命令として面談を求めることができると考えられています。

 もっとも、退職勧奨はあくまで社員の自由意思による退職を前提とするものです。呼び出し方や面談の進め方によっては、退職を強要する行為と評価され、違法と判断される可能性もあります。退職勧奨の面談を適法かつ実効的に進めるための方法を以下で詳しく解説します。

02違法となる典型的パターンと境界線

 退職勧奨のための呼び出しが問題となるのは、その方法や態様が行き過ぎている場合です。社員がすでに退職勧奨を拒否しているにもかかわらず、何度も面談に呼び出して退職を求め続けるような場合には、退職を事実上強制していると評価される可能性があります。また、面談の時間が長時間に及び繰り返し退職を迫るような対応も問題となります。

 会社と社員の間には立場の差があるため、会社側の発言は社員にとって大きな心理的圧力となり得ます。特に威圧的な言動や、退職しなければ不利益が生じるかのような発言があった場合には、違法な退職強要と判断されるリスクが高くなります。退職強要は不法行為(民法709条)に該当し、慰謝料請求・退職無効・バックペイという致命的なリスクを招きます。

よくある経営者の危険な対応

「呼び出して長時間話せば、そのうち折れるだろう」
絶対にしてはなりません。長時間の拘束は退職強要として不法行為となるリスクがあります。慰謝料請求・退職無効・バックペイというリスクを招きます。

「何度も呼び出せば最終的に辞めると言うはずだ」
危険です。明確に拒否している社員への執拗な繰り返しは、回数が増えるほど違法性が高まります。使用者側弁護士・会社側弁護士に相談して別の対応策を検討してください。

03社員が退職勧奨を拒否した場合の対応

 退職勧奨は社員の自由意思を前提とする制度であるため、社員が退職を拒否することは当然に認められています。社員が明確に退職を拒否しているにもかかわらず、何度も呼び出して退職を求め続けるような対応は、違法と評価される可能性が高くなります。退職勧奨が難しいと判断される場合には、別の方法による対応を検討することが必要です。

① 業務指導の継続と記録

 問題行動・能力不足について継続的に注意指導を行い記録を残します。この記録が後の解雇や再度の退職勧奨の基盤となります。

② 配置転換・降格

 就業規則・労働契約の範囲内での職務変更を検討します。業務上の必要性があれば、配置転換は会社の経営権の行使として認められます。

③ 懲戒処分の段階的実施

 就業規則上の懲戒事由に該当する行為について適切な懲戒処分を行います。段階的な懲戒処分の積み重ねが、その後の解雇の正当事由を支えます。

④ 解雇の検討

 十分な指導記録が蓄積された段階で解雇の可否を会社側弁護士と検討します。これらの対応方針については使用者側弁護士・会社側弁護士に相談し、各事案に即した戦略的な方針を立てることが重要です。

04面談の実務ポイント——準備と注意点

 退職勧奨の面談を適法かつ実効的に進めるためには、事前の準備と面談中の注意点を押さえることが不可欠です。

面談前の準備

 退職勧奨を行う理由(業務能力・勤務態度・組織適合性等)を整理し、客観的な事実に基づく説明ができるよう準備しておくことが重要です。退職条件(退職日・退職金の扱い・その他の条件)についても事前に検討しておくとスムーズです。

面談中の5つの注意点

番号 注意点
面談はあくまで話し合いの場であり退職を強制する場ではない
会社の考えを説明するとともに社員の意見も聞く姿勢が重要
その場で退職届の提出を求めるような対応は避ける
数日から1週間程度の検討時間を与える(自由意思確保の観点から重要)
日時・参加者・発言内容・時間を記録しておく

 これらの実務ポイントについて、事前に使用者側弁護士・会社側弁護士に確認することが最善策です。

05まとめ——面談の鉄則4か条

 退職勧奨のために社員を呼び出すこと自体は、雇用関係に関する事項として業務命令の範囲内として一定程度認められます。ただし、長時間の拘束・多数回にわたる面談・威圧的言動は退職強要(不法行為・民法709条)となり、慰謝料請求・退職無効・バックペイというリスクを招きます。

 社員が明確に拒否した場合は、執拗な継続を避けて業務指導・配置転換・懲戒処分・解雇の検討など別の対応方針を検討することが必要です。面談では「強制しない・即断を迫らない・検討時間を与える・記録を残す」の4点が実務上の鉄則です。退職勧奨を検討する際は事前に使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。退職勧奨の面談の進め方・発言内容の確認・条件の調整でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 退職勧奨のために社員を呼び出すことは業務命令として適法ですか。

A. 退職に関する事項は雇用関係の一部であり、面談を求めること自体は直ちに違法ではありません。ただし、呼び出しの態様・面談の方法・回数・時間によっては退職強要として不法行為と評価されるリスクがあります。事前に使用者側弁護士・会社側弁護士に相談し、適法な進め方を確認することをお勧めします。

Q2. 退職勧奨の面談は何回まで行ってよいですか。

A. 法律上の明確な上限回数は定められていませんが、社員が明確に拒否した後も繰り返し面談を続けることは「執拗性」として違法と評価されるリスクがあります。目安として1〜3回程度、社員が明確に拒否したら一時中断するといった方針が実務上は合理的です。具体的な回数や間隔については事案ごとに判断が異なるため、使用者側弁護士・会社側弁護士に個別に相談してください。

Q3. 退職勧奨の面談で「解雇するかもしれない」と伝えることはできますか。

A. 解雇の可能性が客観的に存在する事案において、その事実を説明することは必ずしも違法ではありません。しかし「辞めなければ解雇する」という脅し的な発言は退職強要と評価されるリスクがあります。解雇の可能性に触れる場合は表現に細心の注意が必要であり、事前に使用者側弁護士・会社側弁護士に発言内容を確認することを強くお勧めします。

Q4. 退職勧奨を断られた後、社員への対応はどうすればよいですか。

A. 退職勧奨を断られた後は、執拗な繰り返しを避けつつ業務指導の継続と記録、配置転換・降格、懲戒処分の段階的実施、最終的には解雇の検討という方針を取ることが一般的です。これらの対応方針については使用者側弁護士・会社側弁護士に相談し、各事案に即した戦略的な方針を立てることが重要です。

最終更新日:2026年5月10日



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